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2005/07/31のBlog
[ 22:00 ]
[ ネットの話題 ]
要約
いささか刺激的なタイトルだが、これは、2005年6月、日本のブログを席巻したミーム(meme)、「Musical Baton」の観測記録である。このミームがブロガーの間にどのように広がっていったのかを、観測データから明らかにする。この記録は、個人的な忘備録である。
プロローグ
ミーム(Meme)とは、ギリシャ語の「模倣(mimeme)」から造られた造語で、人間の心を媒介として伝達し、模倣され、あるいは、変異しながら増殖し、広がっていく情報のことを言う。また、その様をウィルスに例えて、マインドウィルスともいう。マインドウィルスは、人と人とのコミュニケーションによって感染し、人の心に作用して喜びや悲しみや感動や悲嘆など、人の心に影響を及ぼす。そして、その人の行動に影響を与える。このウィルスに感染すると、人は、更により多くの人々の間にこのウィルスを感染させるべく振舞うようになる。よくできたミームは、人々の間で容易に伝達され、急速に拡大して増殖する。
経過
5月9日、一人のアメリカ人が、友人の勧めで「このミームがどのように広がるかを見てみたい」との動機から、音楽に関する4項目のアンケートをブログに書き込む。そしてお互いに面識の無い5人を次の回答者に指定。(もっと古いものもあるようだが、それは今回のミームの直接の祖先では無いと思う)。ミームのタイトルは、ずばり、
「Music Victim Meme」
である。Victimとは、犠牲者、被害者のこと。しかし、このミームは、あまり流行しなかった。5月12~13日頃、タイトルが「Musical Baton」に変わり、15日頃から爆発的な感染力を得ることになる。英語圏でのピークは、18日である。4日でピークに達している(写真左のピーク---グラフは、BlogPulseから)。
英語圏でピークの5月17日頃、このミームが日本人に渡される。だが、それは6月8日まで放置されることになる。6月8日、このミームが日本語に翻訳され回される。だが、ここでも初期段階では流行しなかった。感染力を得たのは、6月12日頃以降である。途中何度か足踏みしながら増殖し、6月22日頃、日本でのピークを迎える(写真右のピーク)。
(つづく)
心を操るウィルス「Musical Baton」ミームの感染記録(2)
心を操るウィルス「Musical Baton」ミームの感染記録(3)
心を操るウィルス「Musical Baton」ミームの感染記録(4)
心を操るウィルス「Musical Baton」ミームの感染記録(5)
いささか刺激的なタイトルだが、これは、2005年6月、日本のブログを席巻したミーム(meme)、「Musical Baton」の観測記録である。このミームがブロガーの間にどのように広がっていったのかを、観測データから明らかにする。この記録は、個人的な忘備録である。
プロローグ
ミーム(Meme)とは、ギリシャ語の「模倣(mimeme)」から造られた造語で、人間の心を媒介として伝達し、模倣され、あるいは、変異しながら増殖し、広がっていく情報のことを言う。また、その様をウィルスに例えて、マインドウィルスともいう。マインドウィルスは、人と人とのコミュニケーションによって感染し、人の心に作用して喜びや悲しみや感動や悲嘆など、人の心に影響を及ぼす。そして、その人の行動に影響を与える。このウィルスに感染すると、人は、更により多くの人々の間にこのウィルスを感染させるべく振舞うようになる。よくできたミームは、人々の間で容易に伝達され、急速に拡大して増殖する。
経過
5月9日、一人のアメリカ人が、友人の勧めで「このミームがどのように広がるかを見てみたい」との動機から、音楽に関する4項目のアンケートをブログに書き込む。そしてお互いに面識の無い5人を次の回答者に指定。(もっと古いものもあるようだが、それは今回のミームの直接の祖先では無いと思う)。ミームのタイトルは、ずばり、
「Music Victim Meme」
である。Victimとは、犠牲者、被害者のこと。しかし、このミームは、あまり流行しなかった。5月12~13日頃、タイトルが「Musical Baton」に変わり、15日頃から爆発的な感染力を得ることになる。英語圏でのピークは、18日である。4日でピークに達している(写真左のピーク---グラフは、BlogPulseから)。
英語圏でピークの5月17日頃、このミームが日本人に渡される。だが、それは6月8日まで放置されることになる。6月8日、このミームが日本語に翻訳され回される。だが、ここでも初期段階では流行しなかった。感染力を得たのは、6月12日頃以降である。途中何度か足踏みしながら増殖し、6月22日頃、日本でのピークを迎える(写真右のピーク)。
(つづく)
心を操るウィルス「Musical Baton」ミームの感染記録(2)
心を操るウィルス「Musical Baton」ミームの感染記録(3)
心を操るウィルス「Musical Baton」ミームの感染記録(4)
心を操るウィルス「Musical Baton」ミームの感染記録(5)
[ 21:00 ]
[ ネットの話題 ]
心を操るウィルス「Musical Baton」ミームの感染記録(1)
ミームの呼び名
このミームは、タイトルが途中で変異し、「Music Victim Meme」、「Musical Baton」、「Music Baton」、「ミュージカルバトン」などいくつかの別名を持つが、ここでは、ミーム「Musical Baton」と呼ぶことにする。
感染の定義
ミーム「Musical Baton」を受け取り、質問に回答したものを「感染した」とする。そして、次の回答者を指定したものを「感染を拡大させた」とする。
感染拡大の仕掛け
ミーム「Musical Baton」が感染を爆発的に拡大する仕掛けは、バトンを次の5人に渡すところにある。数学上の計算では、ある時点の感染数は、nを回数とすると、
総感染数 = Σ5^n
になる。例えば、nが増えるに従って、
5->30->155->780->3,905->1万9,530->9万7,655->48万8,280->2,44万1,405
となり、n=12で日本の人口をはるかに超える。これをネズミ算といい、これを商売(?)に利用したのが、ねずみ講やマルチ商法だ。
ところが実際には、指定された5人が次の人に渡すとは限らず、また、渡された人が応じるとは限らないため、計算どおりにはならない。では実際はどのように感染が拡大したのだろうか。これを明らかにするのが、本稿の主な目的である。
感染数の推定方法
ミーム「Musical Baton」に日本のブロガーがどれほど感染したのかを知ることは出来ない。推定以外に方法は無い。そこで、以下の推定方法をとることにした。
まず、全体の感染数は、Googleの検索結果の最大値を採用した。Googleを採用した理由は、「日本語の検索数」を得ることができるからだ。YahooもGoogleとほぼ同じような検索数を返すが、日本語の検索結果だけを分離するのが難しい。また、MSNは、検索結果数が明らかに少ない。そこで、Googleを使うことにした。検索式は以下のとおりである。
"musical baton" | "music baton"| "ミュージカルバトン"
Googleのフレッシュクローラは、割と頻繁にブログを回っており、ほぼ1~2日前の結果を知ることができる。そこで、Googleでの毎日の検索結果数の最大値を記録した。
雑音の除去
検索結果の中には、感染したものでは無い結果が含まれている可能性がある。そのため、検索結果上位約1,000件の中から、ランダムにサンプル(サンプル数は、毎回不定)を抽出し、感染したものでは無いページが含まれていないかを統計的に検査した。
雑音があるのは、上位10件程度であった。これは、「Musical Baton」そのものを解説したページなどである。その他のページは、サンプルとして調査した範囲では、すべて感染ページであった。したがって、説明ページなど雑音ページの数は、感染全体の数に較べて相対的に極めて少ない。そのため、検索結果数をすべて感染数とすることにした。
Googleの検索結果数が、実際の感染数とはいえない。Googleがすべての感染ページをクロールしているとは限らないからだ。Googleがどの程度カバーしているのか、これは、わからない。従って、実際の感染数は、Googleの検索結果数よりも多いと考えられるが、わからないものは推定できないので、Googleの検索数を感染数とした。
その結果、感染数の期間中の最大値は、136万であった。
トレンドの推定
全体の感染数はGoogleで得られるが、日々の感染数をGoogleから得るのは難しい。そこで、日々のブログの検索結果を得られる blogWatcher の検索結果をトレンドとして採用した。blogWatcherは、日本のブログに特化しており、RSSやPingではなく、ページのテキストそのものを回収している。
ただし、blogWatcherがクロールしている範囲は、非常に狭い。毎日の数でせいぜい50以内である、そこで、他のブログ検索も参考にし、blogWatcherでのトレンドと比較して、どれもほぼ似たようなトレンドを返すことを確認した。
blogWatcherでの検索キーワードは、
「musical baton」
のみとした。他のキーワードも同様のトレンドを返すからである。
blogWatcherによる日々の検索数から、トレンドのアウトライン(エンベロープ)を作成し、この範囲に含まる領域の積分値が、Google検索での最大検索結果数に等しいものとして、日々の値を割り振った。その結果が写真の図である。横軸が日数、縦軸が感染数である。
6月13日から始まり22日に最大感染数を記録。その数は、1日の感染数が、20万弱であった。23日以後は急速に減少し、28日で観測を打ち切った。
(つづく)
心を操るウィルス「Musical Baton」ミームの感染記録(3)
心を操るウィルス「Musical Baton」ミームの感染記録(4)
心を操るウィルス「Musical Baton」ミームの感染記録(5)
ミームの呼び名
このミームは、タイトルが途中で変異し、「Music Victim Meme」、「Musical Baton」、「Music Baton」、「ミュージカルバトン」などいくつかの別名を持つが、ここでは、ミーム「Musical Baton」と呼ぶことにする。
感染の定義
ミーム「Musical Baton」を受け取り、質問に回答したものを「感染した」とする。そして、次の回答者を指定したものを「感染を拡大させた」とする。
感染拡大の仕掛け
ミーム「Musical Baton」が感染を爆発的に拡大する仕掛けは、バトンを次の5人に渡すところにある。数学上の計算では、ある時点の感染数は、nを回数とすると、
総感染数 = Σ5^n
になる。例えば、nが増えるに従って、
5->30->155->780->3,905->1万9,530->9万7,655->48万8,280->2,44万1,405
となり、n=12で日本の人口をはるかに超える。これをネズミ算といい、これを商売(?)に利用したのが、ねずみ講やマルチ商法だ。
ところが実際には、指定された5人が次の人に渡すとは限らず、また、渡された人が応じるとは限らないため、計算どおりにはならない。では実際はどのように感染が拡大したのだろうか。これを明らかにするのが、本稿の主な目的である。
感染数の推定方法
ミーム「Musical Baton」に日本のブロガーがどれほど感染したのかを知ることは出来ない。推定以外に方法は無い。そこで、以下の推定方法をとることにした。
まず、全体の感染数は、Googleの検索結果の最大値を採用した。Googleを採用した理由は、「日本語の検索数」を得ることができるからだ。YahooもGoogleとほぼ同じような検索数を返すが、日本語の検索結果だけを分離するのが難しい。また、MSNは、検索結果数が明らかに少ない。そこで、Googleを使うことにした。検索式は以下のとおりである。
"musical baton" | "music baton"| "ミュージカルバトン"
Googleのフレッシュクローラは、割と頻繁にブログを回っており、ほぼ1~2日前の結果を知ることができる。そこで、Googleでの毎日の検索結果数の最大値を記録した。
雑音の除去
検索結果の中には、感染したものでは無い結果が含まれている可能性がある。そのため、検索結果上位約1,000件の中から、ランダムにサンプル(サンプル数は、毎回不定)を抽出し、感染したものでは無いページが含まれていないかを統計的に検査した。
雑音があるのは、上位10件程度であった。これは、「Musical Baton」そのものを解説したページなどである。その他のページは、サンプルとして調査した範囲では、すべて感染ページであった。したがって、説明ページなど雑音ページの数は、感染全体の数に較べて相対的に極めて少ない。そのため、検索結果数をすべて感染数とすることにした。
Googleの検索結果数が、実際の感染数とはいえない。Googleがすべての感染ページをクロールしているとは限らないからだ。Googleがどの程度カバーしているのか、これは、わからない。従って、実際の感染数は、Googleの検索結果数よりも多いと考えられるが、わからないものは推定できないので、Googleの検索数を感染数とした。
その結果、感染数の期間中の最大値は、136万であった。
トレンドの推定
全体の感染数はGoogleで得られるが、日々の感染数をGoogleから得るのは難しい。そこで、日々のブログの検索結果を得られる blogWatcher の検索結果をトレンドとして採用した。blogWatcherは、日本のブログに特化しており、RSSやPingではなく、ページのテキストそのものを回収している。
ただし、blogWatcherがクロールしている範囲は、非常に狭い。毎日の数でせいぜい50以内である、そこで、他のブログ検索も参考にし、blogWatcherでのトレンドと比較して、どれもほぼ似たようなトレンドを返すことを確認した。
blogWatcherでの検索キーワードは、
「musical baton」
のみとした。他のキーワードも同様のトレンドを返すからである。
blogWatcherによる日々の検索数から、トレンドのアウトライン(エンベロープ)を作成し、この範囲に含まる領域の積分値が、Google検索での最大検索結果数に等しいものとして、日々の値を割り振った。その結果が写真の図である。横軸が日数、縦軸が感染数である。
6月13日から始まり22日に最大感染数を記録。その数は、1日の感染数が、20万弱であった。23日以後は急速に減少し、28日で観測を打ち切った。
(つづく)
心を操るウィルス「Musical Baton」ミームの感染記録(3)
心を操るウィルス「Musical Baton」ミームの感染記録(4)
心を操るウィルス「Musical Baton」ミームの感染記録(5)