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2050/12/31のBlog
[ 13:15 ]
単なる本ブログの読み方解説だ。 _| ̄|○
まず、画面左にある「ジャンル」を見てほしい。
それをクリックすると、そのジャンルだけが通し読みできる。
(なんて親切なんだオレは)
「プロローグ」
>>>「電脳東京」を読む前には必読だ(多分)。
「電脳東京・夏」
>>>オレの日常に起きたことを編集した連続話。
>>>これは途中から読んでもわからない。 だが、勿論読み方は自由。
「街の呼吸」
>>>主に東京の街について書いた雑記。
「涼のoff」
>>>当初、「電脳東京」以外のことはここに書いていた。
>>>が、それはアメーバに移りつつある。 気もする。
「回顧するもの」
>>>ともかく書かずにいられなかった事柄。
>>>物議を醸すことも多いようだ。大歓迎だ。
>>>当たり障りの無いブログなんて読んでて面白いか。
「電脳東京・渋谷駅前支店」 必看的内容!
>>>本ブログサイトの重さに堪えかね、開設。
>>>現状は、「涼のoff」が全面展開されている。
「代筆」
>>>礼美にアップしてもらったりすることもあるので。
>>>礼美がいかにいい女か、どんな肢体なのか、は
>>>「電脳東京」を最初から読まないとわからない。
「電脳東京・外伝」
>>>短編。
バーチャル東京
2006/07/06のBlog
[ 15:35 ]
[ 電脳東京・外伝 ]
大井町まで高速の渋滞は無かった。
葉山からの帰り、オレは預かったAMGのポテンシャルを存分に堪能しながら
恵比寿に向かっていた。
梅雨の合い間で、のんびり晴れた昼下がり。
時折りレッドに入るタコメーターの動きとは関係なく、オレの心はどんどん
穏やかになっていく。車とはオレにとってそんな存在だ。
天現寺ランプを降り、車を一旦ガレージに入れた。
シャワーの後、顔にローションをふり掛けるまで、かなり日焼けしている
ことに気付かなかった。気分が高揚していたのかもしれない。
もう夏だな。
冷蔵庫から取り出したボトルを顔に押し当て、水を少し口に含んだ。
体が一気に冷却されていく。HUGO BOSSのシャツを着ながら時計を見た。
5時半。
オレは駒沢通りに出てタクシーを拾い、六本木経由で丸の内に向かった。
首相官邸を過ぎると皇居の鮮やかな緑が目に飛び込んでくる。
結局、夜も雨は降らないようだ。
関島さんから電話があったのは昨夜だった。
彼が明るい声でオレを誘いだす時は、大抵は若いお姉ちゃんとの酒宴で太鼓持ちが
必要な時だ。相手の年齢、出身、学歴、職業、趣味志向。相手によって話を合わせたり、
はずしたりするということはいくらでも出来る。職業柄当然と言えばそれまでだが、
今夜どんな娘たちがやってくるのかオレはまだ知らされていなかった。
もっとも、そんなことは事前に、いや事後にさえ特に知る必要も無い。
それに、昼間の海の清清しさとAMGの無敵さにすっかり心を満たされて、
オレは今日の後半はもうどうでもよいという感じにさえなっていた。
待ち合わせの店で、関島さんは1人で座っていた。
「もう彼女たちも着くって」
携帯を仕舞いながら関島さんは笑ったように見えた。
「2人来るんですか」
「不満か?」
「いやいやそんなに体力は無いですよ、はは」
挨拶代わりの会話は全くいつもの調子だった。
ただ、彼女たちの職業を聞いてオレは少し疲労感を覚えた。
2人が現れた。
1人は関島さんと既に先週食事をしている。
体全体がとても細い。長身だが関島さんの好みではない。
そして、少し鼻にかかった声は、何となく往年の山本リンダのようだった。
オレはこの山本リンダと専ら適当に話をして酒を飲んでいればいいというわけか。
困っちゃうぅなぁとか言わせてみるか。
仮に関島さんのお目当てをR嬢、山本リンダをK嬢とする。
R嬢はK嬢の後輩にあたるということだった。
R嬢は黒いノースリーブのワンピースに長いスカーフを首に掛けていた。
肩から露わになった、まっすぐな腕は1つのシミも無く白い。
その白さは生まれつきなのか、手入れには惜しみない時間と金を
注ぎ込んでいるのか、なんてことはオレにどちらでもいいことだった。
K嬢はベージュの上下のスーツ。Max Mara のはずだが、会話している
うちにピンキー&ダイアンぽく見えてきたのが可笑しかった。
ヒールは9cm。ブルガリにエルメス。ある意味オーソドックスな娘だ。
香水が好きな感じではなかった。
明るい酒ではあったが、とりあえずよく飲む2人だった。
オレがかろうじて会話に参加していられたのは、ワインの話だけではなくて
車の話もできる2人組だったからだろう。
R嬢はスピード狂だった。
これまでの自己最高速の話になった。オレは危うく負けるところだった。
こいつ、命を棄てる覚悟がいつもあるのか。ノーマルのメルセデスやBMWの
スピードメーターにも無いようなスピードを普通は出せない。しかも湾岸で。
普通じゃない。
AMGに乗ってみたい、いや運転させろというような話にもなり、それなりに場は
盛り上がっていたが、オレは多少ひっかかるものがあった。
2軒目は赤坂の伝説のバー。
最初の店でワイン3本を空け、オレはビールにしておいたが、
彼女たちは芋焼酎だけのソムリエがあったら私たち絶対なれるわぁ
などと言いながらロックで数杯は飲んでいた。
オレは引き続きEBISUビールを頼むことにした。彼女たちは旨いテキーラを飲もうと、
先ほどからソムリエにああだこうだとリクエストやら質問やらをしていた。
酒席は相変わらず賑やかだ。
R嬢がトイレに立った。
関島さんがオレに耳打ちする。
R嬢の父親のことを。
耳がキーンとしている。
ん、 いや、違う。
一瞬、全身に衝撃が走っていたのだ。
「えっ!? ○○ってあの○○?」
R嬢の苗字が、ある人物の娘であることと同義だと理解するのにオレには少し
時間が必要だったようだ。酔いが思った以上に回っていたのか、出来すぎた事実に
狼狽しているのかは微妙なところだった。
忘れられない名前。
彼女の名前を聞いても、大抵の人はその意味はわからないだろう。
オレもそうだった。事実、関島さんに言われるまでは思いもしなかった。
だが、確かにあの名前。
彼女が誰か、その置かれた状況を知れば、その半生が極めて過酷なもの
であったことは誰もが容易に想像がつくはずだ。いや、想像はできるが、
恐らく想像を遥かに超えたものであったに違いない。
生き地獄。
いわれの無いことで自分の人生に突然襲い掛かった悲劇。幼い彼女はただ翻弄され、
その日その日を生き長らえることに精一杯だったのではないか。
その地獄への扉を開いた出来事は、ほとんどの人の記憶の中にある。
オレは、突然、何か大きな歴史の一部とイヤでも同化させられるような感覚に
囚われ、一瞬たじろいだ。たじろいだこと自体に慌てたオレは、気は取り直したが、
トイレから戻ったR嬢をこれまでとは明らかに違う眼差しで見ていた。酔いもかなり
醒めていたはずだ。
それは、ひと言で表現すると畏敬の念のようなものだったかもしれない。
想像を絶する凄まじい時間を経てきた人や物が放つ圧倒的な迫力。
そんなものをオレは勝手に感じてしまっていた。ただ、彼女が過ごしてきた
その時間は、誰にも経験させたくないような苦しみで埋め尽くされているわけだが。
目の前ではしゃぐ彼女を見るにつけ、とてつもなく強い人間だと思った。
そんな感傷的な気持ちとは裏腹に、その直後に襲ってきた衝動によって
発せられたオレの発言は、さぞや辛辣に聞こえていたことだろう。
多少残っていた酔いに任せて、オレはいくつかの質問を彼女にぶつけることになる。
オレは、ただ聞いてみたかった。それだけだった。冷静に考えれば野次馬根性以外の
何物でもない、これまでも嫌と言うほど繰り返されてきた質問かもしれない。
彼女が涙を堪えて、幾度と無く話してきた類であることは間違いなかった。
でも、聞きたい理由はオレにも多少はあったのだ。
はっきり断っておくが、その出来事について、彼女の家族、ましてや彼女には
何の罪も無い話なのだ。しかし、オレの質問は、彼女の心で昨日かさぶたに
なったと思った所に今日それをまた剥がし塩を塗るようなことなのかもしれないと思った。
一貫して彼女は気丈だった。
彼女は何でも聞いて何でも答えるからと言った。オレの目を見て、
決して逸らすことは無かった。オレも彼女を目をずっと見ていた。
彼女の目はまっすぐ前を見ていた。
返ってくる彼女の答えに、オレは抱いていた問題認識からさらに質問をした。
触れられていない真実がそこにはあるとオレは思っていたからだ。
後から考えれば、その答えによって何かが得られるわけもなく、傍から見れば
あたかも彼女を糾弾するかのようなとんでもない失言だったのかもしれない。
でも彼女はオレを見続けていた。その瞳の中に一体どれだけの悲しみや怒りが
澱のように沈み込んでいるのだろうか。オレもそんな風に彼女を見つめていた。
哀れみに見えたのか。でも違うぜ、オレは力になりたいと思っていた。
さすがの関島さんも質問を遮り、飲みなおそうぜ的なことを言う。
しかし、オレはまだ聞きたいことがあった。彼女のこれからの生き方について。
ワイングラスを一気に飲み干し、オレは3人に向かって軽く抗弁した。
「別にRちゃんを責めているわけじゃないんだ。いま言ったことは、
どこを調べても語られていないんだ。 いいですか、関島さん、
どこを見ても何を読んでも無いんですよ。不思議なくらい。」
真実が公表されなくてもいいのか。
そう言いそうになったが、彼女の大きな瞳が目に入り、言葉が出てこなくなっちまった。
彼女もオレがそれなりの知識を踏まえて質問をしたことは分かってくれたようだ。
軽く頷き、別に気にしていないというような素振りをする。
君の中ではもう過ぎてしまったこと、で片付いているのか。
いや、違う。何も終わっちゃいない。乗り越えるなんて生易しいことじゃない。
「それって乗り越えなきゃいけないの?
だとしたら、きっと一生乗り越えられないわ」
と、君は言った。ところどころオレの記憶も曖昧だが、そのようなことを言った。
とうとう、最後の最後までR嬢は涙をこぼすことはなかった。
強い。
強くなってしまったのだ。
ここまで強くならなければ、生きてはこれなかったのだ。
酒を飲んでいる時でさえ、気の置けない人間たちと談笑している時でさえ、
好きな男に抱かれている時でさえ、抑え込まないと溢れ出しそうになる
感情があるはずだ。
その店では彼女の生まれた年のワインを4人で空けた。
職業柄、そんな風な誕生日も1度や2度ではないとは思ったが、事のほか彼女は
感激して、オリが残ったボトルを大事そうに抱いていた。社交辞令か本心か、
はたまた酔っているせいか、何度も礼を言う。このワインが出来た年に
パパとママの愛によって私が生まれたの、とまたボトルを抱きしめている。
「ボトル、持って帰れよ。いま包んでもらうから」
そうR嬢に言うと、オレは伝説のマスターにボトルを渡した。
「もう帰っちゃうの」
「まだ飲むのか。付き合うぜ」
「速水さん、ケータイ、ドコモ?」
「ああ」
「ちょっと貸して」
彼女に携帯を渡すと、以後数十分間、彼女は赤外線通信機能と
悪戦苦闘することになる。その店が地下だということもあり、一旦メールするとか
電話するとかの方法が採れないがために、酔った彼女は2台の携帯をカチカチ
くっ付けながらおかしいおかしいを連発していた。
ストックホルムシンドローム?
オレはさっきまで、彼女にとって地上で一番イヤな奴だと思われていると
認識していたので、拍子抜けすると同時に、オレもいつの間にか愛おしい
気持ちが芽生えていた。
それは好き嫌いを一気に越えた、強い人間に対する憧れ。
そうかと思うと、ただの酔っ払いになるギャップ。
とても正しくなければ生きてこられなかったと思う。
普通の人間であれば、当然オレを含めて、とっくに死んでる、しかもかなり
悲惨な感じで。あるいは、ムショとシャバを行ったり来たりの人生だっただろう。
これは関島さんとも意見が一致するところだった。
正しく強い、そして、か弱い人間に対する憧れ。
3軒目は、K嬢宅に近付く感じで西麻布へ移動。
店に入って15分ほど経つと、関島さんはまた次回に賭けるとオレに言い残し、
万札を何枚かオレのポケットに入れて帰っていった。
K嬢のマンションはそこから徒歩3分だ。
少し意識が飛んでいたか。
R嬢はオレの肩に頭を乗せ、離れて暮らす母親に電話をしていた。
今夜の出来事を結構ちゃんと報告しているようだ。欠落していたディテールを
彼女の話からインプットし直すオレ。
そりゃ楽しい会食とプレ誕生日会だったろう。
そりゃいい人たちだったろう。
お母さん、娘さんはちゃんと送っていきますよ。
電話を終えた彼女がオレの右手を握り締めた。
もう休め。十分戦ってきたんだから。
オレも握り返す。
休め。自分の人生を生きろ。
彼女の目に涙が滲みそうになった。
「送っていくよ」
「ずっと一緒に居てくれる?」
彼女の左手には一層力が込められた。
不覚だった。彼女の左手首の大きめの絆創膏。
ブレスレットで隠れていたか。
彼女は限界だったのかもしれなかった。
オレは、畏敬の念を抱いた人間が倒れそうになっている時に、救える方法が
酔った挙句のセックスだとは思いたくなかった。
彼女という人間の存在を大切にしたい気持ちはあった。
はずみでも酔ったせいでも何でも理由はいいから、あの夜だけは一緒に
居るべきだったのかもしれない。勿論、その選択は男として、あまりにも容易だった。
彼女の容姿は肌の白さよりも突出していたからだ。
今日まで、こんなに全うに生きてきたんだ。
だいじょうぶ。もうそんなに頑張らなくていいんだ。ゆっくりおやすみ。
あれだけ時間を費やしていたのに、携帯番号とメアドの交換には
成功していなかったようだ。
でも、彼女からの連絡がそんなに早く無い方がいいのではないかとオレは思っている。
そして、通常、オレは自分より強い相手に対して無策に勝負は仕掛けない。
もう少し肩の力が抜けて、君が人並みに弱くなったら、君を支えられる男は
順番待ちができるほど現れるさ。
【完】
2005/08/24のBlog
[ 20:31 ]
[ 電脳東京・夏 ]
んなこたぁ、聞かなくてもわかってるはずだ。
公安ならオレのことはおよそ調べはついている。
学歴、職歴、病歴、思想信条から、家族肉親関係および
その犯罪・政治・宗教履歴、預金残高、申告所得、愛読書まで、
まあ、いろいろだ。
だから、そう、相手は最初からある1つの情報以外は持っているのだ。
残る一点だけを正面から獲りに来た。
聞くなら、今しかない。
次は恐らくない。
しかし、相手の返答も無い。
「それはたとえばさ、佐伯たちが非合法によって集めた金が
なんだかよくわからん連中に流れていて、オレが周りを
うろちょろするとアンダーカバーの身が危険になるとか、だったり?」
かまをかけたが、またも無言か。
だが、この間合いにも慣れてきた。
相手は、オレがすっかりこの間合いを嫌がって
饒舌になり始めていると思っている節もあった。
「あるいは、その連中を一網打尽にするチャンスが近付いて
いるので、今が一番デリケートなタイミングだとか」
「いや、その辺は想像にお任せする」
お、ちょっと嫌がったな。
「あなたが知っていることを所轄に言うのは別に構わない。
しかし、我々立会いのもとでお願いしたい」
「公式な調書は自分たちで仕切って作りたい、と」
「いや、調書は所轄の仕事だが、その取り方にもいろいろある。
所轄にもいろいろな人間がいる」
「自分たちの組織しか信用できない、と」
「そんなことは言ってはいない。 組織の特性だと思ってもらっていい」
「ふーん」
段々、口数が多くなってきた。
人間、本当に知らないと物は言えないが、
知ってるとついつい言いたくなる。
わざと知ったかぶり、プライドをちょっとでも傷付けるような
やりとりをしてると、こういう人種は黙っていられないようだ。
まず、否定から入る。
自分たちの方が情報量では常に上だ、ということを誇示してくる。
そこに隙ができる。 言わなくてもいいことも混じり始める。
近付いているのか。
「じゃあ、質問に答える前に、中井の妹は今どこにいるのか
ちゃんと答えてもらおう。 それがオレの仕事なんでね。
知ってるだろ」
「警視庁の保護下だ」
「何課だ」
「一課だ」
「何係だ」
「五だ」
「ケガは」
「元気だ。 よく食べる娘だ」
嘘はついていない。
宇野の話と符号する。 本物の公安だろう。
さて、今度はオレが答える番か。
「で、何が聞きたい」
「いまあなたが持っているもの、あるいは、知っているもの、でしょうね」
「ふ、まわりくどい。 てか、どういう意味だ」
オレは思わず、吐き出すようにつぶやいちまった。
「あのさ、おたくらのことだ、御苑のマンションの件は知ってるだろ」
ゆっくりと頷く一番偉そうな奴。
「車の中にあるのは、あの部屋から持ち帰ったオレの所持品だけだ。
そこに関係者の指紋でも付いてるんじゃねえかと思って
これから警察にお届けに上がるのさ」
「たとえば?」
「携帯に、キーホルダー、スタンガンに、小型発信機...
そうそう、そうだよ、それを全部ハンカチで掴んでそおっと
ビニール袋に入れて帰ってきたから、途中で何年か振りに
人の家の電話借りちまったぜ」
...オイ、笑うとこだろ、少しくらい。
ホスピタリティのホの字も無いな、こいつら。
「それから?」
「それだけだ」
...また、沈黙か。
ただ、今回は長い。 知ってるのか、あのデータのことを。
「ちょっと待っててくれ」
そう言うと、その男は車に乗り込み、中に居た男と話をし始めた。
オレは握り締めていた上野特製のリモコンを見詰めていた。
マジでなんだろう、これは。 そうだ、電話してみるか。
ポケットに手を入れた瞬間、外に居る二人がスーツの中に手を
入れた。 素早かった。
「待て待て待て、携帯取るだけだからね。 ほら、ゆっくりね」
この番号も傍受されているから、どうでもいいんだが。
...通信ジャンキーの上野が地下に潜ることは珍しい。
潜っていたとしても、電波の経路は自ら確保しながら潜っているはずだ。
ツーコールで出た。
「あ、涼だ。 時間が無い、手短に頼む。 この前、オレのZに
付けた装置だけどさ、一緒にくれたリモコンボタンは押すとどうなる」
「ドーンと爆発、とかはしません」
「...あ、ふ、ふざけるな、そういうこと言ってる時間はねぇんだよ」
「一種のアラームのパニックボタンです。 だから、押すと
目立つこと間違い無し~。 ちょっとした仕掛けもありますよ」
「...おまえ酔ってるな。 いずれしても大したことなさそうだな、じゃ」
「涼さん、ヤバイんですか、今。 西新宿でしょ」
「位置は捕捉してくれてるのか」
「モチコース」
「あっちぃ~、おまえ、とても23とは思えないセンスしてるな」
「ありがとうございます」
「褒めてねえよ...あ、じゃあとで。
あ、この電話は警察には傍受されているか」
「中継基地がどこかによりますね、僕の方からはスクランブル
暗号かけてますけど。 半々ですね、可能性は」
男が出てきた。
オレは電話を切った。
「取引の余地がある」
珍しいこともあるもんだ。
公安から取引という言葉が出るとは。 相当切羽詰ってる。
所轄の介入を避けたがっているのか。
形勢逆転かもしれぬ。
「しっかし、なんで、“余地”なんだ。 オレは司法取引するような重要
参考人でも被疑者でもなんでもないぜ」
「言い方が悪かった。 もし、我々が探しているものが
速水さんの手中にあれば、大抵のことには協力できる」
ほ。
来た来た、まじかよ。
公安ならいろいろと頼み甲斐があるぜ。
園遊会とか呼んでもらうか、いや、首相官邸で昼寝、
いやいやそんなもんは所詮一過性だ、
...いかん、権力は人の妄想を膨張させる。
しかし、この取引はうまくいくかもしれない。
この稀有なシチュエーションをオレは楽しめている。
「それだけだ」
...また、沈黙か。
ただ、今回は長い。 知ってるのか、あのデータのことを。
「ちょっと待っててくれ」
そう言うと、その男は車に乗り込み、中に居た男と話をし始めた。
オレは握り締めていた上野特製のリモコンを見詰めていた。
マジでなんだろう、これは。 そうだ、電話してみるか。
ポケットに手を入れた瞬間、外に居る二人がスーツの中に手を
入れた。 素早かった。
「待て待て待て、携帯取るだけだからね。 ほら、ゆっくりね」
この番号も傍受されているから、どうでもいいんだが。
...通信ジャンキーの上野が地下に潜ることは珍しい。
潜っていたとしても、電波の経路は自ら確保しながら潜っているはずだ。
ツーコールで出た。
「あ、涼だ。 時間が無い、手短に頼む。 この前、オレのZに
付けた装置だけどさ、一緒にくれたリモコンボタンは押すとどうなる」
「ドーンと爆発、とかはしません」
「...あ、ふ、ふざけるな、そういうこと言ってる時間はねぇんだよ」
「一種のアラームのパニックボタンです。 だから、押すと
目立つこと間違い無し~。 ちょっとした仕掛けもありますよ」
「...おまえ酔ってるな。 いずれしても大したことなさそうだな、じゃ」
「涼さん、ヤバイんですか、今。 西新宿でしょ」
「位置は捕捉してくれてるのか」
「モチコース」
「あっちぃ~、おまえ、とても23とは思えないセンスしてるな」
「ありがとうございます」
「褒めてねえよ...あ、じゃあとで。
あ、この電話は警察には傍受されているか」
「中継基地がどこかによりますね、僕の方からはスクランブル
暗号かけてますけど。 半々ですね、可能性は」
男が出てきた。
オレは電話を切った。
「取引の余地がある」
珍しいこともあるもんだ。
公安から取引という言葉が出るとは。 相当切羽詰ってる。
所轄の介入を避けたがっているのか。
形勢逆転かもしれぬ。
「しっかし、なんで、“余地”なんだ。 オレは司法取引するような重要
参考人でも被疑者でもなんでもないぜ」
「言い方が悪かった。 もし、我々が探しているものが
速水さんの手中にあれば、大抵のことには協力できる」
ほ。
来た来た、まじかよ。
公安ならいろいろと頼み甲斐があるぜ。
園遊会とか呼んでもらうか、いや、首相官邸で昼寝、
いやいやそんなもんは所詮一過性だ、
...いかん、権力は人の妄想を膨張させる。
しかし、この取引はうまくいくかもしれない。
この稀有なシチュエーションをオレは楽しめている。
2005/04/05のBlog
[ 00:33 ]
[ 回顧するもの ]
5年程前にある昼食会に潜入した。
こういう仕事をしていると、都合上、いろんな場に居合わせなくては
ならないこともある。
仕方が無い。
スーツを着込んで、髪を撫で付け、ロイドメガネをかければ、
かなり全うな雰囲気のサラリーマンの出来上がりだ。
虎ノ門の老舗ホテル。
昼食会だというので腹を空かせて行ったオレもオレだが、
メインが焼き鮭だけってーのはどういうことだ。
そうか、この男の話を聞きながら、
目の前に鎮座するどう見ても1万円する代物じゃねーだろコレ、という
昼飯を食わされるというそんな有難い会だったのか。
参加しているのはまあ世間的には良いと言われる
企業の人間が十数名。
ネットと金融の親和性、ソフトバンクの成長戦略などを
お得意の歴史観に基づき立て板に水が如き調子で
誠に気分良さそうに話しをしていた。
だから、
思わずオレも気分良く眠くなっていた。
食後に流れる心地よい北尾サウンドを聞きながら、
ぼんやり感想を持っていた。
このお父さん、良くも悪くも信念の人だろう。
客観的に、あるいは結果的に間違っていたとしても
ブルドーザーのように突き進める男だと思う。
悪く言えば、人の話を聞くスタンスは採っていない。
一つ言えるのは、この男のような生き方を企業社会で出来る人間は
とても稀有な存在に違いない、ということか。
人が付いていく親分タイプだというのも何となくわかる。
少なくとも側で見ているだけで、楽しかろう。
ただ、こういう場合、
その人心収攬術が周囲の人間の心酔がためなのか、
面白いショーを観たいがための知的探究心によるストーキング
行為によるものかを、見極めることはとても難しい。
今回の騒動でも、そんなオーラで周囲を支配する
自信家のパフォーマンスに、メディアも酔わせてもらってもいいか、くらいに
思っている節があるような気がしている。そんなことは、どちらでもよいのだが、
飲んだことの無い酒は飲んでみたい気持ちはわかる。
しかし、もうあまり面白そうではない。
少なくとも、長年サロン的ぬるま湯に浸かってきた単なる
サラリーマン経営者とは一線を画すだろう、という意味において
六本木の元気な兄ちゃんが足を踏まれて痛ぇなと見上げたオヤジが
まるで人種の違う「その筋」の人だと察知した瞬間に前言を取り消すために
発したのが言葉ではなく、全力で敵意が無いことを示す反射的行動だったという
誠に普通のリアクションに、オレの野次馬根性も急速に失せた。
というか、萎えた。
高裁での仮処分申請が認められた段階で、投資家たちも日本市場で
好ましからぬ事態が頻発するリスクが当面無いと見て静観模様。
そう、あとは夕刊紙の陳ビラで事の推移を知る程度でいい。
わかっちゃいると思うが、北尾さん、
酒はその酒の価値に見合った料金で飲める店がいい。
そういう店が六本木に無いとは言わないが、
論語には論語の似合う店を紹介するぜ。
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