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2005/03/12のBlog
[ 21:52 ]
[ 為替 ]
アメリカが名実ともに世界の王者として君臨する宣言をしたのは、僕の考えではスエズ動乱だと思います。
1950年代にエジプトでクーデターによってナセルが国家元首になりました。ナセルは民族主義的な発想をする指導者で、それまでイギリスとフランスによって所有されてきたスエズ運河の接収を発表します。イギリス、フランス両国はこの「暴挙」に対して表立って兵隊を派遣すると侵略戦争だと非難されるのでイスラエルと手を結び、イスラエルがシナイ半島に侵攻しスエズ運河まで到達したら、そこでイギリスとフランスが介入し、「平和維持」の名目でスエズ運河に軍隊を駐留、「シナイ半島はおまえにやる」という密約を結びます。
これに力を得たイスラエルは密約通りにシナイ半島に攻め込み、エジプト軍をスエズ運河まで押し返します。そこでタイミング良くイギリスとフランスは平和維持のための軍事介入を宣言、予定通り落下傘部隊をスエズに降下させ、1956年11月5日にはスエズ運河に王手をかけます。
ところがここで思わぬ横槍が入ります。アメリカがイギリスのこの介入を激しく非難、一転してイギリス、フランスは翌6日、停戦に合意するのです。それまでイギリス議会、国連などがイギリスとフランスのこの謀略に激しい非難をしていたのをものともせず、アグレッシブに自分の利権を狙っていた両国が、突然、停戦に合意した背後に何があったのでしょうか?。アメリカの歴史家によるとこの11月5日にアメリカは「若しスエズから手を引かなければアメリカが保有するポンド備蓄を放出(*)し、ポンドを暴落させる」とイギリスを脅したのだそうです。
イギリスはこの頃までにはすっかり輸出競争力を失い、対米貿易では慢性的な入超だったそうです。第二次大戦後の復興資金も専らアメリカに頼る状況でした。その意味ではちょうど今の中国と米国の関係と同様の構図になっていたわけです。実際にはアメリカが経済的にも軍事的にも世界のナンバー・ワンになったのは1920年代ですが、その後の25年くらいは米国はイギリスの構築した世界金融システムをそのまま使い続ける地位に甘んじてきました。しかし、スエズ動乱がアメリカをして「我々が名実共に世界の覇者として指導してゆかないと駄目だな」と思わせた画期的な出来事だったのではないでしょうか?。
加筆します。
(*)の部分ですけど、正確には英国が戦争をおっぱじめたことでポンドの先行きに対して市場の懸念が広がり、ポンド売りが殺到、イギリス政府は$2.78の交換レート維持のために買い支えに出るのですが、あっと言う間にリザーブが払底してしまいます。そこで英国政府はIMFに預けてある預託金をドローダウンしようとするのですが、これに対してIMFの最大の出資者である米国が拒否権を発動しました。これがトドメとなってイギリスは停戦を決断したそうです。
1950年代にエジプトでクーデターによってナセルが国家元首になりました。ナセルは民族主義的な発想をする指導者で、それまでイギリスとフランスによって所有されてきたスエズ運河の接収を発表します。イギリス、フランス両国はこの「暴挙」に対して表立って兵隊を派遣すると侵略戦争だと非難されるのでイスラエルと手を結び、イスラエルがシナイ半島に侵攻しスエズ運河まで到達したら、そこでイギリスとフランスが介入し、「平和維持」の名目でスエズ運河に軍隊を駐留、「シナイ半島はおまえにやる」という密約を結びます。
これに力を得たイスラエルは密約通りにシナイ半島に攻め込み、エジプト軍をスエズ運河まで押し返します。そこでタイミング良くイギリスとフランスは平和維持のための軍事介入を宣言、予定通り落下傘部隊をスエズに降下させ、1956年11月5日にはスエズ運河に王手をかけます。
ところがここで思わぬ横槍が入ります。アメリカがイギリスのこの介入を激しく非難、一転してイギリス、フランスは翌6日、停戦に合意するのです。それまでイギリス議会、国連などがイギリスとフランスのこの謀略に激しい非難をしていたのをものともせず、アグレッシブに自分の利権を狙っていた両国が、突然、停戦に合意した背後に何があったのでしょうか?。アメリカの歴史家によるとこの11月5日にアメリカは「若しスエズから手を引かなければアメリカが保有するポンド備蓄を放出(*)し、ポンドを暴落させる」とイギリスを脅したのだそうです。
イギリスはこの頃までにはすっかり輸出競争力を失い、対米貿易では慢性的な入超だったそうです。第二次大戦後の復興資金も専らアメリカに頼る状況でした。その意味ではちょうど今の中国と米国の関係と同様の構図になっていたわけです。実際にはアメリカが経済的にも軍事的にも世界のナンバー・ワンになったのは1920年代ですが、その後の25年くらいは米国はイギリスの構築した世界金融システムをそのまま使い続ける地位に甘んじてきました。しかし、スエズ動乱がアメリカをして「我々が名実共に世界の覇者として指導してゆかないと駄目だな」と思わせた画期的な出来事だったのではないでしょうか?。
加筆します。
(*)の部分ですけど、正確には英国が戦争をおっぱじめたことでポンドの先行きに対して市場の懸念が広がり、ポンド売りが殺到、イギリス政府は$2.78の交換レート維持のために買い支えに出るのですが、あっと言う間にリザーブが払底してしまいます。そこで英国政府はIMFに預けてある預託金をドローダウンしようとするのですが、これに対してIMFの最大の出資者である米国が拒否権を発動しました。これがトドメとなってイギリスは停戦を決断したそうです。
[ 19:52 ]
[ 為替 ]
[関連したBlog]
今、アジアの各国に積み上がっている巨額の外貨準備、それをどう運用してゆくかが注目されています。昔は輸出で稼いだ金はドルで貯めこんでおけばそれでよかったわけです。でも今はドル安傾向ですから貯金をする側、つまりアジア諸国にとって貯金の目減りを減らすことを少し考えながら貯金をしていかなければいけません。
ドルで持っていたら一番やられる、というのであればユーロとか他の通貨にも分散しようと思いたくなるのは人情ですね。それともともと国際的な商取引は米国だけがお客さんではありませんから欧州やその他の地域とも通商は普段からあるわけで、仕向け地別の比率で言えばそもそもドル建てで貯金すること自体が貿易の実態とミスマッチした部分もあるでしょう。
そんなわけで最近は「通貨バスケット(つまり米ドルだけじゃなくユーロとかその他の通貨も盛り込んだ指標)を使って外貨を運用してゆこう」という発想が注目を集めています。Wah-Man3さんが書いている最近の「小泉失言」をはじめ、韓国や台湾でも同様の発言が先週ありました。また、中国も通貨分散を真剣に検討していることは周知の事実です。「偶然」と言うには各国の足並みが揃いすぎていますね。勿論、そこに何らかの裏取引があるなんてことを僕が言いたいのではなくて、自然に考えればそういう予防線を張ることが「必然」だからそうなった、という事です。
さて、このところアメリカ国内では「中国や日本が貿易で稼いだ金で米国財務省証券(USトレジャリー)を買って呉れなくなったらどうしよう?」という不安がようやく普通の国民の頭にもよぎり始めています。僕は債券の専門じゃないのでトレジャリーのことはよく判りませんが、なんでも入札の半分とかが海外の投資家に買われるのも珍しくないそうです。この買い手が居なくなると金利が上昇し、アメリカの資金調達コストが増える、住宅ローンが高くなり不動産価格が下がる、ドルがどんどん下落した場合は輸入品の価格が高くなりインフレになる、など様々な「アルマゲドン(地獄絵)・シナリオ」が言われるようになりました。その中でもアメリカ人が特に神経質なのは「巨額の外貨準備を武器に米国の政策にアジア諸国が介入してくるシナリオ」です。実はアメリカ人はそんなシナリオに関してはわれわれ日本人などより精通しています。なぜなら自分でもそうやって覇権を奪取した経験があるからです。
今、アジアの各国に積み上がっている巨額の外貨準備、それをどう運用してゆくかが注目されています。昔は輸出で稼いだ金はドルで貯めこんでおけばそれでよかったわけです。でも今はドル安傾向ですから貯金をする側、つまりアジア諸国にとって貯金の目減りを減らすことを少し考えながら貯金をしていかなければいけません。
ドルで持っていたら一番やられる、というのであればユーロとか他の通貨にも分散しようと思いたくなるのは人情ですね。それともともと国際的な商取引は米国だけがお客さんではありませんから欧州やその他の地域とも通商は普段からあるわけで、仕向け地別の比率で言えばそもそもドル建てで貯金すること自体が貿易の実態とミスマッチした部分もあるでしょう。
そんなわけで最近は「通貨バスケット(つまり米ドルだけじゃなくユーロとかその他の通貨も盛り込んだ指標)を使って外貨を運用してゆこう」という発想が注目を集めています。Wah-Man3さんが書いている最近の「小泉失言」をはじめ、韓国や台湾でも同様の発言が先週ありました。また、中国も通貨分散を真剣に検討していることは周知の事実です。「偶然」と言うには各国の足並みが揃いすぎていますね。勿論、そこに何らかの裏取引があるなんてことを僕が言いたいのではなくて、自然に考えればそういう予防線を張ることが「必然」だからそうなった、という事です。
さて、このところアメリカ国内では「中国や日本が貿易で稼いだ金で米国財務省証券(USトレジャリー)を買って呉れなくなったらどうしよう?」という不安がようやく普通の国民の頭にもよぎり始めています。僕は債券の専門じゃないのでトレジャリーのことはよく判りませんが、なんでも入札の半分とかが海外の投資家に買われるのも珍しくないそうです。この買い手が居なくなると金利が上昇し、アメリカの資金調達コストが増える、住宅ローンが高くなり不動産価格が下がる、ドルがどんどん下落した場合は輸入品の価格が高くなりインフレになる、など様々な「アルマゲドン(地獄絵)・シナリオ」が言われるようになりました。その中でもアメリカ人が特に神経質なのは「巨額の外貨準備を武器に米国の政策にアジア諸国が介入してくるシナリオ」です。実はアメリカ人はそんなシナリオに関してはわれわれ日本人などより精通しています。なぜなら自分でもそうやって覇権を奪取した経験があるからです。
[ 04:51 ]
[ ヘッジファンド ]
『マーケット・ウォッチ』を読んでいたら「ヘッジファンドが投資銀行にとって良いお客さんになっている」という記事が出ていました。CSFB証券が最近、ヘッジファンドがどのくらいウォール・ストリートにフィーを落としているかに関する調査レポートを書いたのですが、そのレポートがこの記事のベースになっています。
これによると去年、ヘッジファンド業界は合計でUS$25Billionの手数料や各種フィーを証券会社に払っています。このうちUS$6.7Billionは所謂、プライム・ブローカレージのフィーで、残りが株式などの売買手数料です。ヘッジファンドの売買手数料が全体(つまり年金、投信、個人などの合計)の約半分にものぼるんだそうです。
さて、ヘッジファンドを始めようとすると、最初にプライム・ブローカーを決めないといけません。プライム・ブローカーとはそのファンドの資産、つまり顧客から預かったキャッシュや、買い建て、売り建てした株式や債券などを預かり、管理するサービスのことを指します。プライム・ブローカーで最もプレステージャスだと言われるのはモルガン・スタンレーとゴールドマン・サックスです。僕の表面的な印象では債券とかコモディティーを主体とするヘッジファンドはゴールドマンを重宝がり、株式、特にマルチ・カレンシーで運用するエクイティー・ファンドはモルガン・スタンレーがお気に入りのようです。これらの投資銀行のプライム・ブローカレージ・サービスは大変、敷居が高く、名も無い駆け出しのヘッジファンド・マネージャーは相手にされません。(僕も当然、駄目。)
次に定評があるのがベア・スターンズですね。また、債券でレバレッジを効かせたストラテジーを採用するヘッジファンドはシティコープも使うみたいです。小型のスタートアップのヘッジファンドに人気があるのはバンク・オブ・アメリカ(昔のモンゴメリー証券)とUBS(昔のファーマン・セルツがABNアムロに買われ、それが更にUBSに転売されました)ですね。
投資銀行は先ずヘッジファンドに対して「自分のところで資産を預からせてください」と、プライム・ブローカレージのセールスをします。この理由はひとたび自分のところで資産を預かったなら、売買手数料のかなりの部分を自社で落として貰える可能性が高いからです。こういう自分のとろこで預かったファンドが自分のところにコミッションを落とすビジネスを「インハウス」と呼んだりします。証券会社によっては「暗黙の了解」で売買手数料の25%から50%をインハウスで落とすことを約束させるところもあります。
それ以外の注文は他の証券会社に発注するわけですけど、これは「アウトサイド」ないしは「ストリート」注文などと呼ばれています。例えばゴールドマンにプライム口座を設けているヘッジファンドがJPモルガンに株を発注した場合、一日が終わった時点でJPモルガンで買った株の取引内容をゴールドマンのプライム口座担当者に報告するわけです。つまりプライム・ブローカーはお客のヘッジファンドが他のどの証券会社とどれだけビジネスしているか全部わかるわけですね。勿論、そのヘッジファンドの持ち株の情報だとかの「手の内」もわかります。これは結構、貴重な内部情報ですね。
ヘッジファンドの側からすると、どういう基準でプライム・ブローカーを選ぶか?という点ですけど、例えばリポーティング類がしっかりしているところ(典型的な例ではモルガン・スタンレー)、或いはアナリティクスといって分析ツールがいろいろ豊富なところ(これもモルガンが良い)、さらに借株能力が高いところ(UBSが定評がある)、さらにレバレッジを大きく効かせるタイプのファンドではクレジット・ファシリティーの大きいところ(シティなど)、受け渡しなどの基本的なサービスがきちんとできるところ(案外駄目なのがUBS)なんて基準で選びます。
ま、以上は普通の投資家の人には全然関係ない話ですけど、若し自分でヘッジファンドやってみようなんて考えている人はある程度参考になるかもしれません。
これによると去年、ヘッジファンド業界は合計でUS$25Billionの手数料や各種フィーを証券会社に払っています。このうちUS$6.7Billionは所謂、プライム・ブローカレージのフィーで、残りが株式などの売買手数料です。ヘッジファンドの売買手数料が全体(つまり年金、投信、個人などの合計)の約半分にものぼるんだそうです。
さて、ヘッジファンドを始めようとすると、最初にプライム・ブローカーを決めないといけません。プライム・ブローカーとはそのファンドの資産、つまり顧客から預かったキャッシュや、買い建て、売り建てした株式や債券などを預かり、管理するサービスのことを指します。プライム・ブローカーで最もプレステージャスだと言われるのはモルガン・スタンレーとゴールドマン・サックスです。僕の表面的な印象では債券とかコモディティーを主体とするヘッジファンドはゴールドマンを重宝がり、株式、特にマルチ・カレンシーで運用するエクイティー・ファンドはモルガン・スタンレーがお気に入りのようです。これらの投資銀行のプライム・ブローカレージ・サービスは大変、敷居が高く、名も無い駆け出しのヘッジファンド・マネージャーは相手にされません。(僕も当然、駄目。)
次に定評があるのがベア・スターンズですね。また、債券でレバレッジを効かせたストラテジーを採用するヘッジファンドはシティコープも使うみたいです。小型のスタートアップのヘッジファンドに人気があるのはバンク・オブ・アメリカ(昔のモンゴメリー証券)とUBS(昔のファーマン・セルツがABNアムロに買われ、それが更にUBSに転売されました)ですね。
投資銀行は先ずヘッジファンドに対して「自分のところで資産を預からせてください」と、プライム・ブローカレージのセールスをします。この理由はひとたび自分のところで資産を預かったなら、売買手数料のかなりの部分を自社で落として貰える可能性が高いからです。こういう自分のとろこで預かったファンドが自分のところにコミッションを落とすビジネスを「インハウス」と呼んだりします。証券会社によっては「暗黙の了解」で売買手数料の25%から50%をインハウスで落とすことを約束させるところもあります。
それ以外の注文は他の証券会社に発注するわけですけど、これは「アウトサイド」ないしは「ストリート」注文などと呼ばれています。例えばゴールドマンにプライム口座を設けているヘッジファンドがJPモルガンに株を発注した場合、一日が終わった時点でJPモルガンで買った株の取引内容をゴールドマンのプライム口座担当者に報告するわけです。つまりプライム・ブローカーはお客のヘッジファンドが他のどの証券会社とどれだけビジネスしているか全部わかるわけですね。勿論、そのヘッジファンドの持ち株の情報だとかの「手の内」もわかります。これは結構、貴重な内部情報ですね。
ヘッジファンドの側からすると、どういう基準でプライム・ブローカーを選ぶか?という点ですけど、例えばリポーティング類がしっかりしているところ(典型的な例ではモルガン・スタンレー)、或いはアナリティクスといって分析ツールがいろいろ豊富なところ(これもモルガンが良い)、さらに借株能力が高いところ(UBSが定評がある)、さらにレバレッジを大きく効かせるタイプのファンドではクレジット・ファシリティーの大きいところ(シティなど)、受け渡しなどの基本的なサービスがきちんとできるところ(案外駄目なのがUBS)なんて基準で選びます。
ま、以上は普通の投資家の人には全然関係ない話ですけど、若し自分でヘッジファンドやってみようなんて考えている人はある程度参考になるかもしれません。
2005/03/11のBlog
[ 23:31 ]
[ オンライン・ゲーム ]
[関連したBlog]
「マーケットはエフィシェントだ」とよく言われます。これは好材料はすぐに織り込まれることを表しています。でも時々、市場は材料の織り込みが遅い場合があるんですね。ウォール街の投資家が一番最後まで材料を知らないケース、これを「ストリート・ラグ」といいます。
グラビティー(GRVY)がその典型例ではないでしょうか?。3月9日にヘラクレスでガンホー(コード番号3765)というオンライン・ゲームのパブリッシャーの株がIPOされ、初日で3.5倍、今日までに4.3倍になりました。ガンホーは主に『ラグナロク・オンライン』を提供することで売り上げを上げています。その『ラグナロク・オンライン』をそもそも製作したのが韓国のグラビティーなんですね。こちらの方は韓国の会社ですけどアメリカのナスダックでIPOされました。しかも売り上げの殆どが日本で立っていますから、アメリカ人に『ラグナロク・オンライン』という話をしてもみんな「?」って感じで、全然、なにもわかっていません。
今、過去の実績の売り上げ規模を比較するとガンホーの方が大雑把に言って5割増しくらいで大きいです。グラビティーの方が売り上げの分散は遅れるでしょうから同じ売上高に対して支払われるべき妥当マルティプルは低いはずです。そういう諸々の点を考慮した上で、現在のグラビティーの株価は安すぎ(PERで約15倍)ます。クワイエット・ピリオド明けで各証券が推奨を始めると動意付くのではないでしょうか?。
「マーケットはエフィシェントだ」とよく言われます。これは好材料はすぐに織り込まれることを表しています。でも時々、市場は材料の織り込みが遅い場合があるんですね。ウォール街の投資家が一番最後まで材料を知らないケース、これを「ストリート・ラグ」といいます。
グラビティー(GRVY)がその典型例ではないでしょうか?。3月9日にヘラクレスでガンホー(コード番号3765)というオンライン・ゲームのパブリッシャーの株がIPOされ、初日で3.5倍、今日までに4.3倍になりました。ガンホーは主に『ラグナロク・オンライン』を提供することで売り上げを上げています。その『ラグナロク・オンライン』をそもそも製作したのが韓国のグラビティーなんですね。こちらの方は韓国の会社ですけどアメリカのナスダックでIPOされました。しかも売り上げの殆どが日本で立っていますから、アメリカ人に『ラグナロク・オンライン』という話をしてもみんな「?」って感じで、全然、なにもわかっていません。
今、過去の実績の売り上げ規模を比較するとガンホーの方が大雑把に言って5割増しくらいで大きいです。グラビティーの方が売り上げの分散は遅れるでしょうから同じ売上高に対して支払われるべき妥当マルティプルは低いはずです。そういう諸々の点を考慮した上で、現在のグラビティーの株価は安すぎ(PERで約15倍)ます。クワイエット・ピリオド明けで各証券が推奨を始めると動意付くのではないでしょうか?。
[ 09:31 ]
[ ハイテク株 ]
昨日、エクソン(XOM)に大口クロスが入った話を書きました。そのエクソン、今日も安いです。ザラ場60ドル割れの局面があったのですが、その過程でビットとオファーの値段が逆転する場面が何度もありました。この現象は「引かれ腰の弱い買い手」が多く関与していることを意味します。
世界で一番時価総額の大きい株でダウン・ティックのクロスが振られ、沢山の投資家が「ディスカウントでエクソンの株を仕込めますよ」という短期の値幅取りの誘いに乗って$63で手を出し、あっという間に$3のヤラレになったわけです。今は皆、買値に株価が戻るのをひたすら祈るという状況でしょう。
石油株の基調は強いですし、未だ、これらの銘柄がトレンドラインを割込んだわけではないですから無事トントンで逃げられるシナリオだって当然あると思います。でも中国では原油の輸入が鈍化しているというニュースが出るし、僕の住む米国西海岸では摂氏25度の陽気です。石油株は「希望の坂を転げ落ちる」展開になりつつある感は否めません。
さて、このところアメリカ株の中で石油株だけが「確実に儲かる」セクターでしたから、石油株相場が「終わり」になっちゃうと次、どこへゆくのか?という問題が生じます。相場の定石からするとこういうときは一度、全部が下に振られる危険性が高いと思います。そしてバッサリヤラレた後でリーダーシップの交代ということになると思います。
リーダーシップの交代となるとやはり新鮮味がないことには面白くありません。その意味では休養十分なセクターであることが条件になります。すると薬とかハイテクとかになるわけですけど、薬の場合はつい最近もバイオジェン・アイデック(BIIB)の急落などで投資家の傷口が開いたまんまですから、このセクターがリーダーシップを取るにはまだまだ日柄が足らない気がします。
一方、ハイテクの方は業績面でのニュースも次々良いニュースが出ているし、比較的取り組みやすい気がします。例えば最近ではザイリンクス(XLNX)、アルテラ(ALTR)などのプログラマブル・ロジックの銘柄がガイダンスを引き上げています。プログラマブル・ロジックはハイテクのあらゆる分野に関係します。そして主に新製品などのデザイン・アクティビティーに敏感ですから、これらの銘柄が動き出しているということはハイテク全般にとって希望の持てる状況と言えるでしょう。さらにナショナル・セミコンダクター(NSM)も今日は好決算で買われていますし、引け後はインテル(INTC)がガイダンス・レンジを引き上げています。
ハイテクに関しては投資家のエクスペクテーションが大変低いように思いますし、スペキュレーションの度合いも低い気がします。
世界で一番時価総額の大きい株でダウン・ティックのクロスが振られ、沢山の投資家が「ディスカウントでエクソンの株を仕込めますよ」という短期の値幅取りの誘いに乗って$63で手を出し、あっという間に$3のヤラレになったわけです。今は皆、買値に株価が戻るのをひたすら祈るという状況でしょう。
石油株の基調は強いですし、未だ、これらの銘柄がトレンドラインを割込んだわけではないですから無事トントンで逃げられるシナリオだって当然あると思います。でも中国では原油の輸入が鈍化しているというニュースが出るし、僕の住む米国西海岸では摂氏25度の陽気です。石油株は「希望の坂を転げ落ちる」展開になりつつある感は否めません。
さて、このところアメリカ株の中で石油株だけが「確実に儲かる」セクターでしたから、石油株相場が「終わり」になっちゃうと次、どこへゆくのか?という問題が生じます。相場の定石からするとこういうときは一度、全部が下に振られる危険性が高いと思います。そしてバッサリヤラレた後でリーダーシップの交代ということになると思います。
リーダーシップの交代となるとやはり新鮮味がないことには面白くありません。その意味では休養十分なセクターであることが条件になります。すると薬とかハイテクとかになるわけですけど、薬の場合はつい最近もバイオジェン・アイデック(BIIB)の急落などで投資家の傷口が開いたまんまですから、このセクターがリーダーシップを取るにはまだまだ日柄が足らない気がします。
一方、ハイテクの方は業績面でのニュースも次々良いニュースが出ているし、比較的取り組みやすい気がします。例えば最近ではザイリンクス(XLNX)、アルテラ(ALTR)などのプログラマブル・ロジックの銘柄がガイダンスを引き上げています。プログラマブル・ロジックはハイテクのあらゆる分野に関係します。そして主に新製品などのデザイン・アクティビティーに敏感ですから、これらの銘柄が動き出しているということはハイテク全般にとって希望の持てる状況と言えるでしょう。さらにナショナル・セミコンダクター(NSM)も今日は好決算で買われていますし、引け後はインテル(INTC)がガイダンス・レンジを引き上げています。
ハイテクに関しては投資家のエクスペクテーションが大変低いように思いますし、スペキュレーションの度合いも低い気がします。
[ 02:00 ]
[ 資源 ]
中国の一連のマクロ統計が発表になっています。ひとことでまとめればスローダウンを示唆する数字なのですが、これをどれだけ信用してよいかは相変わらず疑問の残るところです。
先ず、貿易統計。2月の輸入は去年の同期比で-5%のUS$39.92Billionでした。一方、輸出は+31%のUS$44.53Billionです。輸出が急激に伸びた理由は1月に繊維製品輸出の数量制限が解除されたことで中国からのテキスタイルの輸出が急増したことが原因です。一方の輸入の鈍化ですが、今年は春節が2月に来た事に注意を払うべきだと思います。なぜなら、通常、春節の直前と連休中は輸入が減り、春節明けに輸入が急増するというパターンがあるからです。去年は1月が春節でしたので2月の輸入の数字は大きかったです。これでゆくと3月にかけて輸入が急増する可能性が強いですから、3ヶ月の移動平均で物事を考える必要がありそうですね。
貿易統計で今日米国市場の話題になったもののひとつに原油の輸入があります。これによると1月、2月の二ヶ月間で中国の原油輸入は-12.7%の18.2Million metric tons、バレル換算では2.26Million bbl/dayでした。原油の輸入統計も先述の春節を巡るブレを含んでいる可能性がありますから3月以降の数字が待たれるところです。それを断った上で僕の個人的な意見を言わしてもらうと過去15年くらいの中国の石油の輸入のトレンドを調べると、①長期ではGDP成長とほぼ同じ成長率を見せている、②しかし、短期では2年毎に、GDP成長を上回って急成長する時期と、GDP成長を下回って低成長する時期が交互にやってくることが観察されます。今年は過去2年の急成長の後、低成長時代に入るところです。
モータリゼーションの進行や、産業の重工業化などで中国社会のエナジー・インテンシティーが年々高まっているという認識が一般にあります。僕もこの考えに基本的には賛成です。けれども例えば中国では去年の春頃から全然、乗用車が売れなくなってます。今でもそのスランプから抜けられていません。従って、或る時点でエナジー・インテンシティーが「ポイント・オブ・ノー・リターン(引き返し出来なくなる地点)」を通過したら、あとは急角度右肩上がりで一本調子で上がるという風に決めてかかるのは早計ではないかな?と感じます。
さて、2月のM2の成長を見てみると+14%と去年の2月より5.5%ポイント低い数字でした。これでゆくとリザーブ・リクワイヤメントの引き上げなどの一層の引き締めは必要なさそうです。3月14日に固定資産への投資の統計が出ますのでどのくらい減速しているかの確認が出来そうです。
2月のPPIでは+5.4%と過去10ヶ月で最低の伸び率でした。因みに1月は+5.8%、去年の12月は+7.1%ですからかなり生産者物価の伸びのスピードは衰えてきています。
* * *
中国の債券(2007年8月償還もの)の利回りを見ているんですけど、11月の半ばから今日までに約100bpも利回りが下がり(価格は上昇)、3.05%で回っています。これはインフレ期待が下がってきていることを表している気がします。(勿論、中国の今後の国債の発行見通しなどテクニカルなファクターもあるとは思いますが。)
随分、回りくどい説明になりました。でも結論としては中国経済がソフトランディングしつつある状況証拠が増えつつあるように僕は感じます。それと先の全人代でのアナウンスメントなどを読むにつけ、過度の、そして無駄のある固定資産への投資は今後もアグレッシブに抑制されてゆくみたいですから、これは中国経済の健全な発展には大変良いと思います。なお、経済全体としてはソフトランディングでも商品はハードランディングになる危険性は未だ残っているように僕は感じます。それは投機が行過ぎている気がするからです。何度も書くように中国株そのものには投機が見られません。従って株の方は大丈夫でしょう。
先ず、貿易統計。2月の輸入は去年の同期比で-5%のUS$39.92Billionでした。一方、輸出は+31%のUS$44.53Billionです。輸出が急激に伸びた理由は1月に繊維製品輸出の数量制限が解除されたことで中国からのテキスタイルの輸出が急増したことが原因です。一方の輸入の鈍化ですが、今年は春節が2月に来た事に注意を払うべきだと思います。なぜなら、通常、春節の直前と連休中は輸入が減り、春節明けに輸入が急増するというパターンがあるからです。去年は1月が春節でしたので2月の輸入の数字は大きかったです。これでゆくと3月にかけて輸入が急増する可能性が強いですから、3ヶ月の移動平均で物事を考える必要がありそうですね。
貿易統計で今日米国市場の話題になったもののひとつに原油の輸入があります。これによると1月、2月の二ヶ月間で中国の原油輸入は-12.7%の18.2Million metric tons、バレル換算では2.26Million bbl/dayでした。原油の輸入統計も先述の春節を巡るブレを含んでいる可能性がありますから3月以降の数字が待たれるところです。それを断った上で僕の個人的な意見を言わしてもらうと過去15年くらいの中国の石油の輸入のトレンドを調べると、①長期ではGDP成長とほぼ同じ成長率を見せている、②しかし、短期では2年毎に、GDP成長を上回って急成長する時期と、GDP成長を下回って低成長する時期が交互にやってくることが観察されます。今年は過去2年の急成長の後、低成長時代に入るところです。
モータリゼーションの進行や、産業の重工業化などで中国社会のエナジー・インテンシティーが年々高まっているという認識が一般にあります。僕もこの考えに基本的には賛成です。けれども例えば中国では去年の春頃から全然、乗用車が売れなくなってます。今でもそのスランプから抜けられていません。従って、或る時点でエナジー・インテンシティーが「ポイント・オブ・ノー・リターン(引き返し出来なくなる地点)」を通過したら、あとは急角度右肩上がりで一本調子で上がるという風に決めてかかるのは早計ではないかな?と感じます。
さて、2月のM2の成長を見てみると+14%と去年の2月より5.5%ポイント低い数字でした。これでゆくとリザーブ・リクワイヤメントの引き上げなどの一層の引き締めは必要なさそうです。3月14日に固定資産への投資の統計が出ますのでどのくらい減速しているかの確認が出来そうです。
2月のPPIでは+5.4%と過去10ヶ月で最低の伸び率でした。因みに1月は+5.8%、去年の12月は+7.1%ですからかなり生産者物価の伸びのスピードは衰えてきています。
* * *
中国の債券(2007年8月償還もの)の利回りを見ているんですけど、11月の半ばから今日までに約100bpも利回りが下がり(価格は上昇)、3.05%で回っています。これはインフレ期待が下がってきていることを表している気がします。(勿論、中国の今後の国債の発行見通しなどテクニカルなファクターもあるとは思いますが。)
随分、回りくどい説明になりました。でも結論としては中国経済がソフトランディングしつつある状況証拠が増えつつあるように僕は感じます。それと先の全人代でのアナウンスメントなどを読むにつけ、過度の、そして無駄のある固定資産への投資は今後もアグレッシブに抑制されてゆくみたいですから、これは中国経済の健全な発展には大変良いと思います。なお、経済全体としてはソフトランディングでも商品はハードランディングになる危険性は未だ残っているように僕は感じます。それは投機が行過ぎている気がするからです。何度も書くように中国株そのものには投機が見られません。従って株の方は大丈夫でしょう。
2005/03/10のBlog
[ 07:58 ]
[ 相場のテクニック ]
唐突ですがシェイクスピアを引用させて頂きます:
人生には波というものがある
上手く上げ潮に乗れば富を掴むことが出来るし
引き潮にあたれば浅瀬で座礁するであろう
ならば今、この上げ潮をこそ生かそうではないか!
さもなくば我々の企ては機会を失するだろう
(ジュリアス・シーザー)
僕の拙い訳ではちょっと感じが出ない面がありますが、それはご容赦下さい。
さて、自然界にはサイクルというものがあり、物事にはタイミングという事があります。さらに人間には好・不調ということがあります。どうも小市民的な幸福な時代が長く続くとそういう自然のサイクル、ないしは人生の波動というものを克服することが付加価値のある作業であるという錯誤に陥りがちです。例えば、ヘッジファンドの運用を例にとると毎年コンスタントに手堅いリターンを確保するやり方が「上手い」運用であるという価値観がそれですね。僕は頭が悪いのでそんな考え方に理詰めで反論する力はありません。でも人間の営みとか自然のサイクルのありのままの姿を見た場合、たまには嵐が来たり、津波が襲ったり、はたまた戦争になったりするものです。ポートフォリオの運用の場面で極端なオーパーシュートやアンダーシュートを削ぎ落とし、なるべくコンスタントに右肩上がりに資産を増やしてゆこうとする努力はこの「自然の力」に抗する試みに他なりません。
それでは極端な値動きを排しコンスタントに運用成績を上げてゆくやり方(専門用語的に言えばロー・ボラティリティー)が本当に最適なリターンを約束するアプローチなのでしょうか?。専門書にはそれに近いことが解説されているのをよく目にします。でも僕の実体験ではそうやって金持ちになった人(僕の定義ではゼロから始めて5億円以上の個人資産を作った人)には未だお目にかかっていません。逆に「ホームランか三振か」というリスク・テーキングなアプローチで成功した人なら50人くらいに実際に会いました。勿論、成功している人以上に失敗している人も多いですから、均してみたらコンスタント派が勝つのかも知れません。でも貴方の目標がゼロから始めて5億円をこさえることならばコンスタント派をやっていては駄目なことは目に見えています。
僕が言いたいのはサイクルを克服するということに腐心するあまり、敢えてリスクに身を委ねるという生き方が忘れられつつあるのではないか?という事です。その点、「お金の神様」邱永漢は、ひとつのところにとどまっていないで、どんどん河岸を変えれば良い、ブームがなければブームのあるところへ行って商売なり投資をしなさい、とアドバイスしています。
大体、株式投資というもの自体が限りなくギャンブルに近いものである気が僕はしています。そうは言っても僕はデイ・トレーダーではありませんし、チャート一発で勝負なんてこともあまりしません。一応、グラハム・ドット・セオリーも一通り勉強しましたし、どちらかといえばファンダメンタルズに煩い方だと自分では思っています。それでも株というものを想う場合、人間の小さな知恵ではどうしょうもない「説明できない部分」の大きさに目が行ってしまうんですね。僕も株をやりつけて日が浅い頃はいろんな理論を振りかざして口角泡を飛ばし議論したものです。ひとりひとりでは優秀なアナリストや経営者でも、皆が正しい結論に基づき同じ方向で動き出したら「合成の誤謬」になってしまうケースもあるので厄介です。僕は最近では知れば知るほど自分の無力感に打ちひしがれるのが株という気がしています。
逆にだからといって悲観することもない気がします。つまり自分の力が至らなくても、上げ相場に乗れば誰でも儲けられるという事も事実だからです。要は株の持つ特性を上手く利用して、「長いものには巻かれろ」式に付いて行きさえすればよいのです。それでは僕の考える株の特性とは何か?を説明すると、マルチプル(掛け算)効果という事が先ず真っ先に指摘できます。例えばEPSが$1の株が$10していたらPEは10倍ですね。でもこの会社が3年続けて30%EPSを伸ばせば掛け算されるPEは10倍ではなく20倍なり30倍なり迄買われると思います。すると株価はただEPSが伸びた分だけではなくてその何倍も伸びることがあるということ。(その逆も当然起ります。)
どうしてそういう事になるかというと株には「夢見る力」があるからです。(債券には夢見る力はありません。それは究極的な着地点がきまっているからです。)株のもつ、この「夢見る力」の事をシリコン・ヴァレーの企業家や投資銀行家はPower of Equity(株式の潜在力)と呼んでいます。このパワー・オブ・エクイティーを上手く御してモノにしたものだけがシリコン・ヴァレーでは勝利者になれます。どんなに技術力のあるエンジニアや企業でもエクイティーという大暴れする巨象に飛び乗り、それを手なずけることが出来ないと勝負には勝てないのです。なぜなら自分の競争相手は皆、巨象に乗って相手を踏み潰さんがために疾走してきているわけですからひとりで立ち向かったってぺッチャンコにされるのがオチです。
このパワー・オブ・エクイティーのゲームはアメリカのみならず中国やインドやロシアといったエマージング・マーケットでも展開されています。これらの国が直接金融のモデルに依存する以上、巨象と巨象をぶつけ合う戦いは続きます。つまり、われわれがエマージング・マーケットの株に投資するという事は即ち、そういう決闘がおこなわれているローマのコロシアムに足を踏み入れるのと同じなわけです。僕は自分のヘッジファンドを買い手に説明する際には「成るべくリスクの少なくなるようにやりますから、、、」なんて軽い言葉は口にしません。そう言った瞬間にウソになるからです。
また、ヴァリュー・アット・リスク(VAR)などの過去の価格変動データに基づいたリスク・モデルに関しても深い猜疑心とある種の嘲笑の念を抱きつつ接しています。勿論、自分のディシプリン(運用規律)の道具としての利用価値は認めますが、これで「保険を買った」などと思い込むとバズーカ砲でぶっ飛ばされるような奇襲に遭うにきまってますから。
人生には波というものがある
上手く上げ潮に乗れば富を掴むことが出来るし
引き潮にあたれば浅瀬で座礁するであろう
ならば今、この上げ潮をこそ生かそうではないか!
さもなくば我々の企ては機会を失するだろう
(ジュリアス・シーザー)
僕の拙い訳ではちょっと感じが出ない面がありますが、それはご容赦下さい。
さて、自然界にはサイクルというものがあり、物事にはタイミングという事があります。さらに人間には好・不調ということがあります。どうも小市民的な幸福な時代が長く続くとそういう自然のサイクル、ないしは人生の波動というものを克服することが付加価値のある作業であるという錯誤に陥りがちです。例えば、ヘッジファンドの運用を例にとると毎年コンスタントに手堅いリターンを確保するやり方が「上手い」運用であるという価値観がそれですね。僕は頭が悪いのでそんな考え方に理詰めで反論する力はありません。でも人間の営みとか自然のサイクルのありのままの姿を見た場合、たまには嵐が来たり、津波が襲ったり、はたまた戦争になったりするものです。ポートフォリオの運用の場面で極端なオーパーシュートやアンダーシュートを削ぎ落とし、なるべくコンスタントに右肩上がりに資産を増やしてゆこうとする努力はこの「自然の力」に抗する試みに他なりません。
それでは極端な値動きを排しコンスタントに運用成績を上げてゆくやり方(専門用語的に言えばロー・ボラティリティー)が本当に最適なリターンを約束するアプローチなのでしょうか?。専門書にはそれに近いことが解説されているのをよく目にします。でも僕の実体験ではそうやって金持ちになった人(僕の定義ではゼロから始めて5億円以上の個人資産を作った人)には未だお目にかかっていません。逆に「ホームランか三振か」というリスク・テーキングなアプローチで成功した人なら50人くらいに実際に会いました。勿論、成功している人以上に失敗している人も多いですから、均してみたらコンスタント派が勝つのかも知れません。でも貴方の目標がゼロから始めて5億円をこさえることならばコンスタント派をやっていては駄目なことは目に見えています。
僕が言いたいのはサイクルを克服するということに腐心するあまり、敢えてリスクに身を委ねるという生き方が忘れられつつあるのではないか?という事です。その点、「お金の神様」邱永漢は、ひとつのところにとどまっていないで、どんどん河岸を変えれば良い、ブームがなければブームのあるところへ行って商売なり投資をしなさい、とアドバイスしています。
大体、株式投資というもの自体が限りなくギャンブルに近いものである気が僕はしています。そうは言っても僕はデイ・トレーダーではありませんし、チャート一発で勝負なんてこともあまりしません。一応、グラハム・ドット・セオリーも一通り勉強しましたし、どちらかといえばファンダメンタルズに煩い方だと自分では思っています。それでも株というものを想う場合、人間の小さな知恵ではどうしょうもない「説明できない部分」の大きさに目が行ってしまうんですね。僕も株をやりつけて日が浅い頃はいろんな理論を振りかざして口角泡を飛ばし議論したものです。ひとりひとりでは優秀なアナリストや経営者でも、皆が正しい結論に基づき同じ方向で動き出したら「合成の誤謬」になってしまうケースもあるので厄介です。僕は最近では知れば知るほど自分の無力感に打ちひしがれるのが株という気がしています。
逆にだからといって悲観することもない気がします。つまり自分の力が至らなくても、上げ相場に乗れば誰でも儲けられるという事も事実だからです。要は株の持つ特性を上手く利用して、「長いものには巻かれろ」式に付いて行きさえすればよいのです。それでは僕の考える株の特性とは何か?を説明すると、マルチプル(掛け算)効果という事が先ず真っ先に指摘できます。例えばEPSが$1の株が$10していたらPEは10倍ですね。でもこの会社が3年続けて30%EPSを伸ばせば掛け算されるPEは10倍ではなく20倍なり30倍なり迄買われると思います。すると株価はただEPSが伸びた分だけではなくてその何倍も伸びることがあるということ。(その逆も当然起ります。)
どうしてそういう事になるかというと株には「夢見る力」があるからです。(債券には夢見る力はありません。それは究極的な着地点がきまっているからです。)株のもつ、この「夢見る力」の事をシリコン・ヴァレーの企業家や投資銀行家はPower of Equity(株式の潜在力)と呼んでいます。このパワー・オブ・エクイティーを上手く御してモノにしたものだけがシリコン・ヴァレーでは勝利者になれます。どんなに技術力のあるエンジニアや企業でもエクイティーという大暴れする巨象に飛び乗り、それを手なずけることが出来ないと勝負には勝てないのです。なぜなら自分の競争相手は皆、巨象に乗って相手を踏み潰さんがために疾走してきているわけですからひとりで立ち向かったってぺッチャンコにされるのがオチです。
このパワー・オブ・エクイティーのゲームはアメリカのみならず中国やインドやロシアといったエマージング・マーケットでも展開されています。これらの国が直接金融のモデルに依存する以上、巨象と巨象をぶつけ合う戦いは続きます。つまり、われわれがエマージング・マーケットの株に投資するという事は即ち、そういう決闘がおこなわれているローマのコロシアムに足を踏み入れるのと同じなわけです。僕は自分のヘッジファンドを買い手に説明する際には「成るべくリスクの少なくなるようにやりますから、、、」なんて軽い言葉は口にしません。そう言った瞬間にウソになるからです。
また、ヴァリュー・アット・リスク(VAR)などの過去の価格変動データに基づいたリスク・モデルに関しても深い猜疑心とある種の嘲笑の念を抱きつつ接しています。勿論、自分のディシプリン(運用規律)の道具としての利用価値は認めますが、これで「保険を買った」などと思い込むとバズーカ砲でぶっ飛ばされるような奇襲に遭うにきまってますから。
[ 04:39 ]
[ 資源 ]
今日は水曜日ですから例によってエネルギー省とAPIからそれぞれ米国の石油在庫に関する週間データが発表になりました。その内容はどちらも大幅な在庫増を示すデータで本来であれば石油価格が下落するのが順当な内容でした。ところが相場は一瞬さがったものの、すぐに切り返し、最高値とツラの水準まで逆に買われました。もうこうなってくると「上がるから買う、買うから上がる」という理屈もへったくれも無いパニック買いの状況です。ま、これも相場の姿ですから上がるものにはつかないと仕方ありません。
しかし、このドタバタの最中にエクソン(XOM)に最近では大変珍しい大口クロスが入りました。500万株、1,400万株、600万株のロットです。クロスの価格はいずれも$63。ディスカウントですからベンダーは売り方でしょう。どこの証券会社が振ったのかちょっとわかりませんし、ダブル・カウントになっているでしょうから差し引いて考えるべきだとは思いますが、単純に計算すると1,600億円の取引です。昔は証券会社のアップステアーズ、つまり株式部が「ジャン決め」といって大口のクロスを決める場合が多かったのですが、最近ではこういうのは時代遅れになり、大変、めずらしくなりました。今日の取引はやはりその異例さで歴史に残るクロスになるかもしれません。
しかし、このドタバタの最中にエクソン(XOM)に最近では大変珍しい大口クロスが入りました。500万株、1,400万株、600万株のロットです。クロスの価格はいずれも$63。ディスカウントですからベンダーは売り方でしょう。どこの証券会社が振ったのかちょっとわかりませんし、ダブル・カウントになっているでしょうから差し引いて考えるべきだとは思いますが、単純に計算すると1,600億円の取引です。昔は証券会社のアップステアーズ、つまり株式部が「ジャン決め」といって大口のクロスを決める場合が多かったのですが、最近ではこういうのは時代遅れになり、大変、めずらしくなりました。今日の取引はやはりその異例さで歴史に残るクロスになるかもしれません。
2005/03/09のBlog
[ 21:35 ]
[ 中国株 ]
[関連したBlog]
先のブログでアメリカの投資家がいよいよ中国株に食指を動かす雰囲気になってきた事を書きました。その先導役はペトロチャイナ(PTR)だと思うんですけど、あまのじゃくな僕の趣味としてはこれからペトロチャイナを買うというのは少し気恥ずかしいですね。
そこでそれ以外の銘柄としてちょっと注目しているのは華能国際電力(HNP)です。その理由は:
①ADRの流動性が高い
②つい最近まで石炭価格高騰という悪材料があり、株価が低迷していた
③しかし、石炭の逼迫は若干、改善される可能性がある
という点です。石炭の逼迫ですけど、長期のトレンドで言えば需給がタイトであることは変わりありません。石炭の需要家は発電所と製鉄業がメインです。このうち製鉄業は今後モメンタムが下がると僕は睨んでいます。事実、米国の鉄鋼株は軒並みロール・オーバーしはじめています。鉄鋼株が明らかな調整局面に入ると石炭株も調整入りは免れないと思います。すると投資家の発想として、逆にこれまで凹んできた電力株とかをいじりたくなるんじゃないでしょうか?。
華能国際電力ですが、今年(05年)のPERで約12倍、配当利回り4.5%、ROEは16%台で中国の電力会社の中では最も高い部類に入ります。年初に見られた業績下方修正の動きが一巡したので、そろそろ出動しても良いのでは?。勿論、値運び的には当分、リーダーのペトロチャイナなんかの方が軽いと思います。気の短い人はそちらをどうぞ。
先のブログでアメリカの投資家がいよいよ中国株に食指を動かす雰囲気になってきた事を書きました。その先導役はペトロチャイナ(PTR)だと思うんですけど、あまのじゃくな僕の趣味としてはこれからペトロチャイナを買うというのは少し気恥ずかしいですね。
そこでそれ以外の銘柄としてちょっと注目しているのは華能国際電力(HNP)です。その理由は:
①ADRの流動性が高い
②つい最近まで石炭価格高騰という悪材料があり、株価が低迷していた
③しかし、石炭の逼迫は若干、改善される可能性がある
という点です。石炭の逼迫ですけど、長期のトレンドで言えば需給がタイトであることは変わりありません。石炭の需要家は発電所と製鉄業がメインです。このうち製鉄業は今後モメンタムが下がると僕は睨んでいます。事実、米国の鉄鋼株は軒並みロール・オーバーしはじめています。鉄鋼株が明らかな調整局面に入ると石炭株も調整入りは免れないと思います。すると投資家の発想として、逆にこれまで凹んできた電力株とかをいじりたくなるんじゃないでしょうか?。
華能国際電力ですが、今年(05年)のPERで約12倍、配当利回り4.5%、ROEは16%台で中国の電力会社の中では最も高い部類に入ります。年初に見られた業績下方修正の動きが一巡したので、そろそろ出動しても良いのでは?。勿論、値運び的には当分、リーダーのペトロチャイナなんかの方が軽いと思います。気の短い人はそちらをどうぞ。
[ 20:18 ]
[ ロシア株 ]
機関投資家が投資する際のベンチマークとしてよく使われるMSCI(モルガン・スタンレー・キャピタル・インターナショナル)のインデックスというのがあります。これに採用されると指数を模倣する投資家がこぞってその株を買うので株価を左右するファクターとして結構重要です。
さて、ロシアの携帯電話の株であるヴィンペル(VIP)とモバイル・テレシステム(MBT)の両社のADRを指数に採用するかどうかの検討が今、MSCIでなされているという話があります。通常、MSCI指数に採用されるためにはフリー・フロート、つまり機関投資家が自由に売り買いできる浮動玉が市場に沢山出回っているかが重要なポイントとなります。これはロシアの株一般に言えることですが現地のローカル株の商いが薄く、ADRが流動性の中心をなしているケースが多いんですね。これはロシアの株式市場の発展が所謂、「ショック療法」の一環として早期から外資に依存する発展形態を辿った歴史的経緯からそうなっているのです。従って、世界の標準からするとロシアのケースは特殊な部類に入るでしょう。しかし、ヴィンペルとモバイル・テレシステムのNYSEに於ける流動性は大変高いですし、そもそもローカル市場よりADRの上場の基準のほうがハードルが高いわけですから主要取引市場がADRであるという理由だけで指数で継子扱いされるのはおかしいという議論が沸きあがっているわけです。
僕の考えでは当然、両社のADRをインデックス構成銘柄として採用するという決定がなされると思いますし、それが新しい買い需要を喚起すると思います。
さて、ロシアの携帯電話の株であるヴィンペル(VIP)とモバイル・テレシステム(MBT)の両社のADRを指数に採用するかどうかの検討が今、MSCIでなされているという話があります。通常、MSCI指数に採用されるためにはフリー・フロート、つまり機関投資家が自由に売り買いできる浮動玉が市場に沢山出回っているかが重要なポイントとなります。これはロシアの株一般に言えることですが現地のローカル株の商いが薄く、ADRが流動性の中心をなしているケースが多いんですね。これはロシアの株式市場の発展が所謂、「ショック療法」の一環として早期から外資に依存する発展形態を辿った歴史的経緯からそうなっているのです。従って、世界の標準からするとロシアのケースは特殊な部類に入るでしょう。しかし、ヴィンペルとモバイル・テレシステムのNYSEに於ける流動性は大変高いですし、そもそもローカル市場よりADRの上場の基準のほうがハードルが高いわけですから主要取引市場がADRであるという理由だけで指数で継子扱いされるのはおかしいという議論が沸きあがっているわけです。
僕の考えでは当然、両社のADRをインデックス構成銘柄として採用するという決定がなされると思いますし、それが新しい買い需要を喚起すると思います。
[ 19:30 ]
[ 中国株 ]
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以前のブログでアメリカの投資家が中国株に注目しはじめていることに言及しました。
今日はこの話の続きです。
先ず、中国株の動向を占うのになぜアメリカの投資家のことを論ずるかという点ですけど、これは至ってカンタン。アメリカの投資家の資金量は世界で最大だという事。それとインベストメント・プラクティスとして世界中の投資家がアメリカのやっている事をお手本としますから先ずアメリカ人のお眼鏡にかなうことが重要だからです。まあ、中国株を実際手がけてきた人なら僕がこんなことをつべこべ書かなくても一昨年のペトロチャイナの相場でアメリカの資金の重要性を痛感している筈。
僕がアメリカの投資家がいよいよ動き始めると感じる最初の理由はアメリカのメディアがようやく中国株投資のことについて書き始めたからです。今日のウォール・ストリート・ジャーナルには中国株への投資の様々な方法を比較する記事が出ていました。内容は新味に欠ける貧弱なものですが「人気」を測るうえでは一応参考にはなります。
次に(僕はこちらのほうが重要だと感じるのですが)中国株がグローバル・セクター・プレイヤーのスクリーンに割安ないしは出遅れ株として浮上してきている事。機関投資家の投資の方法のひとつとして、或る業種の株が相場になった場合、同様のセクターで未だ相場になっていない株を他国市場に求めるというやり方があります。つまり、石油産業であれば、アメリカのオイル・メジャーが相場になった後で、「欧州のシェルやBPはどうかしら?」なんて物色の対象を広げてゆくやり方です。すでにこういう発想からカナダの石油株とかブラジルや南アの石油株は相場になりました。これまでの株価水準とは全然違う、「株価再評価」が起ったと言えると思います。
さて、中国株に話を持ってゆきますと、こういうグローバル・セクター・プレイヤーはこれまでペトロチャイナ(PTR)やシノペック(SNP)は出遅れ株物色の対象としては後回しにされてきました。その最大の理由は中国国内市場に於ける川下の価格決定プロセスが理解しずらく、「ストレートに業績に跳ね返らないのなら時間をかけて吟味するほどの価値も無い」と「足切り」でハネられたからです。一般に中国の石油会社は川上のポートフォリオが貧弱であることも「含み価値では石油価格上昇の恩恵を受けにくい」というイメージに直結し、嫌気された面もあります。
しかし、世界中の石油株が続々新値を更新し、随分質的に劣る、二流、三流のポンコツ株までに底上げ相場が起るに至って、「そうそう、中国の石油株、忘れてたネ。」と気が付く投資家が増えています。UBS証券の資料を見ているのですが、2004年1月を起点(100)とした場合、WTI(石油価格)は約160、MSCI社の世界の石油株指数は143程度迄買われています。ところが中国の石油株は87近辺をウロウロしているんですね。ペトロチャイナは「PEで8倍、PBRで1.75倍、利回りで5.6%、ROCEで22%と割安(UBS)」と言われるとなかなか反論できないと思います。
さて、なぜオイル株の話ばかりするかというとH株指数というのは実際にはオイル株指数と言っても良いほどオイルの比重が高く、実に31.4%に達します(その次は保険で19%)。つまり、ペトロチャイナとかに買いが入ると、自動的にインデックスも上昇するという事。いま、エマージング・マーケットの専門のファンドの投資スタンスを見ると中国がインデックスに比べて最もアンダー・ウエイトになっています。つまり、H株指数が動き始めると今まで軽視してきた中国株を買い増さないといけない機関投資家が多いという事です。
以前のブログでアメリカの投資家が中国株に注目しはじめていることに言及しました。
今日はこの話の続きです。
先ず、中国株の動向を占うのになぜアメリカの投資家のことを論ずるかという点ですけど、これは至ってカンタン。アメリカの投資家の資金量は世界で最大だという事。それとインベストメント・プラクティスとして世界中の投資家がアメリカのやっている事をお手本としますから先ずアメリカ人のお眼鏡にかなうことが重要だからです。まあ、中国株を実際手がけてきた人なら僕がこんなことをつべこべ書かなくても一昨年のペトロチャイナの相場でアメリカの資金の重要性を痛感している筈。
僕がアメリカの投資家がいよいよ動き始めると感じる最初の理由はアメリカのメディアがようやく中国株投資のことについて書き始めたからです。今日のウォール・ストリート・ジャーナルには中国株への投資の様々な方法を比較する記事が出ていました。内容は新味に欠ける貧弱なものですが「人気」を測るうえでは一応参考にはなります。
次に(僕はこちらのほうが重要だと感じるのですが)中国株がグローバル・セクター・プレイヤーのスクリーンに割安ないしは出遅れ株として浮上してきている事。機関投資家の投資の方法のひとつとして、或る業種の株が相場になった場合、同様のセクターで未だ相場になっていない株を他国市場に求めるというやり方があります。つまり、石油産業であれば、アメリカのオイル・メジャーが相場になった後で、「欧州のシェルやBPはどうかしら?」なんて物色の対象を広げてゆくやり方です。すでにこういう発想からカナダの石油株とかブラジルや南アの石油株は相場になりました。これまでの株価水準とは全然違う、「株価再評価」が起ったと言えると思います。
さて、中国株に話を持ってゆきますと、こういうグローバル・セクター・プレイヤーはこれまでペトロチャイナ(PTR)やシノペック(SNP)は出遅れ株物色の対象としては後回しにされてきました。その最大の理由は中国国内市場に於ける川下の価格決定プロセスが理解しずらく、「ストレートに業績に跳ね返らないのなら時間をかけて吟味するほどの価値も無い」と「足切り」でハネられたからです。一般に中国の石油会社は川上のポートフォリオが貧弱であることも「含み価値では石油価格上昇の恩恵を受けにくい」というイメージに直結し、嫌気された面もあります。
しかし、世界中の石油株が続々新値を更新し、随分質的に劣る、二流、三流のポンコツ株までに底上げ相場が起るに至って、「そうそう、中国の石油株、忘れてたネ。」と気が付く投資家が増えています。UBS証券の資料を見ているのですが、2004年1月を起点(100)とした場合、WTI(石油価格)は約160、MSCI社の世界の石油株指数は143程度迄買われています。ところが中国の石油株は87近辺をウロウロしているんですね。ペトロチャイナは「PEで8倍、PBRで1.75倍、利回りで5.6%、ROCEで22%と割安(UBS)」と言われるとなかなか反論できないと思います。
さて、なぜオイル株の話ばかりするかというとH株指数というのは実際にはオイル株指数と言っても良いほどオイルの比重が高く、実に31.4%に達します(その次は保険で19%)。つまり、ペトロチャイナとかに買いが入ると、自動的にインデックスも上昇するという事。いま、エマージング・マーケットの専門のファンドの投資スタンスを見ると中国がインデックスに比べて最もアンダー・ウエイトになっています。つまり、H株指数が動き始めると今まで軽視してきた中国株を買い増さないといけない機関投資家が多いという事です。
2005/03/08のBlog
[ 02:14 ]
[ マクロ・ストラテジー ]
今日のウォール・ストリート・ジャーナルの『ハード・オン・ザ・ストリート』のコラムに米国の不動産市場の活況についての記事が出ていました。それによるとナスダック・バブルの次は住宅市場がバブルの様相を呈してきているということです。記事中、シーブリーズ・パートナーズのダグ・カス(今、空売りのプレイヤーとしてはアメリカで最も影響力のある人でしょう)、イェール大学教授のロバート・シラー(ナスダックのバブルがはじける前に警告をしたことで有名になった)、ニュース・レター屋のジム・グラント(この人は長期のヴァリュー指向の人で短期的には当たらない場合が多い、でも昔、バロンズの『アップ・アンド・ダウン・ウォール・ストリート』欄を担当していたこともあり、理屈に叶った議論を展開します)の三人が揃って警鐘を鳴らしています。
バブルというのは行き過ぎるからバブルなのであって、その意味では今の住宅ブーム、宅建業者株ブームもまだまだ続く可能性は強いでしょう。唯、ここから先は純粋なファンダメンタルズからはもう買えないと思います。その理由は「手付金ゲーム」により宅建業者の利益がインフレートされてリポートされていると僕は思うからです。
この前、ニューヨーク・タイムズの記事を読んでいて、1年に5回も住宅を売買したフロリダ在住の夫婦の記事を発見しました。それによるとこの夫婦は住むためではなく、投資のために住宅を売買しているそうです。あたらしいコンドミニアム(日本で言うマンションですね)が建設しはじめられるとその展示場に行って「購入予約」をします。ここで手付金(多分、物件価格の5%から10%だと思います)を支払い、物件が完成した暁にはそれを購入する権利を確保するわけです。そして工事の完成前に後から来たバイヤーにその物件購入件を転売するのだそうです。この夫婦の場合は当然、レバレッジを効かして自分の持っているキャッシュより大きな金額の物件を約定するのですが、住宅ローンは面倒くさいので設定せず、クロージング(所有権の移管)の前に次のバイヤーに転売してしまうらしいです。(アメリカの場合、不動産取引は州によって法律が違うのでフロリダのやり方というのは僕は詳しくしりませんが、僕の慣れているカリフォルニアとは違う気がします。)これは株の世界で言えば3日目受け渡しの前に差金決済するのと同じ感覚ですね。
実は僕の友人も全く同じような権利の売買をネバダ州ラスベガスでやっています。3000万円くらいの物件を買う権利を300万円程度で買うわけですけど、造成が終わる前に物件価格が3500万円に値上がりすると、その住宅を「現引き」、つまり受け渡しをつける方向で契約書を準備、但し、住宅ローン自体は組まずに、最後の瞬間に新しいバイヤーに売り抜けるのです。すると3500万円-3000万円で500万円の利食い。今、彼のコストは手付けの300万円だけですから何と66%のゲインになります。(手付け金が返って来るのかどうかは訊きわすれました。また、現引きせず、権利だけをワラントのように売買することもされているそうです。)
「こんなオイシイ話なら、なぜ、宅建業者そのものがその手付けの権利を早い段階で投資家に売却してしまうのか?」と僕は訊きました。彼曰く、宅建業者は予約完売になっているということで工事費を銀行から借り入れることが容易になるからだと言っていました。また、どうやら手付金は建設融資の審査の際のエクイティーに算入されているようです。
アメリカでは全国平均の住宅価格が1年間で値下がりしたケースというのは第二次大戦以降殆ど皆無と言っていいと思うほど、安定して上昇しています。(勿論、1990年頃、カリフォルニアで住宅価格が急落するなど、いち地方に限ってはベア・マーケットは存在しました。)ですから「住宅投資は絶対安全」という神話が出来上がっていると思います。特に、南カリフォルニア、ネバダ、アリゾナなどのサンベルトは移民の流入などで住宅市場は逼迫を続けるというのがコンセンサスです。でも例えばサンフェルナンド・ヴァレーのようなブーム・タウンでは平均的な住宅が5000万円くらいします。年収が200万円程度のメキシコの移民が増えたからといって、どうして彼らが5000万円の物件価格の住宅市況に「支援材料になる」のか僕にはわかりません。
バブルというのは行き過ぎるからバブルなのであって、その意味では今の住宅ブーム、宅建業者株ブームもまだまだ続く可能性は強いでしょう。唯、ここから先は純粋なファンダメンタルズからはもう買えないと思います。その理由は「手付金ゲーム」により宅建業者の利益がインフレートされてリポートされていると僕は思うからです。
この前、ニューヨーク・タイムズの記事を読んでいて、1年に5回も住宅を売買したフロリダ在住の夫婦の記事を発見しました。それによるとこの夫婦は住むためではなく、投資のために住宅を売買しているそうです。あたらしいコンドミニアム(日本で言うマンションですね)が建設しはじめられるとその展示場に行って「購入予約」をします。ここで手付金(多分、物件価格の5%から10%だと思います)を支払い、物件が完成した暁にはそれを購入する権利を確保するわけです。そして工事の完成前に後から来たバイヤーにその物件購入件を転売するのだそうです。この夫婦の場合は当然、レバレッジを効かして自分の持っているキャッシュより大きな金額の物件を約定するのですが、住宅ローンは面倒くさいので設定せず、クロージング(所有権の移管)の前に次のバイヤーに転売してしまうらしいです。(アメリカの場合、不動産取引は州によって法律が違うのでフロリダのやり方というのは僕は詳しくしりませんが、僕の慣れているカリフォルニアとは違う気がします。)これは株の世界で言えば3日目受け渡しの前に差金決済するのと同じ感覚ですね。
実は僕の友人も全く同じような権利の売買をネバダ州ラスベガスでやっています。3000万円くらいの物件を買う権利を300万円程度で買うわけですけど、造成が終わる前に物件価格が3500万円に値上がりすると、その住宅を「現引き」、つまり受け渡しをつける方向で契約書を準備、但し、住宅ローン自体は組まずに、最後の瞬間に新しいバイヤーに売り抜けるのです。すると3500万円-3000万円で500万円の利食い。今、彼のコストは手付けの300万円だけですから何と66%のゲインになります。(手付け金が返って来るのかどうかは訊きわすれました。また、現引きせず、権利だけをワラントのように売買することもされているそうです。)
「こんなオイシイ話なら、なぜ、宅建業者そのものがその手付けの権利を早い段階で投資家に売却してしまうのか?」と僕は訊きました。彼曰く、宅建業者は予約完売になっているということで工事費を銀行から借り入れることが容易になるからだと言っていました。また、どうやら手付金は建設融資の審査の際のエクイティーに算入されているようです。
アメリカでは全国平均の住宅価格が1年間で値下がりしたケースというのは第二次大戦以降殆ど皆無と言っていいと思うほど、安定して上昇しています。(勿論、1990年頃、カリフォルニアで住宅価格が急落するなど、いち地方に限ってはベア・マーケットは存在しました。)ですから「住宅投資は絶対安全」という神話が出来上がっていると思います。特に、南カリフォルニア、ネバダ、アリゾナなどのサンベルトは移民の流入などで住宅市場は逼迫を続けるというのがコンセンサスです。でも例えばサンフェルナンド・ヴァレーのようなブーム・タウンでは平均的な住宅が5000万円くらいします。年収が200万円程度のメキシコの移民が増えたからといって、どうして彼らが5000万円の物件価格の住宅市況に「支援材料になる」のか僕にはわかりません。
2005/03/07のBlog
[ 07:17 ]
[ リスク管理 ]
ひとりあたりで5万円を下らないドル札をかき込んだホステス達のコーフンは最高潮に達して社長さんは両手に花どころかお店じゅうの女の子に囲まれてしまいました。社長さんがご満悦だったことは書くに及びません。
結局、その日は明け方になんとかおひらきになり、社長さんも駄々をこねずにパリに向けて飛びました。勿論、ホステス同伴ではありません。翌日から東京支店の営業部に例のナイトクラブからジャンジャン電話が入り「また来て下さいねぇ~ん。」なんてネッチリ営業されて閉口しました。
さて、僕の読みでは社長がばら撒いた札束は多分、あとでその発行会社の公募関連費用として経費で落とされるのだと思います。つまり株主の金だということ。そういう事情を知らずに応募した機関投資家の皆さんにはあわせる顔がありません。
しかし、後日、もっと大変な問題が持ち上がりました。それはラテン・アメリカの通貨危機が折り悪く発生したのです。ADRの株価はどれも暴落、景気が悪くなったので有料高速道路の利用者は激減、おまけにレバレッジを目一杯効かせていましたからその建設会社は瞬時にして経営危機に陥りました。
返すがえすも思うことは「アザー・ピープルズ・マネー」、つまり他人のふんどしで相撲を取ることの恐ろしさです。
後日、ロザリンに「僕はロードショウの寄港地に香港を入れるのには反対したのになんで社長は香港に寄りたかったのかねぇ?」と聞いたら、「それはね、社長が贔屓にしているワイシャツの仕立て屋が香港にあって、そこで2ダースほどワイシャツを特注したいからという社長のリクエストで旅程に入れたの。香港のシャツは生地も仕立ても世界最高だって、、、」
結局、その日は明け方になんとかおひらきになり、社長さんも駄々をこねずにパリに向けて飛びました。勿論、ホステス同伴ではありません。翌日から東京支店の営業部に例のナイトクラブからジャンジャン電話が入り「また来て下さいねぇ~ん。」なんてネッチリ営業されて閉口しました。
さて、僕の読みでは社長がばら撒いた札束は多分、あとでその発行会社の公募関連費用として経費で落とされるのだと思います。つまり株主の金だということ。そういう事情を知らずに応募した機関投資家の皆さんにはあわせる顔がありません。
しかし、後日、もっと大変な問題が持ち上がりました。それはラテン・アメリカの通貨危機が折り悪く発生したのです。ADRの株価はどれも暴落、景気が悪くなったので有料高速道路の利用者は激減、おまけにレバレッジを目一杯効かせていましたからその建設会社は瞬時にして経営危機に陥りました。
返すがえすも思うことは「アザー・ピープルズ・マネー」、つまり他人のふんどしで相撲を取ることの恐ろしさです。
後日、ロザリンに「僕はロードショウの寄港地に香港を入れるのには反対したのになんで社長は香港に寄りたかったのかねぇ?」と聞いたら、「それはね、社長が贔屓にしているワイシャツの仕立て屋が香港にあって、そこで2ダースほどワイシャツを特注したいからという社長のリクエストで旅程に入れたの。香港のシャツは生地も仕立ても世界最高だって、、、」
[ 00:52 ]
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幸い、東京の営業チームの大変な努力で帝国ホテルで開かれた会社説明会は盛況でした。いかにも土建屋のオッサン風の社長の豪放なトークも功奏して株の予約注文も入り始めました。「よっしゃ!今日は打ち上げや!」社長の一声でロードショウ・チームは夜の六本木に繰り出したわけです。
Sという老舗のステーキ・ハウスでディナーした後、トルコの後宮の名前がつけられた某ナイトクラブに繰り出しました。綺麗な女の子達がはべる日本の高級クラブが珍しかったのか、社長は上機嫌です。ホステスの女性達は英語は駄目ですから僕の同僚の若いセールスマンが専ら通訳を買って出ました。
社長:「オイ、セールスマン、この娘にアイ・ラブ・ユーって言え!」
セールスマン:「ハ、ハイ。、、、」
セールスマン(ホステスに向かって):「社長がアンタのこと愛してるって言ってマス。」
ホステス:「はあ?#$%&」
社長:「オイ、セールスマン、お前ちゃんと通訳してんのか、この野郎!」
セールスマン:「え、ええ。、、、」
社長:「オレは明日朝パリに飛ぶんだがリッツ・ホテルのコーナー・スウィートに部屋取ってあんだ。オレと一緒にパリに来いとこの娘に言えっ!」
セールスマン:「社長が明日一緒にパリに行こうって言ってマス。」
ホステス:「なにそれ?#$%&」
社長(セールスマンに向かって):「てめえ、ちゃんと通訳してんのか?」
社長は「ええい、面倒くさい!」と言い放つと懐から輪ゴムで束ねた50ドル札を取り出し、それをストンとテーブルの上に立てて(お札が立つくらい厚みがありました。5センチくらいかな)、これでどうだ!」
僕をはじめ、周りの人間はみんな目が点になりました。すると何を思ったかこの社長、輪ゴムをはずしてその50ドル札を店じゅうに花咲じじいみたいにばら撒き始めたのです。「キャー」という嬌声とともにホステスの娘たちはお札の奪い合いになりました。
Sという老舗のステーキ・ハウスでディナーした後、トルコの後宮の名前がつけられた某ナイトクラブに繰り出しました。綺麗な女の子達がはべる日本の高級クラブが珍しかったのか、社長は上機嫌です。ホステスの女性達は英語は駄目ですから僕の同僚の若いセールスマンが専ら通訳を買って出ました。
社長:「オイ、セールスマン、この娘にアイ・ラブ・ユーって言え!」
セールスマン:「ハ、ハイ。、、、」
セールスマン(ホステスに向かって):「社長がアンタのこと愛してるって言ってマス。」
ホステス:「はあ?#$%&」
社長:「オイ、セールスマン、お前ちゃんと通訳してんのか、この野郎!」
セールスマン:「え、ええ。、、、」
社長:「オレは明日朝パリに飛ぶんだがリッツ・ホテルのコーナー・スウィートに部屋取ってあんだ。オレと一緒にパリに来いとこの娘に言えっ!」
セールスマン:「社長が明日一緒にパリに行こうって言ってマス。」
ホステス:「なにそれ?#$%&」
社長(セールスマンに向かって):「てめえ、ちゃんと通訳してんのか?」
社長は「ええい、面倒くさい!」と言い放つと懐から輪ゴムで束ねた50ドル札を取り出し、それをストンとテーブルの上に立てて(お札が立つくらい厚みがありました。5センチくらいかな)、これでどうだ!」
僕をはじめ、周りの人間はみんな目が点になりました。すると何を思ったかこの社長、輪ゴムをはずしてその50ドル札を店じゅうに花咲じじいみたいにばら撒き始めたのです。「キャー」という嬌声とともにホステスの娘たちはお札の奪い合いになりました。
[ 00:17 ]
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僕がロンドンのボスから緊急の電話を受け取ったのは未だ夜も明けきらないNYの早朝でした。「オイ、大変なことになったぞ。今日の飛行機ですぐ東京に飛んで呉れ。」
僕の勤める投資銀行は或るラテンアメリカの建設会社の公募増資を仕切っていて、おりしもグローバル・ロードショウがシンガポールを皮切りに開始されたばかりでした。グローバル・ロードショウというのはサーカスの興行よろしく株を発行する企業の経営者が世界各地を「巡業」し、株を買ってくれそうな機関投資家を回って歩くことを指します。発行企業の社長と財務部長、そして投資銀行からは担当法人マンが随行します。
この建設会社は或る中米の国の政府がお手軽にインフラ拡充を図る便法として高速道路のコンセッションを払い下げるのにどんどん応札し、自前の資金で建設を推し進めていました。普通なら国の負担としても背負い切れないような巨額の工事費を一企業が立て替えるわけですからどれだけ金があっても足りません。借り入れ金は勿論のこと、バランスシートの補強の為の増資は不可欠。そういうわけでこの企業は投資銀行にとっては「鴨が葱背負って来た」ようなオイシイお客さんです。
ところがロードショウ・チームがシンガポールから香港に北上したところでこのお客さんの機嫌を損ねる事件が起ってしまったのです。そもそも香港の投資家説明会が不入りで社長さんの機嫌が悪かったところに夜、ヴィクトリア・ハーバーをジャンク(帆船)に乗ってクルーズするカクテル・パーティーを催したのですが、その席で我々の担当法人マン、ロザリンさん(新婚ホヤホヤのアメリカン・チャイニーズで大変感じの良い方でした)が過労と船酔いで参ってしまってジャンクでゲロゲロ吐いてしまったんですね。そこで社長さんは「バカ野郎!つかえない女だ。お前の会社は主幹事クビだ!」とキレてしまった訳です。
彼女から涙ながらの報告を受けてロンドンのボスは「オール・ハンズ・オン・ザ・デッキ」、つまり総力臨戦態勢を宣言、兎に角次の寄港地である東京で挽回する厳命が下ったわけです。
「まずはサクラだな。」僕はすぐに東京オフィスに電話を入れて東京のロードショウが盛況に見えるようにサクラ(つまり見せかけの観客)をかき集めるように頼みました。そして陰鬱な気持ちでユナイテッドの成田便に乗り込んだわけです。
僕の勤める投資銀行は或るラテンアメリカの建設会社の公募増資を仕切っていて、おりしもグローバル・ロードショウがシンガポールを皮切りに開始されたばかりでした。グローバル・ロードショウというのはサーカスの興行よろしく株を発行する企業の経営者が世界各地を「巡業」し、株を買ってくれそうな機関投資家を回って歩くことを指します。発行企業の社長と財務部長、そして投資銀行からは担当法人マンが随行します。
この建設会社は或る中米の国の政府がお手軽にインフラ拡充を図る便法として高速道路のコンセッションを払い下げるのにどんどん応札し、自前の資金で建設を推し進めていました。普通なら国の負担としても背負い切れないような巨額の工事費を一企業が立て替えるわけですからどれだけ金があっても足りません。借り入れ金は勿論のこと、バランスシートの補強の為の増資は不可欠。そういうわけでこの企業は投資銀行にとっては「鴨が葱背負って来た」ようなオイシイお客さんです。
ところがロードショウ・チームがシンガポールから香港に北上したところでこのお客さんの機嫌を損ねる事件が起ってしまったのです。そもそも香港の投資家説明会が不入りで社長さんの機嫌が悪かったところに夜、ヴィクトリア・ハーバーをジャンク(帆船)に乗ってクルーズするカクテル・パーティーを催したのですが、その席で我々の担当法人マン、ロザリンさん(新婚ホヤホヤのアメリカン・チャイニーズで大変感じの良い方でした)が過労と船酔いで参ってしまってジャンクでゲロゲロ吐いてしまったんですね。そこで社長さんは「バカ野郎!つかえない女だ。お前の会社は主幹事クビだ!」とキレてしまった訳です。
彼女から涙ながらの報告を受けてロンドンのボスは「オール・ハンズ・オン・ザ・デッキ」、つまり総力臨戦態勢を宣言、兎に角次の寄港地である東京で挽回する厳命が下ったわけです。
「まずはサクラだな。」僕はすぐに東京オフィスに電話を入れて東京のロードショウが盛況に見えるようにサクラ(つまり見せかけの観客)をかき集めるように頼みました。そして陰鬱な気持ちでユナイテッドの成田便に乗り込んだわけです。
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ブラジルは今、中国からの資源の引き合いで大変潤っています。でも今後、もっと中国と大々的に商売するためには今、ボトルネックになっている社会資本(インフラ)の充実を図る必要があると声高に主張されています。そこでそれらの建設にターボ・チャージをかける「必殺技」としてPPP(パブリック・プライベート・パートナーシップ)という手法を採用してゆこうという動きがあります。このPPPに関する記事を目にするたびに僕は六本木の夜に風に吹かれる桜の花びらのように舞った50ドル札のイメージに苛まれるのです。
その話に入る前にPPPという手法を簡単に説明したいと思います。普通、高速道路の建設や港湾施設の整備は国庫から賄われるのですが、政府の予算が限られていて、かつ、民間からは道路を整備して欲しい、或いは港を整備して欲しい、という声が強く寄せられる場合があります。「なんだったらオレたち民間で金だしてもいいから」という話になる場合もあるでしょう。このように公共性の高い社会インフラを民間にコンセッションという形で払い下げ、民間企業はその工事費を負担する見返りとして独占的に通行料を取る権利を得る、これが大まかなPPPの仕組みです。
その話に入る前にPPPという手法を簡単に説明したいと思います。普通、高速道路の建設や港湾施設の整備は国庫から賄われるのですが、政府の予算が限られていて、かつ、民間からは道路を整備して欲しい、或いは港を整備して欲しい、という声が強く寄せられる場合があります。「なんだったらオレたち民間で金だしてもいいから」という話になる場合もあるでしょう。このように公共性の高い社会インフラを民間にコンセッションという形で払い下げ、民間企業はその工事費を負担する見返りとして独占的に通行料を取る権利を得る、これが大まかなPPPの仕組みです。