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DAKKAN
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2008/05/17のBlog
まだまだN氏との探訪は続く。

靖国神社の売店で無愛想なおじさんの売るソフトクリームを食いながらNに「どこへいきたい?」と訊くと、「秋葉原!」との答えが返ってくる。そういえば先日も電話で「メイド喫茶に行きたい」などと言ってたもんなあ。コチトラそんなところで散財することなどまっぴら御免なのだが、とりあえずNのリクエストなのだし秋葉原の空気だけでも吸うべしと、一路アキバへ向かう。

メイド喫茶などに行かなくとも、駅前では5、6人のメイドたちが地道にチラシ配りをしていた。途端にNが行動に打って出る。『プライベート・ライアン』のD-DAY作戦のごとく目標に向かって人ごみをかき分け、命がけでにじり寄り、携帯カメラで彼女たちを激写(その間、僕は後ろを向いて知らんふりを決め込んでいた。もうどうにでもなってくれ)。男の中の男なNはその中のひとりに「一緒に写真ば撮ってヨカね?(共に写真に写ってはくれぬか?)」と豪快に声をかけるが、当のメイドの返答は手馴れたものだった。

「そういうことをすると警察沙汰になっちゃうんですう」

Nはぐうの音も出なかった。こうもキッパリ拒否されると完敗である。
さすがメイド。断り方もプロフェッショナルだった。

けれどアキバなんて歩き回るもんじゃない。30過ぎのふたりはすぐに疲労困憊。「なんか…ぐったり疲れたね」と愛犬パトラッシュと少年の会話みたいなやりとりを交わしながら、Nが貴重な総括の一句。

「知らなかった、女性のオタクってのも、いるんだな」

うーん、字余り!
N氏にとってみれば街中で見かける女性のオタクさんってのはちょっとした発見だったようだ。でも第三者から見ると、あなただって随分怪しげに見られていると思いますけど。そして彼のいちばん近くでワザとらしい“知らん振り”を決め込んでいる僕なんて、怪しさの最先端に位置する人間だったことだろうな。
N氏の滞在は続く。赤坂の叙々苑で無駄に豪勢な昼飯を食らったあと、彼のリクエストでなぜか靖国神社へ行く。僕が「なぜ?」と訊くと彼は「何かと世間を騒がせているから」。どうやら彼も映画『靖国』のウワサを聞きつけていたようだ。

僕がこの場を訪れるのは2度目となる。敷地に足を踏み入れるや、ブルーの特攻服(?)姿の男とすれ違う。思わずNと目を合わせて心の中でウヒャーとつぶやいた。しばらく歩を進めたところでNが一言。

「おれはあいつに負ける気がしない」

いったい何がだよ。喧嘩?それとも信仰心?

中へ進むと靖国神社は平穏そのものだった。まるで時が止まったような異空間。この東京のど真ん中に建つ神社が、いかにしてその神秘的で劇場的な特殊効果を手にしてきたか、グルリとあたりを見渡すだけで充分に分かる。

せっかくなので常設展も見学。神武天皇の説明からはじまるのでかなりのボリュームだった。ヘトヘトになりながら辿りついた最後の展示室、そこには戦車や魚雷やゼロ戦などが置いてあった。ふと、目の前を東南アジア人とおぼしき若い夫婦が通り過ぎていき、その後をちょこちょこと2歳くらいの幼児が歩いていた。で、その子がいきなり僕に向かってニコリと笑い、しきりとゼロ戦のほうを指差して「アバラバタ!アバラバタ!」と2繰り返したのだ。「アバラバタ・・・?」と僕が首を傾げると、幼児が「そうだ」と首を縦に降り、もう一回、口を大きく開けて3度目のあの言葉を発しようとしたところで母親がガバッと振り返り、幼児に「もうやめなさい」と諭し、手を引いて連れて行った。

異国の幼児が僕に分かってほしくてしきりと口にしたあの言葉。悪い呪文でなければよいのだが。幸いなことに、現時点で僕の身には何の変化も起こっていない。それはひとえに僕が鈍感なだけかもしれないのだけど。
中学時代の親友Nがやってきた。アメリカ大使館でビザを取得するための日帰り出張だという。朝っぱらから飛行機で来京し、大使館では全身くまなくボディチェックされた。憮然としながらも、Nはちょっとだけヘンな気持ちになったとかならなかったとか。しかも彼は9つある面接ブースのうち、いちばん使用頻度の低いとおぼしき9つ目へと案内されたという。これにはさすがのNも気弱になって、ああ、これはひそかに怪しまれているのだな、といよいよ観念せずにはいられなかった。そう、N氏のほんとうの正体とは、国際手配中のテロリ…じゃなかった、郷土長崎が生んだ生粋の造船マンだったのである。

 結局どうにか大使館を切り抜けたNと赤坂で待ち合わせた。重要な手続きを終えたNはすっかり憔悴しきっていた。ふたりの口から堰を切ったように長崎弁が噴出する。よかった、俺はまだこの言葉を忘れていなかった。その代わり、九州弁ってのはかなり豪胆だ。傍から訊いていると喧嘩しているみたいに聞こえないこともない。僕が気づいた範囲だけでも4、5人が驚いた表情で振り返っていた。ガッチリした体格にもっさり顔、さらにぶっきらぼうな言葉を交わすふたりの姿は、ちょうど北欧のバイキングと似ていないこともない。しかし惜しむらくはNの笑い方だ。彼は可笑しいときにウヒャヒャヒャと笑う。この笑い方は中学時代からちっとも変わっていない。外見はたくましいのに笑い声がウヒャヒャではまだまだ立派なバイキングとは言えない。僕らの修行は続く。立派なバイキングと呼ばれるために。人間誰もが常に修行僧なのである。
2008/05/16のBlog
5月17日公開の話題作『チャーリー・ウィルソンズ・ウォー』の300文字レビューをアップしました。ぜひごらんください!
2008/05/15のBlog
8月2日公開となる『スカイ・クロラ』のレビューをアップしました。
この映画が気になっている方、ぜひぜひご覧ください。
これまでにもいくつかの機械の最期を看取ってきたが、いよいよ僕のパソコンまでもが末期的な状態に陥ると、気が動転してなかなか現実を受け入れられないでいる。今日も電源を入れるとグズグズと実が入らず、もう一度再起動させてみても駄々をこねてなかなか先へ進まない。

普段は温厚な性格を装ってはいるものの、そういうことが10回も続くと、いっそのこと破壊してやろうかと巨大なハンマーさえ持ち出したくもなり、こっちがそういう態度を垣間見せるとパソコンもパソコンで先ほどまでの病弱ぶりが嘘のようにケロッと持ち直し、あ、もう、大丈夫、大丈夫なんですよ、とサッサ起動させてみせるのだから、じゃあこっちもお前を使ってやらないこともない…とまあ、こんな具合に20年付き添った男女のようなベタベタな関係を続けているわけである。

もちろん、復旧したとしてもそれは一時的なものだ。本質的な完治にはいたっていないものだから、当然、パソコンで処理などしていると途端にへそを曲げ、ビビッ、ビビビビッと不穏な音を発したあと、シュンとどこかへフェイドアウト。まるで修学旅行の消灯時間のようだ。

この前、起動が上手くいってから強制消灯するまでの時間を計ってみた。すると、ちょうど30分00秒。つまり僕はたった8分間しか記憶がない物語の主人公と同様、30分間しかパソコン処理ができないことになる。それを「30分しか」と捉えるか「30分も」と捉えるかは個人の価値観、世界観、宗教観の違いによって様々なのだろうが、まあごく便宜上のことでいうと、明らかに不便極まりないことは間違いなく、こちらとしては思い切って三行半を突きつけたいところではあるが、まさか病気の連れ合いをそのように無下に扱うこともできまい。

というわけで、事態はまるで夫婦で支えあった闘病記のような様相を呈しており、しかもいまだロングラン。なかなか最終回、もしくは千秋楽を迎えられずにいるのである。
5月17日公開の話題作、『マンデラの名もなき看守』300文字レビューをアップしました。どうぞご覧ください!