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カフェバグダッド(アラブ、イラン、トルコなど中東の文化を紹介するブログ)Cafe Baghdad
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2008/05/28のBlog
[ 19:05 ] [ 映画・演劇(中東以外) ]
イギリス映画の巨匠、ケン・ローチ監督の新作は、「弱者が弱者を搾取する」という、なんともやりきれない現実を描いた「この自由な世界で」。渋谷のシネカノンでの試写会で鑑賞。映画評論家で、明治学院大教授の四方田犬彦氏の姿も。

公式サイト

ロンドンを舞台に外国人労働者の派遣業に乗り出すひとりの女性が主人公。シングルマザーで、複雑な年頃を迎えた息子の問題も抱える。自らが生活するために、ポーランドやウクライナなどから来る外国人労働者を「食い物」にする。まさに「搾取される者が搾取する構図」。多分、今や万国共通の構図だ。

ケン・ローチ作品のすごさは、そのディテールの描写に対する誠実さだ。
たとえば、作品に登場するイラン人・マフムードの人物設定。出版業を営んでいた父が王制時代の1950年代に、石油の国有化を宣言した「ムサッデク首相を支持した」かどで、逮捕されたほか、イラン革命後には、マフムード本人が、現イスラム革命政権から、「反体制の本を出版した」として自らも逮捕された、というもの。この、予備知識がないと、かなりわかりにくい設定には、イランの現イスラム革命体制だけが、言論の自由を抑圧しているわけではない、というメッセージだ。

イスラムに対する無自覚な批判を避けようとする、自覚的な人物設定と思われる。

また、ケン・ローチ作品に通底するものだが、主人公アンジーの描き方からしても、善悪を簡単に決めつけない、ケン・ローチの、表現者として、非常に謙虚な態度が改めてみてとれた。

ケン・ローチ作品については、拙ブログのこの記事も参照。
2008/04/09のBlog
アラビア書道家として、今や世界的にも高い評価を受けている、本田孝一・大東文化大教授の話を聞く機会があった。3月上旬、サウジアラビアの首都リヤドで開催された国際ブックフェアーに招待された時の模様を聞くのが主な目的だった。
このフェアーで、本田教授は、「アラビア書道と私の経験」、「アラビア書道の審美理論」と題した2回の講演をアラビア語で行ったという。前者は、本田氏のこれまで歩んできた道がテーマ。後者は、アラビア書道の美しさを理論的に解明しようという、本田氏にとっても、初の試みだった。

本田氏によると、アラビア書道の世界では、これまで、その美しさについての理論的アプローチはなかったという。イスラム教に関わるものということもあり、「神聖なものということで、(理論には)あまり触れられてこなかったのでは」という。

「アラビア語を知らない人でも美しいと感じるのはなぜか」。この疑問について、本田氏は、「水が流れる線、木々が揺れる様子、山の稜線」などの自然(の美しさ)と、書道の線が類似しているからでは、との持論を展開する。

本田氏によれば、西洋のカリグラフィーは、機械的、無機質的であるのに対し、アラビア書道の線は、人工的ではない。多くの日本人がアラビア書道にひかれるのも、「日本人が最も愛する自然」がそこにあるからでは、という。

では、なぜ、アラビアの地にそうした書道ができたのか。本田氏は、(砂漠が多い過酷な風土の中で)「自然にあこがれ、精神世界の中に自然を生み出そうとしたのでは」との見方を示す。イスラム教という宗教の発生も「生活環境の中での必然性があるのでは」という。

本田氏はまた、イブン・ムクラというアッバース朝の時代の「書道の祖」と呼ばれる人物の言葉を紹介した。「書道は、人間の肉体的道具を通じて表現された、霊的な技術である」。その目的は、「真理の顕現」であり、日本の書道とは、根本的に違うのだというのが、本田さんの見方だ。

アラビア(イスラム)書道は、世界の芸術の中では「例外的な存在」だともいい、そのあり方は、西洋的な「個」を超越しており、「神に近づくための営み」として継承されてきたのだという。

難解なお話だったが、本田氏は、こうした「審美理論」を文章にまとめたいとの意向も持っておられるようだ。アラビア書道に関わる人々だけでなく、多くの日本人に、このユニークで新しい「アラビア書道芸術論」に関心をもってもらいたいものだ。

本田教授が会長を務める日本アラビア書道協会のサイトはこちら
2008/04/07のBlog
「アラブの音を聴け」(4月6日、渋谷アップリンクで開催)で、常味裕司さんが演奏したのは、

「エンタ・オムリ」(ムハンマド・アフドルワッハーブ作曲、ウンムクルスームの代表曲)や、2006年発売のソロCD「光輝く街の」にも収録されている「アル・メディナ・アル・ムナウワラ」「クル・ダ・カン・レ」など5曲でした。

師岡カリーマさんが朗読した詩は、アルアッバース・イブン・アルアハナフ(生年不詳-807)の詩でした。
2008/04/06のBlog
[ 23:54 ] [ カフェバグダッド ]
カフェバグダッド第9弾「アラブの音を聴け」が4月6日、渋谷のアップリンクで開催されました。足を運んでいただいた、60数人の皆様、ありがとうございました。一個人として鑑賞していて、常味さんのウード演奏と、カリーマさんの朗読が、表現するものの奥行きの深さに感銘しました。アラブを感性で理解することができるのは、こういう表現なのかな、と。ウンム・クルスームの「エンタ・オムリ」常味版。筆者が、ぜひに、とリクエストしたものですが、日本人でも、アラブをここまで、体現できる、常味さんの技量と感性と、ウードという楽器のすばらしさに、感服した次第です。
詳報は追って、ブログでレポートしたいと思います。
2008/04/05のBlog
[ 10:41 ] [ カフェバグダッド ]
久しぶりにカフェバグダッドを4月6日の日曜日に渋谷のアップリンクで開催します。お題は「アラブの音を聴け」。NHKテレビ「新シルクロード」の音楽も担当した、アラブの弦楽器ウード奏者の常味裕司さんと、NHKテレビ「アラビア語会話」でおなじみの師岡カリーマさんがゲストです。左の画像をクリックすると、チラシが見られます。

カフェバグダッドの過去のイベントやプロフィールはこちらで。



常味さんのウード人生、カリーマさんの音楽観などにも切り込んでいきたいと思っています。乞う期待。
2008/03/31のBlog
次回カフェバグダッド・イベントのゲストの1人、師岡カリーマさんが久しぶりに新著を出すようだ。タイトルは、「イスラームから考える」。「世界中で報じられるイスラームの視点とは異なる視点で、イスラーム(世界)をとらえる」(カリーマさん)というものだそうだ。出版社は前作「恋するアラブ人」に続いて、白水社
テーマは、「預言者ムハンマド風刺画問題」、「パレスチナ問題」、「聖典コーランの翻訳問題」、「原理を無視するイスラム原理主義」、「青年よ、恋をせよ」、「愛国心を教えるということ」、「私の9.11」、「カルチャー・ウィークの限界」などなど。巻末には、東京外国語大学院教授の酒井啓子氏との対談が収録されている。

たとえば、最初の「悪の枢軸を笑い飛ばせ」と題した一章では、ニューヨークの「スタンド・アップ・コメディー」の中東諸国系の芸人が、パレスチナ問題などの中東の深刻な問題を笑いとばしている様子を紹介。パレスチナ人のディーン・オベイダッラーやイラン系のなんとかなど、有名「中東系芸人」がいるようだ。
ほかにも、コーランの日本語翻訳問題など、これまでの中東関係書籍ではあまり言及されてこなかった問題も正面から取り上げるようだ。もちろん、カリーマさんの得意分野である、アラブの詩、詩人に関するカリーマさんの思いや、エピソードも豊富に盛り込まれているようだ。

「(イスラム世界の問題を)イスラムの問題としてではなく、人間の問題として考えれば、もっと、簡単な問題になる」。カリーマさんが新著を通じて訴えたいのは、そういうことのようだ。
新著の切れ味について、「各方面に配慮したために、中途半端なものになった」と謙遜するが、他の多数の不自由な文筆者と比べれば、中東やイスラムをめぐる諸問題について、ズバリと突っ込んでくれていると信じたい。

4月6日(日曜日)のカフェバグダッド・イベントに、発売は間に合わなかった。ただ、「恋するアラブ人」などの著書を持ってきてくれれば、カリーマさんがサインしてくれるそうです。イベントの質疑応答では、新著のことなど、音楽以外に関する質問も歓迎です。

申し込みは、このフォームから、お願いします。
2008/03/29のBlog
いよいよ、カフェバグダッド第9弾が来週(4月6日・日曜日)に迫りました。
日本随一のウード(アラブの弦楽器)奏者、常味裕司さんと、ご存知、師岡カリーマさんの演奏・トークセッション。本日、事前の打ち合わせを行って、イベントの骨格が固まりました。2人のアイデアで、師岡カリーマさんが自ら選んだアラブ詩を朗読し、それにあわせて常味さんがウードを奏でるという、日本でのアラブ関連イベントとしては、これまでに多分例のない「詩とウードのコラボレーション」に挑むことになりました。NHKテレビ「アラブビア語会話」の千夜一夜物語の朗読でも話題となったカリーマさんの「語り」をライブで味わう、またとない機会です。
また、トークでは、常味さんが、普段あまり語っていなかった「なぜ、アラブ音楽を志したか」について、カリーマさんの質問に答えます。カリーマさんのアラブ人としての音楽感覚については、常味さんの問いかけで、明らかにされることになりそうです。これも乞う期待。ぜひ、足を運んでみてください。

希望者には、カリーマさん、常味さんが、著作・CDにサインもします。常味さんのCDは、当日会場で即売もいたします。2人の素顔に迫るまたとないチャンスとなりそうです。(写真は、常味さんの代表的アルバム「光輝く街のジャケット」)

申し込みは、このフォームから、お願いします。
2008/03/26のBlog
[ 12:52 ] [ 映画・演劇(中東) ]
アラブ映画祭2008が25日、閉幕した。今年の新作上映は6本。充実度や熱気などの面からも衰退感は否めないと感じてしまうが、来年も開催されることを期待したい。

初日に観た「BOSTA(ボスタ)」と「デイズ・オブ・グローリー」をのぞく4本は、23日曜日に鑑賞。本数が少なかったこともあるが今年は、新規上映作品は、すべて鑑賞することができた。アルハムドリッラー。

「満開(満月)」(ヨルダン映画)ヨルダン生まれのパレスチナ人、サンドラ・マーディーさんが、ヨルダンのバカア・パレスチナ難民キャンプでボクサーとして生きる男性を追いかけた作品。他の多くのパレスチナ問題をテーマにした作品同様、重たい作品だ。とりわけ、パレスチナ人が、パレスチナ問題を軽やかに撮るのは、難しいことなんだろうなあ、と思う。別にそうするべき、というわけではないが。
ユーモアがふんだんに盛り込まれたフィクション映画「D・I」のエリア・スレイマン監督なんかは、やはり、イスラエル国籍のパレスチナ人だからなあ、などとも考えてしまう。
来月のカフェバグダッドのイベントにゲストとして招いた師岡カリーマさんが、来月発売する予定の新著の中で紹介するという、ニューヨークのパレスチナ人コメディアンを紹介するらしいが、そのさわりの話を聞いていると、これまでのパレスチナ芸(術)人界と比べて、面白い可能性を秘めた存在なのかも知れない。

「VHSカフルーシャ ~アラブのターザンを探して」(チュニジア映画)
理屈抜きに面白い。映画祭スタッフの佐野光子さんの今回イチオシ作品。アメリカのサンダンス映画祭にも出品したらしい。

「サービス圏外」(シリア映画)
アブドルラティフ監督の過去上映作「ラジオのリクエスト」で狂人役を演じた俳優が、政治犯で服役中の友人の妻を支援するシリアスな役柄で再登場。いい役者だ。監督の過去の来日の際に通訳したエリコ通信代表・新谷恵司氏にちなんだという、登場人物「シャンタニ」と主人公が行く、マクハー(カフェ)は、よさそうなカフェだった。
ダマスカスの魅力いっぱい紹介、という側面もあったが、キオスクの男が秘密警察関係者で、獄中の友人に関する情報を主人公にもたらす、という設定。いかにも、現大統領の父、ハーフェズ・アサド大統領が作り上げた世界有数の「秘密警察国家」シリアらしさがただようが、こうした設定を映画に盛り込むこと自体は、別に問題がないのだろうか、とやや不思議に感じた。

「ヘリオポリスのアパートで」(エジプト映画)

アラブ映画専門家、佐野光子氏によると、ムハンマド・ハーン監督は、女性を撮らせると天下一品なのだそうだ。確かに、だんだん美しさを増していくミニヤ出身の主人公の変化をうまく描いている。個人的には、唐沢寿明似の男性主人公に結婚を迫る女性役のほうが、いかにもエジプト人という感じもあり、いい役者と思ったが。ところで、字幕でも映画中でも、ミニヤは上エジプトとなっていたようだが、エジプト人には、中エジプトというカテゴリーはなかったのだったか?
ハーン監督は、今回イ、久しぶりの来日を果たした。アンワル・サダト大統領の伝記映画「サダトの日々」やそれに主演して、3年前になくなったアハマド・ザギなどの話をインタビューしたので、機会があれば、紹介していきたい。
(写真は、開幕セレモニーの様子)
2008/03/25のBlog
在京アラブ各国大使館の主催による第1回「アラブの日」レセプションが、東京・大手町のパレスホテルで開催された。
アラブに関わる各界の関係者が顔をそろえたが、この種のパーティの中では、政界関係者が多かった。河野洋平・衆院議長を筆頭に、常連の小池百合子氏をはじめ、猪口邦子、河野太郎、逢沢一郎、松浪健四郎の各議員らや、飯島勲・元首相秘書官らが舞台前にずらり顔をそろえた。非アラブでは、このほど着任したアッバス・アラグチ駐日イラン大使の姿が目を引いた。
司会は、カフェバグダッド・トークショーのゲストにも来ていただいた、アルモーメン・アブドーラ氏。アラブ音楽は、ル・クラブ・バシュラフ(の皆さんだと思いますが・・・=写真)の面々。
後援の日本アラブ協会の岡部敬一郎会長(コスモ石油会長)もあいさつ。岡部会長が寄せた祝辞によれば、「アラブ・デーは今後、セミナーや芸術の紹介も計画」しているとのこと。どんな活動をこれから展開していくのか、期待したい。

ちなみに、在京アラブ外交団(Council of Arab Ambassadors and heads of Missions in Tokyo)の構成国は、順不同で、エジプト、モロッコ、モーリタニア、イエメン、ヨルダン、アラブ首長国連邦、バーレーン、チュニジア、アルジェリア、ジブチ、サウジアラビア、スーダン、シリア、ソマリア、イラク、オマーン、パレスチナ、カタール、コモロ、クウェート、レバノン、リビアの22か国。

カフェバグダッドに関してはこちらを参照。
2008/03/23のBlog
アラブ映画祭2008の初日(3月17日)に上映された2作品。

「BOSTA(ボスタ)」(レバノン映画)
レバノンに「タブケ」という伝統芸能があるらしい。「デジ・タブケ」と自称する現代と融合したタブケを追求する楽団が、レバノン各地を巡業する過程での人間模様・葛藤を描いた。鑑賞後、「ストーリーが分かりにくい」といった反応が聞かれた。監督のメッセージは、多分、「歴史的な宗派主義から脱却し、レバノンは再生せよ」といったことだろう。作品中で、年上の世代から酷評されつつも、次第に認められていく「デジ・タブケ」は、そうした「新しいレバノン」の象徴である、といった監督の思いが、レバノンの歴史や現代の事情をよく知らない人には、ピンと来ない、という側面があるようだ。日本でのロードショー上映が模索されているようだが、果たして、「踊るマハラジャ」や、「ジプシー・キャラバン」のような、幅広い層の話題になるような作品になるか、どうか。

鑑賞後に会場で会ったエジプト人のアブドラ・アルモーメン氏は、「一般的には、エジプト人には理解しにくいだろう」といったような感想をもらしていた。アラブ人のための映画、というよりは、レバノン人のための映画、という感は否めないのだろう。


「デイズ・オブ・グローリー」(アルジェリア映画)

アラビア語やアラブ音楽が飛び交う稀有な、第二次世界大戦欧州戦線モノの映画。どうもベルベル人と見られるフランス植民地下のアルジェリアなどの若者たちが、フランス国家への忠誠心を抱き、フランス解放の戦いに参加し、その多くが戦死する、という史実に基づいた話。その後、アルジェリアがフランスから独立した後、アルジェリアのベルベル人たちは、「フランスに加担した裏切り者」とのレッテルを張られ続けていることも考えあわせると、なんとも考えさせられる作品だ。