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何となく社会福祉 ─ 実務版
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2008/05/23のBlog
[ 05:47 ] [ ┗ 就労支援会計基準 ]
決算も終了し、理事会や評議員会も終了して、一段落という社会福祉法人の事務担当者の方も多いことと思います。会計ソフトの就労支援会計基準への対応が遅れ、結局、会計ソフトでは決算ができない!!という事件に直面しまして、なんとか乗り切ったところです。

さて、今回は「事業区分」について、まとめてみようと考えています。社会福祉法人の場合には、会計単位とか経理区分などが「社会福祉法人会計基準」で定められています。これは、社福の基準ですから、ま、ローカルな話ではあります。

「事業区分」については、就労支援会計基準に定められているわけですから、就労支援事業を営む法人は、その種類を問わず、設定しなければならないことになっています。

■1 「事業区分」とは

さて、就労支援会計基準の原文をひろっておきます。

第二 自立支援法下における就労支援事業に係る会計処理について
1.就労支援事業会計処理基準の基本的な考え方
(3)就労支援事業のいずれかのみを実施する指定事業所等(多機能型を除く。以下「通常の事業所等」という。)においては、法人本部及び就労支援事業の2つの経理区分を設け、多機能型事業所等においては、法人本部及び各指定事業所等毎に経理区分を設け、並びに各就労支援事業毎に事業区分を設けるものとする。


これを読むと、事業区分とは「各就労支援事業」毎に設けるということはわかりましたが、どういうものかという定義は見当たりません。就労支援会計基準の中の表や別紙、「留意事項等の説明」の表から類推することになるのでしょう。

いろいろ探したところ、『「…基準」に関するQ&A』の26問で触れられています。

(注)このQ&Aは、厚生労働省のサイトでは公開されていないようです。ググってみたところ、1位にヒットしたのが栃木県のサイトでした。リンクをはっておきます。http://www.pref.tochigi.jp/shogai/ssgr/070531/kaikeiQA.pdf

これによると、「事業区分の中の「○○事業」「△△事業」は、クリーニングやパン製造等の各事業」を指しているとして、授産施設会計基準の授産活動収入の区分を援用しています。そこで、授産施設会計基準の授産事業収入の勘定科目説明をみると、「授産事業の内容(製造製品の売上、仕入商品の売上、受託加工等の別等)を示す名称を付した科目で記載する。」となっています。

これを要するに、授産施設会計基準で収入を区分していた考え方を用いて、就労支援会計では「事業区分」に分けましょう、ということになるのではないかと思います。

■2 「事業区分」をどう分けたか

ここからは、経験談です。S作業所を経営する、社会福祉法人F会は、授産施設会計基準の時には、授産活動収入を「自主製品事業収入」と「販売手数料収入」という二つに分けていました。S作業所は、小規模通所授産施設です。これからすると、事業区分は、自主製品事業と販売手数料事業になりそうです。

販売手数料収入は、S作業所の販売店舗に他の作業所や施設の製品を置いて、その販売を委託されており、その際の管理費相当額を販売手数料収入として計上していたものでした。事実上は、雑収入などで扱えばよいものでしょうが、授産活動収入に計上するために、収入を区分していました。委託販売ですから、仕入などは発生しません。収入の金額は、全体の1%以下です。いわゆる「重要性の原則」からすれば、区分する必要もないほどの金額ですが、明瞭表示のために区分していました。

そうすると、事実上、自主製品事業という一本の事業区分になってしまいます。

そこで、相談の結果、S作業所の事業内容を示すためには、次の二つの事業区分を設定することが良いのではないかということになりました。(1)自主製品事業、(2)下請事業です。

自主製品にも木工製品や縫製製品などの種目がありますが、これは独立採算ということで進めているわけでもなく、利用者もいくつかの作業種目に従事します。利用者工賃の適正計算という趣旨から、自分たちの責任で製作して販売する事業と依頼された役務を提供する事業という大きなくくりで扱うことにしました。一方は材料費や加工のための費用などの支出が多い事業区分です。これに対して、下請事業は、役務の提供が主ですから、費用の発生は少ない事業区分です。

この区分が、S作業所の実態を示すためには、最良の方法ではないかという結論に達しました。もちろん、事業報告のベースでは、各製品種類毎の事業収入は報告されています。

■3 「事業区分」を分ける考え方

経験則ではありますが、「事業区分」を分ける考え方について整理しておこうと思います。これは、上記で議論したときの論点となったものです。

(1) 授産施設会計基準の適用上、区分していた事業収入区分は、収入内容の明瞭表示ということを主眼としており、計算の単位という考え方で設けたものではなかった。

(2) 収入内容の明瞭表示は、事業報告書で行えばよいのではないか。

(3) 利用者は、複数の事業種目に従事している。これが、福祉工場や大規模な授産施設なら製造ラインというようなくくりで扱うことも可能かもしれない。小規模作業所の場合、複数の事業種目に従事している利用者の稼働状況を正確に把握することはできず、かつ、本人の申告も難しい。

(4) 必要以上の細分化は、必ずしもS作業所の実態を示すものとはならず、適正な利用者工賃の算定という趣旨を逸脱する。

(5) そこで、作業所の実態を示す事業区分として、これ以上細分化すると作業所の実態を示さなくなる最低限度を模索し、その結果を事業区分として設定する。

以上のような経緯で、S作業所では「自主製品事業」と「下請事業」という区分に落ち着くことになりました。

NPO法人で制度移行を行う作業所も同様な事情にあるものと考えられます。これは、一つの参考ではありますが、利用者工賃の算定という原則の上で、作業所の実態を素直に反映できる事業区分を設定することが大切ではないかと考えたしだいです。

事業区分の設定が完了すれば、後は、事業区分毎に経費をあん分し、その上で各事業区分について製造原価、販売費及び一般管理費に経費を分ける作業が続きます。(この経過は、次の記事にします。)
2008/05/02のBlog
いろいろ記事を予定しているのですが、決算事務で思い通りに進んでおりません(汗)

現在のところ、福祉事業から就労支援事業への共通経費のあん分、就労支援事業の事業区分毎の共通経費のあん分、各事業区分の、製造原価と販売費および一般管理費の経費あん分まで進みました。

この結果は、何らかの形で報告できるのではないかと考えています。決算手続のために情報を探していらっしゃるNPO法人の諸氏には、お役に立たず、お詫びするしかないしだいです。

急いで内容を整理しようと考えています。 ペコリ
2008/04/20のBlog
[ 10:26 ] [ ┗ 就労支援会計基準 ]
今回のテーマは、資金収支計算です。

これと就労支援会計基準で作成を求められている、【就労支援会計】複雑な計算書類の種類で書いた(1)~(3)の書類との関係を整理してみたいと思います。

ここで、資金収支計算と収支計算は同じものを指しています。ですから、「資金収支計算書」としてあるのは、「収支計算書」と同じと考えてください。

就労支援会計基準の「事業活動別…内訳書」は、そのままでは資金収支計算につながらないということをまとめてみます。

■「事業活動収支内訳表」は事業活動収支ベース

繰り返しになりますが、就労支援会計基準は、事業活動収支ベースでできています。これは、つまり、損益計算、正味財産増減計算をベースにする計算ということになります。

そこで、自然の疑問として、では、資金収支計算との関係はどうなるのだろう?ということが浮かんできます。就労支援会計では、当然のことのようにこのことに触れていません。当たり前でしょ、という感です。

授産施設会計基準では、「授産事業原価明細書」は資金収支ベースでした。ですから、この明細書の金額(a)が資金収支計算書と結びつき、この明細書に、減価償却費やたな卸資産の増減、引当金の計上などを加減した金額(b)が、事業活動収支計算書に結びつきました。

この意味で、授産施設会計基準の時代では、(a)が資金収支計算書へ、(b)が事業活動収支計算書に結びつき、この関係がわかりやすかったといえます。

就労支援会計基準では、そもそもが事業活動収支ベースですから、この中から、支払資金に関係する金額を「抽出する」という作業を経ないと、資金収支計算につながる金額がわからないということになります。

■就労支援会計の「事業活動収支内訳表」と資金収支計算

就労支援会計基準の別紙1(資金収支決算内訳書)と別紙2(事業活動収支内訳書)のフォームではそれぞれ「就労支援事業支出」という科目名の表示がありますが、これは同じものではないと割り切る必要があります。

別紙1は、支払資金の計算書ですから、就労支援会計の「事業活動収支内訳表」などの計算書から、支払資金に関係する金額を抜き出したものになるということでしょう。当然に。

就労支援会計基準に示された表1から表3までを見てみると、期首期末の材料、仕掛品、製品、商品のたな卸高、引当金の繰入、減価償却費(控除項目を含む)、徴収不能額などは、支払資金の増減に関係がないです。会計処理の3つの分類からいえば、「資金の増減」と「純資産の増減」が異なる、特殊な取引ということになります。

そこで、この「特殊な取引」に該当する金額以外の金額を抜き出したものが、資金収支計算上の「就労支援事業支出」ということになるでしょう。

NPO法人でも、収支計算書を作成しなければなりません。この点、明示がないので、なんとなく心配という部分ではないでしょうか。

NPO法人の場合に、この「特殊な取引」の計上場所は、どこになるかといえば、「正味財産増減計算」の部分に入ることになります。「手引き」方式の場合には、就労支援会計の計算から、資金収支部分は「収支計算書」に計上し、「特殊な取引」部分は、正味財産増減計算部分に計上するという複雑な手順になるでしょう。

「留意事項等の説明」8に示された計算書を標準としましょうと呼びかけたのは、こうした複雑さに対応するためでもあります。

以上のことは、当然のことで、そうとしか言いようがないので、確認の意味でまとめてみました。
(これって、間違っているでしょうか?>ご存知の方)
2008/04/16のBlog
前回話題にした、就労支援会計基準での法人の種類と計算書類の定めについて、もう一回確認しておこうと思います。この定め方は、就労支援会計基準の立場というか、厚生労働省の立ち位置を表しているようにも思えます。

■社会福祉法人の場合

社会福祉法人については、計算書類のかなりの部分について、定義しています。

(1) 授産施設会計基準の「授産」を「就労支援」と読み替えて、就労支援会計基準で定めるもの以外については、これを適用する。→「就労支援施設会計基準」として適用

(2) したがって、資金収支計算書(同内訳書)、事業活動収支計算書(同内訳書)、貸借対照表(同内訳書)は、当然に適用される。

(3) 授産施設会計基準や社会福祉法人会計基準で定められた附属明細書も当然に作成することになります。

■社福以外の法人の場合

この場合には、一般的な処理は、それぞれの法人が準拠すべき会計基準にしたがって処理して、就労支援事業部分についてのみ、就労支援会計基準に示された処理をすることになる。

(1) 就労支援会計の部分は、基準通りに適用する。

(2) 就労支援会計以外の部分は、定義しない。

(3) 「指定サービス基準」により、区分経理が求められる。この場合の扱いは、「留意事項等の説明」に例示されている。

■この違いって?

就労支援会計基準では、「会計単位」「経理区分」「事業区分」などという概念が登場します。上記の適用範囲の差は、この概念のスコープに影響を及ぼすように思います。

計算書類を作成する場合に、「経理区分」はどのように記載したらよいのか、などを考える場合に、この差がヒントになるように思います。「留意事項等の説明」に例示された計算書などを解読する場合に有効になるだろうと思えます。

本来ならば、思いきって決めてしまえば良よかったのに、などと考えたりしましたが、そこは厚労省の節度というか、なんというか、ほかの省庁や会計慣行の領域へ踏み込むようなことはできなかったのでしょう。

■補足:NPO法人で作成すべきなのは?

計算書類の種類について、就労支援会計基準の不明瞭な書きぶりをまとめてみると、次のようになるのではないかと思います。(あまりにくどいですが・・・(汗))

(1) 社会福祉法人と公益法人は、基準が示した計算書類を作成しなければならない。

(2) NPO法人は、各「内訳書」(前回のまとめでいえば、(4)~(6)の書類)の作成まで求められているわけではない。しかし、収支計算書と貸借対照表はNPO法で作成すべきことになっているから省略できない。

(3) NPO法人では、収支計算書から誘導的に貸借対照表を作成するためには、正味財産増減計算が必要になる。この方法について「手引き」方式を採用するか否かという問題はあるにせよ、正味財産増減計算書は省略できない。

(4) 民間法人(普通の会社)では、収支計算は義務づけられていないので、省略できる。また、損益計算書と貸借対照表の作成は当然だから、省略できない。

(5) 「指定サービス基準」では、指定サービス事業とその他の事業を区分経理することとされているので、何らかの区分計算が必要になる。「留意事項等の説明」によると、いくつかの書式が示されている。

したがって、NPO法人と普通の会社では、各「内訳書」の作成まで義務づけられていないが、上記(5)により、何らかの区分計算書が必要になる。また、就労支援事業の部分は、就労支援会計基準に示された方法によって経理処理しなければならない。

これでもややこしいですが、ロジックを追っていくと、こんな感じになるのではないかと思います。まあ、単純にいえば、「授産施設会計基準」と「社会福祉法人会計基準」に書かれたことは適用しなくて良いと理解すれば良いのではないでしょうか。以上、とりあえずの補足でした。

2008/04/13のBlog
[ 08:19 ] [ ┗ 就労支援会計基準 ]
就労支援会計で示された、計算書類の種類について、さらっと整理してみたいと思います。

■就労支援会計基準に示された計算書類

就労支援会計基準は、就労支援の事業に関する、法人の種類に関わらない会計処理の基準を定めるとしています。この基準の中で作成すべきとして明示され、様式が示されている計算書類には、次のようなものがあります。

(1) 就労支援事業別事業活動収支内訳表(表1)(多機能型では(表7))
(2) 就労支援事業製造原価明細表(表2)(同じく(表8))
(3) 販売費及び一般管理費明細表(表3)(同じく(表9))

この3種類は、いずれの法人でも作成しなければならない計算書類です。

ところで、就労支援会計そのものは、社会福祉法人に軸足を置いていますから、基礎となるのはどうしても旧授産施設会計基準です。これを就労支援会計では、授産基準を読み替え適用するとして、「就労支援施設会計基準」という名称を与えています。

そこで、社福では、資金収支計算書、事業活動収支計算書及び貸借対照表を作成することになりますが、この内訳表の様式を示しています。

(4) 資金収支決算内訳表(別紙1)(多機能型では(別紙4))
(5) 事業活動収支内訳表(別紙2)(同じく(別紙5))
(6) 貸借対照表内訳表(別紙3)(同じく(別紙6))

このうち、(6)の作成は任意で、基準では「作成できる」としています。これ以外に、次のような明細表もあります。

(7) その他の積立金明細表(別紙7)
(8) その他の積立預金明細表(別紙8)

これは、就労支援会計基準「第二 4.積立金の積み立てについて」に関係するのですが、この規定により積立金を積み立てたときに作成しなさい、ということになっています。ただし、貸借対照表内訳表を作成している場合には、貸借対照表に表示されるから(別紙9)、作成を省略しても良いことになっています。

■社福以外の法人はどうなるのか?

さて、以上は、社会福祉法人の場合です。社福以外の場合にはどうかというと、就労支援会計基準「第二 1.就労支援事業会計処理基準の基本的な考え方」の(4)に書かれています。

 就労支援事業所等を運営する法人は、授産施設会計基準同様、資金収支計算書、事業活動収支計算書(損益計算書、正味財産増減計算書等を含む。)及び貸借対照表(以下「計算書類」という。)を作成するとともに、当該事業の収支状況等を把握するため、資金収支決算内訳表、事業活動収支内訳表を作成するものとする。
 また、当該事業の財産状態を明らかにするため貸借対照表内訳表を作成できるものとする。
 なお、社会福祉法人及び会計単位ごとに特別な会計として経理を行う民法第34条に規定する法人等以外の法人又は指定事業所等にあっては、計算書類のうち、資金収支計算書又は事業活動収支計算書、及び貸借対照表を省略することができる。


これは、法律の定め方に良くあるやり方ですが、まず全体的に網をかけておいて、例外を認めるというような手法ですね。まずは、社福と同じ計算書類の作成を義務付けて、例外事由に該当する場合には省略可能としています。

この一定の事由というのが、「社会福祉法人及び民法34条に規定する法人等」以外の法人ということになるでしょう。ここで「民法」云々というのは、いわゆる公益法人で、従来は民法法人などとも呼ばれていました。公益法人制度改正にともなって、この民法34条というのも廃止されますが、一般公益法人法などができていますから、それを指すことになるでしょう。

この事由に該当する場合に省略できる計算書類は、(「資金収支計算書」or「事業活動収支計算書」)and「貸借対照表」ということになります。

先に引用した、就労支援会計基準の「第二 1.(4)」では、事業活動収支計算書には「損益計算書」と「正味財産増減計算書」も含まれています。

さて、NPO法人は、この例外事由に該当すると解釈しても良いものでしょうか?

文面をそのまま読むと(業界では文理解釈などと呼ばれていますが)、NPO法人は、社会福祉法人でも民法34条の法人でもありません。そうすると「以外の法人」に該当するわけですから、省略可能と読めます。その場合に、NPO法27条では、収支計算書と貸借対照表の作成が義務付けられていますから、省略可能なのは「事業活動収支計算書」ということになるでしょう。

つまり、上記の(1)~(3)のみを作成すればよいのだ!! と言い切っても良いのでしょうか?

■厚生労働省の説明によると

昨年2月に行われた厚生労働省の行政説明資料を読んだことがあります。これは、公表されているものではなく、ある研修会での行政説明のレジュメです。担当者は障害福祉課のMさんという方で、この方はどうも就労支援会計基準の策定についての行政側の担当者のようです。

このレジュメには、社会福祉法人、公益法人、NPO法人以外は省略できるという趣旨のことが書いてあります。行政担当者は、そういう意図を持っているようです。しかし、基準の文面は違います。

※補足:
例外事由の「民法34条に規定する法人等」の「等」の一文字が気になります。民法34条には社団法人と財団法人が定められていますから、この2つを総称して「法人等」としているのだと、考えていました。

ところで、民法の条文そのものは、「(公益法人の設立) 第三十四条 学術、技芸、慈善、祭祀、宗教その他の公益に関する社団又は財団であって、営利を目的としないものは、主務官庁の許可を得て、法人とすることができる。」となっていて、この非営利の公益目的という趣旨の部分に着目すると、「特定非営利活動を行う団体」も含むから「等」と入れているのだ!!という強硬論も可能かもしれません。NPO法人も社団性があるとは思います。

いずれにしても、どこをどう読めば、こういう結論になるということがわかりやすいかと言えば、大変にわかりにくい。行政文書のプロが書いたものということでしょうか。

ここで気づいたのですが、一般社団法人等(一般社団法人や一般財団法人)は、いわゆる「準則主義」で法人設立ができますから、法人設立手続の許認可手続きがいらなくなります。今後は、一般社団法人等で就労支援事業に移行するというところも登場するかもしれません。

■これ以外に「留意事項等の説明」にも例示が・・・

「留意事項等の説明」をみると、就労支援会計基準ではなく、「指定障害福祉サービス基準」を根拠として、区分経理が必要であることが再三指摘されています。その上で、いくつかの様式が提案されています。

NPO法人の「就労支援事業区分事業活動計算書(仮称)」もその一つです。「留意事項等の説明」は、事務連絡ですが、厚労省の場合に、こうした事務連絡が拘束力を持っている場合があります。いわゆる通達行政の歴史が長いところですから・・・。これは、事務連絡だと侮っていると大変なことになりかねません。

いろいろな文書を読んでみて、これこれの方法で処理したらよいだろう、などと考えてみたりしますが、根拠の複雑さもあいまって、本当にそれで合っているの?などと心配になる今日この頃です。
2008/04/07のBlog
社福やNPOの会計処理について、収支計算と正味財産増減計算が「鬼門」です。聞き慣れた(?)言葉でいうとすれば、「一取引二仕訳」の扱いがかなり違ってくるのです。これは問題です。何が問題かといえば、経験の共有化、共通言語化を阻害する要素だからです。小規模作業所(NPO法人で制度移行)を支える基盤作りにとって、阻害要素と考えられるからです。

この違いを整理してみます。

■会計処理の3つの分類

社福やNPOでは、「資金の増減」を収支計算(資金収支計算)で捉えます。また「純資産の増減」を正味財産増減計算(事業活動収支計算)で捉えます。この関係に着目すると、取引は、大きく3つに分類できるように思います。

(1) 「資金の増減」にも「純資産の増減」にも影響を及ぼさない、中立的な取引
(2) 「資金の増減」と「純資産の増減」が一致する、一般的な取引
(3) 「資金の増減」と「純資産の増減」が異なる、特殊な取引
 (3)-1 資金は増減するが純資産は増減しない
 (3)-2 純資産は増減するが資金は増減しない

「資金の範囲」を同じに設定すれば、社福もNPOも上記の(1)と(2)の取引は同じになり、資金収支計算の結果も同じになります。ところが、(3)の特殊な取引の場合には、処理の方法が異なってきます。このケースは、いわゆる「一取引二仕訳」が必要な場合です。

■まず結論から:NPOの計算書類を統一すべきじゃないですか?

『「就労支援の事業の会計処理の基準」の留意事項等の説明』という文書があります。平成18年11月13日付の厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部 障害福祉課による、事務連絡です。厚生労働省のサイトでは公表されていないようなので、一番手っ取り早いところで探したら、岩手県のサイトが見つかりました。参照URLは下記です。
http://www.pref.iwate.jp/~hp0358/09jiritsushien/
syuuroukaikei/syuuroukaikeikijyunn.pdf


この中に「8.NPO 法人が就労支援事業を実施する場合には、具体的にどのような会計処理が必要となるのか。」という項目があります。

NPOと社福の処理を統一するために、ここで示された「就労支援事業区分事業活動計算書(仮称)」、「就労支援事業別事業活動内訳表(仮称)」を、NPOの正式書類として扱いませんか?というのが、この項の結論です。

まぁ、まんまと厚生労働省の手の内よ、という感じはしますが、社福の経験を頂戴し、社福用に作られた解説をいただくためには、共通の基盤が必要です。そのために、留意事項8で示された計算書類が、その役割を果たすのではないかと考えるからです。

■「就労支援会計基準」は事業活動収支を基準にしている

そもそも「就労支援会計」は、事業活動収支を基準にしていますから、先の3分類からいえば、(3)を前提としていることになります。これは、NPOの「手引き」準拠の場合と、社福の場合では対応方法が大きく異なります。長くなりそうなので、具体的にここで説明することはあきらめますが・・・(注)

留意事項8の計算書は、社福の事業活動収支計算書と良く似たものになっています。

社福の場合、資金収支計算と事業活動収支計算は、資金収支にはあるが活動収支にはない、活動収支にはあるが、資金収支にはないという区分で、上記の(3)-1、(3)-2の区別をします。

一方、手引き準拠NPOでは、特別な仕訳をどう工夫するかという問題になります。また、正味財産増減計算という手続きは、公益法人特有なものですから、一般の簿記の勉強では出現しません。これに対して、社福の事業活動収支計算は、考え方は企業会計の損益計算と良く似ています。簿記の勉強の成果を直線的に結びつけやすいという特徴があります。

■留意事項8に対応する、NPO会計ソフトはまだ登場していない

ただし・・・、これが大問題ですが、留意事項の8に対応するNPO会計ソフトは、まだ存在しないようなのです。市販の企業会計用の会計ソフトを工夫して使っているような場合には、これは、ほぼ対応できないでしょう。

作ってしまえという方針もありますが、これは今後の課題ということで。

今後は、留意事項8を前提として、NPO法人を扱います。社会福祉法人寄りの会計基準解読になるかもしれませんが、NPO法人でも流用可能と考えるからです。

社福もNPOも根拠法が異なりますから、完全に一致させることはできないとは思います。ただし、この違いは「形式的な違い」にとどまり、根本的な考え方は、かなり共通のものになるでしょう。

(注)「手引き」準拠でも会計処理は可能です。ただし、混乱するので(自分が(汗))「手引き」の説明は省略します。もし、知りたい方がいらっしゃったら、コメント欄に書き込んでみてください。このblogのコメント欄は、承認型にしましたので、多少、安心かもしれないです。
2008/04/04のBlog
この4月1日から、NPO法人で新制度に移行した小規模作業所も多いのではないかと想像しています。行政の指導は、こうしたNPOをある程度の規模で合併させて運用するというようなことも考えているらしいですが、これは改めて。

少し、アクセルをかけます。もう1回か、2回くらい社福とNPOの会計処理の違いについてまとめます。その後、社福とNPOを同時に説明することを試みます。

まず、おさらいの意味も含めて、現行の制度についてまとめておきます。ここで紹介するのは「特定非営利活動法人の会計の手引き」という文書です。この文書は、「手引き」と略称され、次のURLで参照することができます。

http://www5.cao.go.jp/99/c/19990608c-npokaikeitop.html

また、念のために、就労支援会計基準の入手方法は、下記の記事に書いておきましたので、再掲します。

〈「就労支援の事業」について〉
http://www.doblog.com/weblog/myblog/16933/2009888#2009888

■「手引き」の特徴

NPO法人用の会計ソフトは、いろいろな種類があると思いますが、ほとんどがこの「手引き」に準拠しています。NPO法人用会計ソフトで就労支援会計の処理をしようとすると、かなりの困難が伴うような気がします。では、その特徴をかいつまんで説明してみようと思います。

(1) NPO法人の会計基準に替わるもの

NPO法人の会計処理基準は制定されていません。内閣府のサイトを見ると、「特定非営利法人会計処理基準」の制定を課題としてあげているようですが、状況は不明です。

そうした中、「手引き」は依然として、NPO法人の会計処理の基準の役割を果たしています。この「手引き」にしたがった会計処理をすることが、NPOでは一般的といえます。

(2) 「手引き」は旧公益法人会計基準に準拠している

旧公益法人(いわゆる民法法人といわれたもの)の会計処理を定めたものに「公益法人会計基準」というのがあります。公益法人制度改正に伴って、現在は、この基準も改正されています。そこで、これを旧公益法人会計基準と新公益法人会計基準と区別することにします。

「手引き」の考え方は、旧公益法人会計基準に準拠した内容になっています。

(3) NPO法27条

NPO法人は、NPO法27条の規定(会計の原則)に従わなくてはなりません。ここには、収支計算書や貸借対照表などの計算書類が定められています。

収支計算書は、前回にとりあげた「資金の範囲」に関係します。NPO法は、資金の範囲については定めをおいていません。一方、「手引き」では、資金の範囲を限定せず、いくつか例示しています。

(4) 収支計算と貸借対照表

資金収支計算から、貸借対照表を誘導的に作成することはできません。そこで「正味財産増減計算」というプロセスが必要になります。正味財産増減計算というのは、純資産の増減を計算しますから、企業会計でいう「損益計算」のようなものです。

ところが、NPO法人は、収支計算書の作成が義務づけられていることから、「手引き」では、この収支計算書(資金取引)を調整する形で「正味財産計算」を行い、その結果が「貸借対照表」に結びつく形になっています。まとめると、次のようになるでしょう。

[収支計算]⇒[正味財産増減計算]⇒[貸借対照表]

これは、社福との大きな違いです。社福では次のような感じです。

[事業活動収支計算]⇒[貸借対照表]

「手引き」については、これで終わりにします。次回は、最後に話題にした、「正味財産増減計算」を取り上げます。「資金の範囲」の問題と「正味財産増減計算」の問題が、社福とNPOの会計処理を統一的に語る(つまり、NPOが社福の経験をいただく)ための二大関門と考えているからです。
2008/04/03のBlog
今回のテーマは、「資金の範囲」という、ちょっと財務オタ的な話題です。

社福とNPOの違いにこだわるのは、新制度に移行する小規模作業所をメインに考えているからです。

制度移行する小規模作業所は、そのほとんどがNPO法人を設立して対応する事になるでしょう。大規模法人は、事務担当者をおくこともできるし、人員配置もできるでしょう。小規模作業所ではそうは行きません。少ない人数で、経営から指導、事業科目の開発、事務までこなさなくてはなりません。

このとき最も頼りになるのが積み重ねられた社福(特に小規模授産施設を経営する社福)の経験でしょう。この社福の経験をチョロっといただく、つまり共有化できれば、小規模作業所を経営するNPO法人にとっては、大きな助力になるに違いありません。

この経験の共有化と共通の言葉で語れるという共通の基盤づくりが、就労支援事業に移行する小規模作業所を社会的に支える枠組みになるだろうと思われます。

■「資金の範囲」という考え方

まず、「資金の範囲」に属する取引を「資金取引」ということにします。

収支計算(資金収支計算)は、資金の増減を計算します。この最も簡単なものは家計簿ではないでしょうか。このとき、資金の範囲は現金や預金です。現金や預金の増減、つまり資金の増減を計算します。

仮に資金の範囲を現金に限定した場合には、預金の増減は資金取引ではありませんから、収支計算の範囲外になります。資金の範囲を定めることは、こんな違いが生ずる結果になります。

■社福の資金の範囲

社会福祉法人では、資金の範囲が定義されています。社会福祉法人会計基準で、流動資産(たな卸資産を除きます)と流動負債(引当金を除きます)を資金の範囲とすることになっています。

当然に、収支計算の残高は、流動資産-流動負債で計算されることになります。具体的にいうと、現金や預金は流動資産に入りますし、未収入金なども流動資産です。また、未払金や預り金は流動負債です。この例でいうと、収支計算の残高は、(現金預金+未収入金)-(未払金+預り金)で計算できます。

■NPO法人の資金の範囲

NPO法人では、資金の範囲は特に定義されていません。「特定非営利活動法人の会計の手引き」という文書があります。「手引き」と呼ばれています。ここでは、三つくらいのパターンを示していて、法人の実情に合わせて選択できるようなことになっています。

その1は、資金の範囲を現金預金にするものです。これは、先の家計簿方式です。

その2は、短期金銭債権と短期金銭債務です。金銭債権債務は、流動資産や流動負債のうち、金銭性の高いもので、未収入金や未払金、預り金などです。短期借入金などは含まれません。

その3は、流動資産と流動負債とするものです。これは、社福とかなり近いです。ただし、この用語の使い方をみると、たな卸資産や引当金も含まれてしまうことになるでしょう。

■そこで資金の範囲を同じにしよう!!

さて、NPO法人が社福の経験をいただくためには、収支計算(社福では資金収支計算と呼びます)のノウハウも頂戴したいものです。そこで、就労支援事業を営むNPO法人は、資金の範囲を社福と同じ、つまり「流動資産(たな卸資産を除きます)と流動負債(引当金を除きます)」したらどうでしょうか。

どうでもいいことのように思われるかもしれませんが、これは、この先に威力を発揮すると思いますよ。
2008/04/01のBlog
今回のキーワードは「必要な経費」です。就労支援会計基準では、授産施設会計基準と比較すると、「必要な経費」の内容が変化しているのではないかということを考えてみたいと思います。

1 「就労支援会計基準」の目的=「必要な経費」の把握

就労支援事業では、事業収入から事業に必要な経費を控除した額を工賃として支払う必要があります。基準の「基本的な考え方」でも示されているように、これは、指定基準で定められています。そのため、適正な利用者工賃を算出するために、製品製造過程等における製造原価等の把握が必要となる、としています。

そのために、「就労支援事業別事業活動収支内訳表」「就労支援事業製造原価明細表」「販売費及び一般管理費明細表」を定めています。

2 旧授産基準の目的=「必要な経費」の把握

旧授産施設会計基準の場合、つまり自立支援法制定以前の制度の場合ですが、ここでも「事業収入から事業に必要な経費を控除した額」を工賃として支払うべきとしています。同基準の課長通達(平成13年3月29日社援保発23号)では、「必要な経費に含まれると考えられるものは、日々の授産活動の実施に必要な…必要最小限度の経費」として、「授産事業支出明細表」を定めています。

3 その違いは?

社会福祉法人関係者なら、次のように言うとピンと来るかもしれません。

旧授産施設会計基準では、授産事業支出は「資金収支」レベルで捉えられていましたが、就労支援会計基準では「事業活動収支」レベルで捉えることになった。

事業活動収支というのは、企業会計でいう損益計算のようなものです。ざっくりとまとめると、就労支援事業支出には、たな卸資産の増減や、減価償却費、引当金の繰入などが含まれるようになった、ということです。

また、この違いは、「工賃平均積立金」の考え方の差にもつながるように思います。

4 旧授産基準の場合

授産施設会計基準においても、減価償却費の計上やたな卸資産の増減、引当金の繰入などが採用されてはいました。これは、「資金収支計算」には現れず、「事業活動収支計算」だけに現れるものでした。この基礎になる「授産事業支出明細表」は、資金収支レベルでも損益計算レベルでも共通でした。

損益計算では、「授産事業支出」に減価償却費を加え、たな卸資産の増減を加味して、調整計算を行い、授産事業活動支出という集計項目を作っていました。

つまり、「授産事業支出」<授産事業活動支出、という構造になっていました。

必要な経費は「授産事業支出」ですから、授産事業収入=授産事業支出となるべきです。当然のことながら、損益計算ベースでは、授産事業収入<授産事業活動収支ですから、ほとんどすべての場合で、赤字になります。これは、そういう計算構造ですからやむをえないわけです。

5 就労支援会計基準の場合

就労支援会計の場合には、この「必要な経費」を損益計算ベースで見るということです。旧授産基準の例にあてはめてみると、事業活動収支(損益計算ベース)>授産事業原価支出(資金収支ベース)ですから、必要経費のサイズが大きくなります。

したがって、事業収入が同額の場合には、当然に工賃として支払うべきとされている基準額が小さくなる。授産施設会計の経験に照らせば、小規模な作業所の場合には、支払うべき工賃として算出される金額は赤字になるでしょう。

これが大規模事業所が制度移行する場合ならともかく、小規模作業所のおかれた実態だろうと思います。就労支援会計基準は、就労支援事業を営む法人に強制的に適用され、法人の規模の大小は問われていません。

工賃倍増計画といっても、スタートがマイナスの場合に、どうすればよいのでしょうか?
2008/02/27のBlog
[ 22:50 ] [ ┗ 就労支援会計基準 ]
「就労支援会計基準」を読み解くためには、社会福祉事業の会計処理についての取り扱いを知っておく必要があるでしょう。特に、NPO法人で就労支援会計を行うための導入というような意味で整理してみます。

社会福祉事業については、いろいろな通知類が存在しています。まず、社会福祉法人共通に適用されるものに、「社会福祉法人会計基準」というのがあります。この基準は、WAMネットなどに登録されていますから、ググってみるとすぐに見つかります。

旧授産施設は、この社会福祉法人会計基準をもとに授産事業に特有の処理を加えた、「授産施設会計基準」というのもあります。就労支援会計基準は、この授産施設会計基準の「授産事業の収支」の部分を読み替えることを想定しているようです(*)。

(*) この記述は、全くの間違いでした。就労支援事業を行う社会福祉法人は、授産施設会計基準の「授産」を「就労支援」として会計処理を行うこととし、つまりは、授産会計基準と就労支援会計基準を合体させるわけですが、これを「就労支援施設会計基準」と呼ぶことにするなどと定められています。名前のを微妙に変えたわけですが、区別ができない・・・(2/29)

この社会福祉法人の会計で作成を求められている計算書類は、(1)貸借対照表、(2)資金収支計算書、(3)事業活動収支計算書、(4)財産目録です。貸借対照表はB/Sと呼ばれておなじみかもしれません。ところで、この(2)と(3)は何か?ということが、今回の話題の中心です。

■1 資金収支計算書

行政は、基本的に収支計算を中心とした会計を行っています。この資金収支計算書は、そのものずばり、収支計算を行うものです。計算表の末尾は、翌期に繰り越す支払資金残高を表示して終わります。

企業会計でいう、キャッシュフロー計算書に似ているかもしれません。この計算書の区分は、次のようになっています。

(1) 授産事業活動による収支
(2) 福祉事業活動による収支
(3) 施設整備等による収支
(4) 財務活動による収支

こんな感じですから、キャッシュフロー計算書とかなり似ているといえるでしょう。そこで、この計算書をC/Fとよぶことにします。

■2 事業活動収支計算書

社会福祉法人会計基準では、減価償却が取り入れられることになりました。減価償却は、資金の支出がありません。固定資産(建物など)を取得する場合、資金収支計算では、その取得価額の全額を支出項目に計上します。

これに対して、減価償却は、固定資産などの費用性資産を期間配分するという考え方が根底にあります。資金を支出したときではなく、その利用期間に応じて費用配分をするわけです。これは、収支計算からの決別でもあります。

この計算書は、企業会計でいう損益計算書に似ています。企業会計では、営業損益、経常損益、特別損益という具合に、段階利益が区分されるのに対して、次のような区分でできています。

(1) 授産事業活動収支の部
(2) 福祉事業活動収支の部
(3) 事業活動外収支の部
(4) 特別収支の部
(5) 繰越活動収支差額の部

損益計算書の区分にかなり近く設計されていることがわかります。そこで、この計算書をP/Lとよぶことにします。

■3 二つの計算書の違いとは・・・

社会福祉法人も複式簿記で経理することが求められています。その結果、事業活動収支計算書と貸借対照表は、自然に誘導されます。

社会福祉法人にとって厄介なのは、これ以外に、資金収支計算をしなければならないことです。普通の取引については、特に問題はないのですが、資産を取得したり、資金を借り入れたりする場合に、資金収支計算との相違が生まれます。

このために、資金収支計算用の仕訳を別に作らなければなりません。建物を取得した場合の仕訳を例示してみます。(以下の説明は、簿記の解説ではありません。社会福祉事業の会計処理の複雑さを示すためのものです。)

(説例)建物を1,000万円で取得し、預金から支払った。

【事業活動収支計算書の場合】
(借方)建物 1,000万円 (貸方)預金 1,000万円

【資金収支計算書の場合】
(借方)建物取得費支出 1,000万円 (貸方)支払資金 1,000万円

(説例)この建物の減価償却費100万円を計上した。

【事業活動収支計算書の場合】
(借方)建物減価償却費 100万円 (貸方)減価償却累計額 100万円

【資金収支計算書の場合】
処理なし

こんな感じです。これは、公益法人でも同様の複雑さを抱えていることと思います。

■4 「就労支援会計基準」は、事業活動収支計算をベースにしている

さて、ここで、「就労支援会計基準」に話を移します。ここで示されている処理は、資金収支をベースにせず、事業活動収支つまりP/Lの計算を前提にしています。

今まで、授産基準で会計処理をしてきた経験のある社会福祉法人では、ある程度、経験値が高まっていますから、このようにまとめれば、ピンと来るものがあると思います。しかし、NPO法人を設立して、自立支援法の新制度に移行しようとする作業所は、おそらく無認可作業所で進めてきたことでしょう。そうすると、おそらく単式簿記の収支計算を中心に会計処理をしてきたに違いありません。

事業活動収支計算て何よ?というような疑問が生ずることと思われます。

■5 NPO法人の会計処理は収支計算が中心

特定非営利活動法人法(=NPO法人法)の27条に、「会計処理」という条文があります。ここでは、NPO法人が作成しなければならない、計算書類が示されています。

まず、正規の簿記の原則で会計処理をするとして、複式簿記による会計処理を求めています。計算書類として、(1)貸借対照表、(2)収支計算書、(3)財産目録を作るべきとされています。

NPO法人の場合、この条文に従わなければなりません。NPO法人の会計基準というものは、まだ策定されていませんが、一般には公益法人の会計処理に準じた処理が行われています。

そこでは、事業収入と、事業支出に区分し、事業支出を事業費と管理費に区分することとされています。

先日、内閣府のNPO法人の担当課に問い合わせてみました。そこでの回答は、この区分以外に、「就労支援事業」という区分を作ることは認められないということでした。したがって、NPO法人の場合には、収支計算書は次のようになると思われます。

Ⅰ 事業収入
1.○○事業収入
2.自立支援費収入
 1. 訓練等給付費収入
 2. ○○収入
3.就労支援事業収入

Ⅱ 事業支出
1.事業費
 1. 人件費
 2. ○○費
 3. 就労支援事業支出
2.管理費
 1. ○○費

内閣府の担当者は、就労支援事業支出は、一本で記載して差し支えなく、その明細が就労支援会計基準で作成されているという事で、問題ないとのことでした。

ちょっと中途半端ではありますが、今日のところはここで終わりにしておこうと思います。
2008/01/31のBlog
[ 11:07 ] [ ┗ 就労支援会計基準 ]
就労支援会計基準の対象となる事業は、「就労支援等」の事業です。これは何だ?というところからはじめることにします。

この基準本文は、下記のURLで参照できます。厚生労働省のサイトです。PDFも登録されていますので、両方のURLをはっておきましょう。

html版 http://www.mhlw.go.jp/topics/2006/10/tp1002-1.html
PDF版本文 http://wwwhourei.mhlw.go.jp/hourei/doc/tsuchi/181006-a00.pdf
PDF版別紙1-3 http://wwwhourei.mhlw.go.jp/hourei/doc/tsuchi/181006-a01.pdf
PDF版別紙4-9 http://wwwhourei.mhlw.go.jp/hourei/doc/tsuchi/181006-a02.pdf

さて、この「1 趣旨」に就労支援の事業について定義されています。この総則本文を見ると、「指定障害福祉サービス事業」と「指定障害者支援施設」という区分があります。これはあまり気にしなくても良いように思います。簡単に言えば、前者が「通所」で、後者が「入所」と理解すればよいと思います。

「就労支援」の事業とは?

「就労支援」の事業とは、(1)就労移行支援、(2)就労継続支援A型、(3)就労継続支援B型のサービスを提供する事業者です。

「就労移行支援」

「就労移行支援」というのは、簡単に言えば、就労を希望する者に対して、一定の期間にわたって就労訓練をする事業です。

「就労継続支援」

「就労継続支援」は、一般就労が困難な者に対して、就労の機会を提供するものとされています。「就労継続支援」には「A型」と「B型」の2種類があります。

「就労継続支援」A型とB型

このうち「A型」は、一般就労は困難でも、サービス事業者と「雇用契約」にもとづいて就労することが可能である者に対して継続的な就労の機会を提供するサービスです。「B型」は、一般就労が困難で、かつサービス授業者と「雇用契約」にもとづく就労が困難な者に対して継続的な就労の機会を提供するサービスとされています。(法5条14項、15項、規則6条の10などを参照。)

利用者に支払われる「賃金」と「工賃」の違い

会計基準上ではA型利用者に支払われるのが「賃金」で、B型利用者に支払われるのが「工賃」という具合に使い分けられています。(『「就労支援の事業の会計処理の基準」の留意事項の説明』(*)厚生労働省H18.11.13の「Q12」より)

「一般に公正妥当と認められる会計処理の基準」

「1 趣旨」の最後のところに就労支援会計基準に定めのない事項については、「一般に公正妥当と認められる会計処理の基準」に従うとあります。会計になじんだ方には、この言葉を見ると「企業会計原則」などを思い浮かべるかもしれません。これについて、『「就労支援の会計処理の基準」に関するQ&A』(*)のQ3に回答があります。

これによると、社会福祉法人の場合には「社会福祉法人会計基準」、NPO法人の場合には「特定非営利活動法人会計基準」などが「一般に公正妥当と認められる会計処理の基準」にあたるとされています。

(*) 「留意事項の説明」と「Q&A」ですが、厚生労働省のサイトで探しましたが見つけることができませんでした。地方自治体のサイトに掲載されているものがありますので、文書名でググってみてください。
2008/01/25のBlog
2008/1/18に、厚生労働省は下記の報告を公表しました。

身体障害者、知的障害者及び精神障害者就業実態調査の調査結果について

これを見ると、「身体障害者」の場合に、就業している者の割合は43.0%で、そのうち常用雇用の者の平均は、48.4%で、常用以外のうち、授産施設等(作業所等を含む)の割合は、6.5%程度です。

「知的障害者」の場合は、就業している者の割合は52.6%で、そのうち常用雇用は18.8%で、常用以外のうち授産施設等は59.1%です。「精神障害者」の場合は、就業している者の割合は17.3%で、そのうち常用雇用が32.5%で、常用以外のうち授産施設等は37.7%です。こんな状況とのことです。

やはり、小規模作業所を話題にするときは、知的と精神の作業所が中心になるということですね。なんとなく納得【謎】
2008/01/23のBlog
[ 02:50 ] [ ┗ 就労支援会計基準 ]
会計とか、実務の話題ばかりしていると、「引いてしまう」のではないかと思いつつ(笑) 今回の想定読者は約3名ですから、めげずに(笑)進めようと思います。

「就労支援等の事業に関する会計処理の基準」を解読しようとした動機みたいなものを表明しておこうと思います。

先に小規模作業所の沿革について整理しました。長いものになってしまいましたが。要するに、家族などを中心にして、制度そのものがない状況で自分たちの福祉ニーズを具現化するために「造った」のが小規模作業所です。そう言い切ってよいと思います。

その結果、事務とかそういうものは後回しになってきたのも実情です。また、統一した基準というものも存在しませんでした。

小規模作業所が各地にできて、その数が増えていくにしたがって、県などの単位で「団体」のようなものができてきました。

この各連合団体が、事務処理などの指導や統一化などを進めてきました。全国的にそうだとは断言できませんが、相互扶助的にサービス内容をはじめ、経営や事務処理の合理化が支援されてきたという経緯があります。

ぶっちゃけた話、小規模作業所では事務処理が得意とは限りません。そういう現状があることは確かかと思われます。もちろん、ばっちりできます、というところもあるでしょう。

昨年、「就労支援会計基準」に関するセミナーなどが開催されていました。その中には、有料で開催されることも少なくないような気がします。また、こうしたセミナーは、都市部に集中しているような傾向も見られました。

少ない予算をやりくりして、出張して有料講習を受講するという余裕を持たないところも少なくないでしょう。これが、小規模作業所の置かれている現状かと思います。

一方で、作業所の製品などを積極的に販売してゆくということも重要なことです。そのためには、市場開拓や商品研究なども重要な仕事になるでしょう。就労支援会計基準では、製造原価に加えて販売費及び一般管理費の明細を作成することになっています。このことは、実は、作業所の役割や工賃アップという命題にとって重要な事項です。これらが計数的に把握、管理できることは意味のあることだと考えています。

「就労支援会計基準」の解読を試みるのは、単純に条文の理解を進めるということではありません。ここで探るのは、小規模作業所の職員(とくに事務を担当される方や施設長)さんが「ピン」とくる理解と、どのような日常処理を進めればよいのかを解読したいということです。

わかっちゃいるけど、なかなかできないんだよね、という声に応えることを目指しています。
2008/01/21のBlog
必要に迫られて、という感じがしますが、しばらく、事務処理などについて、検討などを進めることにしようと考えています。もっとも、実務の研究がこのblogをはじめたきっかけですから、やっと元に戻ったかと・・・(汗)

今、小規模作業所の間でいろいろ話題になっている「就労支援会計基準」を取り上げます。これは、連載になってゆくと思います。いくつかのトピックにまとめてはいますが、冗長なものになるだろうと思います。まず、手はじめに、全体の俯瞰などからはじめます。

1.就労支援等事業会計処理基準

「障害者自立支援法」の施行にともない、「就労支援等事業に関する会計処理の基準」(平成18年10月2日社援発第1002001号)が制定、適用されることになりました。この会計処理基準は、「就労支援等事業会計処理基準」と略称され、適用日は平成18年10月1日となっています。この略称はいかにも長いので、更に「就労支援会計基準」と縮めて呼ぶことにします。

この会計基準は、「就労移行支援、就労継続支援A型及びB型」の事業を営む福祉事業者に適用されることになっています。これから、この会計基準について、いろいろとまとめてみたいと考えています。

その前に、授産事業がなくなった背景について、ざっくりと整理しておきます。

2.社会福祉事業の体系から「授産事業」がなくなった

「障害者自立支援法」では、「授産事業」という概念がなくなりました。これに代わるものとして、「就労移行支援」「就労継続支援」という各福祉サービスが定義されました。この間の経緯には、いろいろな展開があります。簡単にまとめることは難しいかもしれませんが、整理してみます。

2-1 授産事業

「障害者自立支援法」が制定される以前の社会福祉事業の体系には、「授産事業」というくくりが存在していました。「授産事業」を行う施設は、障がいなどの理由により、一般の事業所に就労することが難しい人たちの働く場として、設置、運営されていました。こうした就労形態は、「福祉就労」あるいは「福祉的就労」と呼ばれています。

一般就労(雇用)が難しいということは、つまり、ハードルがあるということでもあります。ジョブ・コーチだけでなく、会社や社会的なサポートが不可欠であることでもあります。一般就労は、