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ヒメヒカゲ備忘録
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2008/03/29のBlog
アスワンダムのたもと、黄色い壁の家が特徴のヌビア人の集落からボートに乗って、フィラエ遺跡を見に行きました。
巨石を積み重ねたような岩山がところどころに。
プトレマイオス朝以降、ローマ帝国でも崇拝されたイシス女神の聖地フィラエ島はダム湖に沈み、現在はその神殿と周辺遺跡を移築した島がフィラエ島と呼ばれています。本当の名前はアギルキア島。
イシス女神に捧げられた神殿は、末期王朝時代の紀元前4世紀からローマ時代にかけての建築物。新王国時代のアブ・シンベル神殿と比べても1000年以上は後世のもの。

参道には復元された列柱が連なっています。
神殿の第1塔門に描かれるプトレマイオス1世。時のファラオが敵の髪の毛を捕まえている図は、あちこちの神殿で見られる定番のレリーフ。エジプトのファラオの伝統は、外来の支配者にも受け継がれました。「エジプトを征服する者はエジプト文化に征服される」という言葉があるそうです。
削り取られているのは、のちに下エジプトから迫害を怖れて逃げて来たキリスト教徒の教会として使われていたからとか。でも、塔門の右半分のレリーフはそのまま残っていたりして、なんだか中途半端なんだよね。


塔門の入り口両脇に立つライオン像も顔が破壊されている。
第1塔門を一回り小さくした第2塔門。ハヤブサ頭は、イシス女神がフィラエ島で産んだといわれる息子のホルス神。
牛の耳を持つハトホル女神の顔を刻んだ列柱。ハトホルはホルスの妻。王妃や女神に捧げられた神殿では必ず目にします。左端の柱は束ねたパピルスがモチーフかな。
至聖室の入り口だったと思う。イシス女神の後ろに立つのは、まだ人間の顔をした子供のホスル神。古代エジプトのレリーフでは身体の大きさに関係なく、子供は裸で描かれ、指を口に加えていることが多い。
イシス神殿の至聖室のレリーフ。翼を広げて、夫であり兄であるオシリス神を守るイシス女神(右)。翼のある姿のイシスは普遍的な魅力があるように思います。偶像崇拝が禁止されたキリスト教徒かイスラム教徒かによって、手の届く高さのレリーフはみな顔が削られてしまっているのが残念。
特に深くえぐられていたのが、これ。幼子ホルスに授乳するイシス。イシスが聖母マリアと重ねて考えられていた証拠でしょうか。ホルスが手にしてるのは古代エジプトの宗教的象徴、生命を意味するアンク。
至聖室の祭壇や壁に、キリスト教会として使われていたときの十字架が彫り込まれています。これはかなり古そうな形の十字架。
よく見ると、すぐ上に1816年との落書きが・・・ちょうどこの年の前後にイギリス人によってここのオベリスクが持ち去られています。
イシス神殿の東側にはハトホル神殿と、ローマ皇帝トラヤヌスのキオスク(右側)。バドリアヌス帝が造った門などもあります。
[ 00:20 ] [ エジプト ]
遠い昔、教科書で習ったアスワンハイダムの上に立ちました。ダムの全長3600メートル。これは上流側のナセル湖。遠くに見えるのはローマ統治時代に建てられたカラブシャ神殿。アブ・シンベルの神殿と同様にダム建設時に移築されています。

ナセル湖に水没した地域には約100万人のヌビア系の人たちが住んでいたとか。まあほんとにとんでもない大事業。
ダムはエジプトの急所でもあるので軍事的に見張られている。アスワンで戦闘機の練習があるときは、民間の飛行機は空港で終わるまで待機。そのためエジプトの飛行機はよく遅れるそうです。

下流側。ダムの幅も広いので、発電所くらいしか見えない。どっちを向いても景勝地というわけではありません。
ダム建設記念碑と、遠くに見えるのは記念の塔。
ハイダムの6キロ下流にあるアスワンダムの下流。
2008/03/26のBlog

まずは出だしの2章目までが、ダルジール&パスコー・シリーズを読み続け、新刊翻訳を待ち続けていた者にはニヤニヤ笑いを禁じ得ない楽しさ! このシリーズの面白さが凝縮された始まりであると思う。翻訳がまた絶妙なんだなあ…。今作も満喫しました! これぞ現代英国ミステリー小説の底力。


『ダルジールの死』レジナルド・ヒル著/松下祥子訳
(ハヤカワ・ミステリ 2008年邦訳)

通報してきたのが無能で鳴らすヘクター巡査でなかったら、通報を受けたのが無頼で鳴らすダルジール警視でなかったら、爆破事件の様相はまったく違っていたかもしれない。だが現実には、爆発に巻きこまれたダルジールは瀕死の重傷で生死の境をさまよい、パスコーがただ一人爆破事件を追っている。
事件の背後には、反テロを標榜してテロ容疑者や支援者を殺してゆく〈新テンプル騎士団〉と名乗る謎のグループが介在しているらしい。だが、敵のメンバーは公安捜査の中枢にも……ダルジールの容態を気づかいつつも、パスコーは単独捜査に突っ走る!


↑本の裏表紙より。最初の一文がいい感じなのでそのままコピー。


2005年の夏に起きたイスラム教徒過激派によるロンドン地下鉄爆発事件から影響を受けて書かれたと思われる今作です。このダルジール&パスコー・シリーズにおいては常にユーモアを忘れないレジナルド・ヒル。こんな深刻な題材も、なんと軽やかに調理してしまうことでしょう! しかし彼は老練だ。最後の最後でズシーンときました。なんと悩ましい課題を投げかけてくれちゃうのでしょう!

読み終わった瞬間は、パスコーの妻エリーに対して腹が立ちましたが、自分の夫が生真面目であるとともに、いざとなったらダルジールのような無鉄砲な行動も取れることを確信してしまった今では、ああするのも分からないではないと納得しました(させました)。そして、さまざまな背景をもった数多くの登場人物について、その人生について、もう一度じっくり考えてみたくなる余韻が残りました。

そうか、パスコーはカメレオンだったのかー。長く読み続けているにもかかわらず、上司のダルジールや同僚のウィールドに比べ、今一つ、つかみどころがなく面白みに欠けるキャラと感じていたパスコー(というか、ダルジールとウィールドの個性が強力すぎるのだが…)。要するに彼は、下品で奔放に振る舞うダルジールとのバランスを常にはかりながら行動していたために優等生にならざるを得なかった?。
でも、今回のようにダルジールが乗り移った活躍を見せてくれても、インテリで見た目もスマートなパスコーでは、やはり野生の勘をもったデブで大男のダルジールの代わりにはならない思うので、心配していた展開にはならずほっとしました。いや、心配はしていなかったけど…。
ダルジールの周囲を圧倒する性格をいずれ継ぐ者が現れるとしたら、それはロージーかな(笑)。パスコーとエリーのまだ幼い娘。今後の成長が楽しみです。ウィールドの活躍は少なめでしたが、ウィールドらしい出番がクライマックスにちゃんと用意されていたのも満足。あそこは先が読めていたので可笑しくてたまらなかった。

しかしそれより今作は、誰もが「どうしてあいつが警官になれたんだ」と首を傾げるぼんやりヘクターが、実にいいキャラ! 脱力させられて、ほのぼのとさせられて、あげくに泣かされそうになるという・・・。そして、そのヘクターのことをダルジールだけは以前からちゃんと目にかけていたというところが、いいじゃないか。さらにそのダルジールの期待にしっかり応えたヘクター、お手柄!

昨日、職場近くの小さな書店に寄ったら、いつもは本棚に1、2冊挟まっている程度のポケミスが、この『ダルジールの死』については、海外小説コーナーでは一番の高さに平積みされていた。出版社も相当に力を入れているのでしょうか。たくさんの人に読まれるとうれしいです。今作はこれまでのシリーズを読んでいなくてもあまり関係ないし、ここ何作かの中ではとても読みやすい。


追記。小説のラストの衝撃から立ち直る間もなく、あとがきの一文が私にはもう一つの大きなショックだった! あの作家のあのシリーズがそんな理由で終了していたなんて! 
そっちの翻訳が出るのももうそろそろかな……。


2008/03/22のBlog

日比谷スカラ座の一番大きいスクリーンで観ました。
一番大きいところは初めてでしたが、いいですね、ここ!

「ノーカントリー」(2007年 米)
★★★★★

メキシコ国境近くのテキサス・・・小説でも映画でもここを舞台にしたものは、個人的には当たりが多いのだ。とりわけこれは文句のつけようがない映画で、エンドロールが終わった後もしばらくは座ったままぼーっとしていた。またこの映画館というのが、スクリーンが真っ黒になってもすぐには明かりがつかないところが気が利いている。
昨年、日本でも一部で話題を呼んだコーマック・マッカーシーの小説『血と暴力の国』の映画化。米アカデミー作品賞受賞作。原作も映画も原題は「No Country For Old Men」。


麻薬取引に絡んだ殺人現場から大金を失敬してしまったトレーラーハウス住まいのベトナム帰還兵モス(ジョシュ・ブローリン)が、見るからにまともじゃない酸素ボンベを抱えた男シガー(ハビエル・バルデム)に追われ逃げ回る。シガーはアメリカ側組織に雇われた金回収の仕事請負人だが、行く先々で容赦ない殺人を重ねていく。そして、その凄惨な現場を目にして大いに戸惑いながらも、なんとか気持ちを奮い立たせ職務をまっとうしようとする老保安官ベル(トミー・リー・ジョーンズ)…。


逃げる者と追う者。ありふれたストーリーのようでテンポのいい展開、細部の妙なリアリティに意表を突かれっぱなし! また、どのシーンもこれぞ映画と言いたくなる構図だったり、照明だったり、その場面にふさわしい音響だったり…。これほどに充足感を覚えながら観ていられる映画というのは、そうは巡り会えません。ユニークな殺人方法をはじめ、一つひとつの題材は原作小説(未読)のままだとしても、その見せ方にコーエン兄弟の抜群のセンスを感じます。

しょっぱなのメキシコの闘犬に追われるシーンから怖い! とぼけた風味が一層怖さを引き立たせる。といって、コーエン兄弟は残虐なシーンをスタイリッシュに演出して遊んでいるふうでもない(唯一、車爆破を仕掛けるシーンに多少違和感を感じたけれど…)。
何ものにも惑わされることなく自らを神と信じて行動しているようなシガーが醸し出す恐怖は、知らぬ間に私たちを取り囲んでしまったように思える現実世界のさまざまな恐怖と重なる。抵抗するすべが分からず、流されるしかないという諦めに似た麻痺状態に置かれてしまう類いの恐怖。しかし、その麻痺状態からはっと醒める瞬間があった。モスの妻が、殺されるのを分かっていながら、シガーが仕掛けたコイントスのゲームに乗らなかった場面。

さらに、昔気質の老保安官が独り言のようにつぶやくセリフにより、映画は単なるバイオレンス・ムービーで終わっていないと思うが、一方でこの作品を何かの寓話としてとらえ、解釈を掘り下げてみても単なるこじつけとなり、映画のもっている味わいを損なってしまう気がします。


2008/03/21のBlog
[ 00:05 ] [ エジプト ]
神殿遺跡やホテルのある島の対岸が町の中心地。ドームつきの屋根は、たぶん熱気を逃す工夫。ダム建設で移住を余儀なくされたヌビア系の人たちが住んでいる。
アスワン以南のナイル川周辺に暮らしてきたヌビア人の風貌は、北部エジプトの人たちと明らかに違う。ブラックアフリカの人々の風貌で、アフリカ大陸にいるんだという思いを強くします。日の出を見た後、出発まで少し時間があったので橋を渡って行ってみました。


小さな市場があった。
総菜屋さん。キュウリか何かのペーストをこねながら、ナスを揚げていた。揚げたナスは旅行中の食事にもよく出ました。
町の中心の商店街。国境に近いためか軍服の兵士たちもいた。ちょうど前日までスーダンのダルフールで大規模な空爆があったと、旅行から帰って知りました。ここからはかなり離れているけれど。

3人のオヤジに呼び止められ、紅茶をごちそうになる。やはりこういうのは田舎ならではです。オヤジたちは細かな茶葉がグラスの底に沈んだチャイを飲んでいたが、わざわざ店員に指示してティーバッグのチャイ。日本人はアブ・シンベルまでたくさん足を運んでくれるからありがたいと言っていた。
店の中ではメアリー・J・ブライジの最新曲「ジャスト・ファイン」がかかっていた。


2008/03/20のBlog
出たー!アース・ウインド&ファイヤー!(笑)
ラムセス2世が建てたアブ・シンベル大神殿。岩山を彫り、紀元前1250年頃に竣工しました。アスワンハイダム建設による水没の危機から、ユネスコの救済活動により1960年代に現在地に移設され、世界遺産条約誕生のきっかけになった遺跡です。

4体の巨像は全部ラムセス2世。向かって左側から若い頃から老年の姿に変化しているとか。1体の頭部が下に転げ落ちているのは、移設前の状態をそのまま再現したためです。足下には王妃や子供たち、中央にはラー・ホルアクティ。神殿はこの太陽神に捧げて東向きに建てられているわけですが、王の像との大きさの違い見るに、王の権力を誇示する建造物の意味合いが強そうです。最上部に並んでいるのはヒヒ。見猿言わ猿…ではなくて日の出を拝んでいる。

神殿内部に入ってすぐの列柱室の中央通路両脇にも、オシリス神姿のラムセス2世の像が8体! カデシュの戦いなどが描かれた壁のレリーフは保存状態もよく素晴らしかったですが、自分の像ばかり並べる目立ちたがりの王のセンスはどうかと思う(笑)。
一番奥の至聖所にはラー・ホルアクティ、神格化されたラムセス2世、守護神アメン・ラー、創造神プタハが並んで座っており、10月22日と2月22日(移設前はそれぞれ20日)だけは、ここまで朝日が差し込んでくる。ただし左端のプタハだけは、冥界の神でもあるため光が当たらないように設計されているそう。


大神殿の右隣には、最愛の王妃ネフェルタリのために造った小神殿。当時としては驚異の寿命92歳まで生きたラムセス2世の王妃は、自分の娘(!)も含めて30人以上。でもネフェルタリだけは別格。表の立像は2体のネフェルタリと4体のラムセス2世。女神ハトホルにも捧げられている。

真ん中の、ハトホル神姿のネフェルタリが手にしているのは何だろう。ハトホル女神の象徴する楽器またはメナトと呼ばれる首飾りかと思いますが。
古代ギリシア・ローマとは違い、古代エジプトではお尻が小さくほっそりしているほうが美人だそうです。
神殿の脇に停泊していたナセル湖クルーズ船。アスワンとアブシンベルを数日かけてゆったり旅する。欧米人に人気があるようです。

アブシンベルはのどかな田舎。スズメ(だと思う)がいっぱいいて、この写真は民家の壁ですが、神殿の中にも巣がいくつもあるようでした。