2005/10/09の記事
第2部:温暖化の目撃者たち
世界の各地で起きている温暖化の影響を実際に目撃・体験されている方々に、ご発表いただきました。

ネパールでトレッキング・ガイドをなさっているノルブ・シェルパさん。

1985年に起きた氷河湖(氷河が溶けてできた湖)が決壊し、シェルパさんのお宅はもちろん、家畜も土地も全てが流されてしまいました。おぼれて死んでいく家畜を目の前にしても、ただ立ち尽くすしかできなかった2時間を、最悪の時間だったとおっしゃっていらっしゃいました。トレッキングガイドの仕事を始め、20年かかってようやく生計を立て直すことができたのだそうですが、ネパールには20年前と同じように決壊する恐れがある氷河湖があり、とても不安な毎日を過ごされているそうです。ネパールの人たちは、「温暖化を加速させるような生活はほとんど行っていないのに…今、私にできることはただ祈るだけです」という言葉が印象的でした。

フィジー諸島のカバラ島で暮らされているペニーナ・モーゼさん。

「カバラ島を訪れる観光客は「楽園」を称されるそうですが、石灰岩でできた島であり、川がないため飲み水は雨に頼っています」というお話から始められたモーゼさん。農業を行える場所も限られているそうです。島に現れている異変として、海面の上昇により沿岸地域が侵食されているというお話がありました。島民は満潮時の海面より1メートルほど高い場所に住んでいるので、住む場所が限られてきてしまっており、現在学校が建っている場所が危険に脅かされているそうです。また、さんご礁が白くなってきているという異変、乾燥期が長くなり雨が少なくなってしまったため、キャツサバやサツマイモなどを育てる水が足りず、しおれてきてしまっている異変、また水不足の中、喉を潤すために重要なココナッツの実も、熟す前に実が木から落ちてしまうという異変などをお話してくださいました。カバラ島の皆さんは、当初これらの異変を「神の意志」と考え、信仰を試されているのだと考えられたそうです。現在は人間が原因の異変であることを知り、その上で「人間が原因であるからこそ、人間の力で食い止めることができると信じている」とおっしゃった言葉が胸に響きました。

北極圏における気候変動に影響を記録するために設立された、北極圏I.CC.Eプロジェクト代表のマリン・ジェニングスさん。

たくさんの北極圏の写真を用いて、イヌイットの人々の生活、グリーンランドの様子などのお話をしてくださったジェニングスさん。北極に関するイヌイットの人々の知識はすばらしく、研究者の人たちをも圧倒するほどなのだそうですが、その1000年の歴史を持つイヌイットの人々の生活が、温暖化の影響によって脅かされているのだそうです。狩猟を生きる糧としているイヌイットの人々ですが、冬期が短くなっていることで狩猟が行える時期も短くなっており、現在は30~40名程度しか狩猟だけで自給自足の生活が行えている人はいないそうです。食料不足による餓死なども起きており、それらの生活もあと5~10年の間に失われてしまうと言います。ほかに永久凍土の融解によって地盤がゆるゆるになってしまった様子や、ホッキョクグマが陸の上で生活し痩せてきてしまっていることなどをお話してくださいました。

第3部:パネル討論
司会に船木成記さん((株)博報堂)、パネリストとして明日香壽川さん(東北大学)、鮎川ゆりかさん(WWFジャパン)、辰野勇さん((株)モンベル)、原沢英夫さん(国立環境研究所)、村山貢司さん(気象業務支援センター)に登壇いただき、パネル討論が行われました。

それぞれの見地からの情報や意見をご発表頂き、2℃未満という目標に対する確認が行われた後の討論では、京都議定書の後の「長期目標の作成と共有」が必要であるということや、地球に優しい商品やフェアトレードによる商品などを理解し選択するという消費者意識の向上の必要性、経済的な指標だけでなく“幸せ”という「価値観」を持つ重要性、世界で起きている温暖化の影響を身近な問題として捉え、数十年後に何が起きかと考える「想像力」の必要性などの意見が交わされました。

先進国であり、今までたくさんのCO2を排出してきた日本。これからどのようにエネルギーを作り、使ってゆくかは、大きな課題であるとされました。また、その中で具体的に何ができるのか、何をするべきかについては個人が考え、選択してゆく必要があり、それは国の政策や企業活動に影響を及ぼす一歩となること。森を育てる、海を守る、必要なときに必要な分だけを使うという省エネへの気づかい、その一人ひとりの行動が集まれば、大きな力となること。それらが改めて確認されました。

討論の最後に、WWFジャパンの鮎川さんがおっしゃった言葉は「まずはこの問題を、多くの人に伝えて欲しい」というものでした。口頭でも、ブログを使ってでも良いのではないでしょうか?日本で起きている事象、海外の報告者の切実な現状、少しでも多くの人に知っていただけたらな、と思います。(3)

【関連記事】
・ WWFシンポジウム「温暖化の目撃者たち」開催(1)


10月8日(土)、WWFジャパン・シンポジウム「温暖化の目撃者たち」が開催されました。その様子を、簡単にご紹介させていただきます。
まずイントロダクションとして、鮎川ゆりかさん(WWFジャパン)より「「温DOWN化計画」について-地球温暖化は2℃未満に」というスピーチがありました。2℃未満に押さえる必要性を強く感じるメッセージでした。

第1部:「日本が感じた温暖化」
「身近で感じた温暖化ストーリー」の概要と成果発表として、身近で感じた事務局(NTTデータ経営研究所・溝内辰夫)より、本ブログに皆さんからTB等でお寄せいただいた情報や、モブログワークショップの事例を中心に報告させて頂きました。

その後の「私の温暖化ストーリー」では、3名の方に発表いただきました。

宮城県で12年前から有機米作りを手がけていらっしゃる、佐々木勝夫さん。

お米作りにおける温暖化の影響として、冷害によって実がつかなくなるという不稔障害のお話や、ここ5、6年カメムシが多くなったというお話をしてくださいました。また、おいしいお米を作るためには、ある程度の低い温度でじっくりと育てることが大切なので、このまま気温が上昇してしまうとお米の産地が、北上するのではないかという懸念があることを発表されていました。

大分県で、NPO法人地域環境ネットワークの代表をされている、三浦逸朗さん。
今回は福岡県に事務所を置く「あだると山の会」の皆さん、大分県で宮大工をなさっている佐藤さんの感じられた温暖化目撃レポートをあわせてお伝えしてくださいました。

「あだると山の会」の皆さんからは、「ミヤマキリシマ」の開花時期が早まっているというお話や積雪量が減っているというお話などが寄せられました。

宮大工の佐藤さんからは、大分県に上陸する台風の数が増えたというお話や、その台風の影響によって「肌離れ」という現象が木に発生するというお話などが寄せられました。

和菓子の老舗、虎屋の渡部さん。

寒天は冬場に屋外で作るそうなのですが、気温が低くないとよい品質のものができないそうで、以前は寒天づくりに適した日が年間90日ほどあったのに、現在は75日程しかないというお話を伺いました。また、秋の和菓子作りに欠かせない栗も、台風の影響によって栗の木にダメージが発生しており、良い栗を手に入れるのが大変なのだそうです。他にも葛や黒砂糖を得るためのサトウキビなど、和菓子作りに必要ないろいろ材料に、温暖化の影響を感じていらっしゃるそうです。

皆さんの発表後、日本という身近なところで起きている温暖化の影響について、国立環境研究所の原沢さんに解説いただきました。

日本への台風の上陸は、平均2.7個、最大6個であったのに、昨年は10個が上陸したことや、ヒダカソウやブナ林を事例とした植物への影響などをお話いただきました。

気温の上昇は、最高気温よりも最低気温の上昇の方が先に訪れるものなので、低い温度だからこそできていた、ということに影響が出やすいのだそうです。

温暖化の影響に関する研究者でいらっしゃる原沢さんですが、私達、一般の人たちにできることとして、身近な変化を観察し、それをぜひ報告して欲しいとおっしゃっていらっしゃいました。

つづく

【関連記事】
・ WWFシンポジウム「温暖化の目撃者たち」開催(2)


2005/10/08の記事
温DOWN化計画」(財団法人水と緑の惑星保全機構、エコロジー・オンライン、WWFジャパン、株式会社NTTデータ経営研究所、株式会社NTTデータ)では、「温暖化の目撃者たち」と題し、シンポジウムを開催いたします。

温DOWN化計画」では、“温暖化は、今まさに深刻化しつつある緊急の問題である”ことを訴えてきました。このシンポジウムも、その一環として開催させて頂くものであり、これを通して、私たちに何ができるのかを考えるきっかけをご提供できればと考えております。皆様のご参加を心よりお待ちしております。
詳細ページ

 WWFシンポジウム 「温暖化の目撃者たち」
●日時 2005年10月8日(土) 11:00~17:30(10:30受付開始)
●場所 浜離宮朝日ホール・多目的ホール
 東京都中央区5-3-2 朝日新聞東京本社新館2F
●規模 300名
●参加費 無料

●主催 WWFジャパン(財団法人 世界自然保護基金ジャパン)
●共催 「温DOWN化計画」(財団法人水と緑の惑星保全機構、エコロジー・オンライン、WWFジャパン、株式会社NTTデータ経営研究所、株式会社NTTデータ)
●協賛 丸紅株式会社
●後援 環境省
●協力 朝日新聞社

 主な内容
開会のご挨拶
 日野 迪夫(WWFジャパン 事務局長)

イントロダクション:WWFジャパンからのメッセージ
 「温DOWN化計画」について-地球温暖化は2℃未満に
 鮎川 ゆりか(WWFジャパン 気候変動担当シニア・オフィサー)

第1部:日本が感じた温暖化
 「身近で感じた温暖化ストーリー」の概要と成果
 溝内 辰夫(株式会社NTTデータ経営研究所 環境戦略コンサルティング本部 チーフ・コンサルタント)
 
 私の感じた温暖化ストーリー
 ・佐々木 勝雄(大平農場 代表取締役)
 ・三浦 逸朗(NPO法人 地域環境ネットワーク 代表)
 ・渡部 史朗(株式会社虎屋 資材部 部長)

 専門家からのコメント
 原沢 英夫(国立環境研究所 社会環境システム研究領域 領域長)

第2部:温暖化の目撃者たち
 ネパールからの証言 ~ヒマラヤの氷河融解が意味するもの~
 ノルブ・シェルパ
 +ネパール・氷河湖に関するビデオ上映
 解説:小西 雅子(WWFジャパン 気候変動担当オフィサー)

 南太平洋フィジー島からの証言 ~海面上昇だけでない影響~
 ペニーナ・モーゼ

 特別ゲスト:北極圏におjける温暖化 ~脅かされるイヌイットの生活~
 マリン・ジェニングス(北極圏ICCEプロジェクト代表)

第3部:パネル討論
 目撃者たちのお話を受けて、専門家を交えてのディスカッション

 司会:船木 成記(株式会社博報堂 アカウント・スーパーバイザー)
 パネリスト:
 明日香 壽川(東北大学 教授)
 鮎川 ゆりか(WWFジャパン 気候変動担当オフィサー) 
 辰野 勇(株式会社モンベル 代表取締役社長)
 原沢 英夫(国立環境研究所 社会環境システム研究領域 領域長)
 村山 貢司(気象業務支援センター 専任主任技師)
 (アイウエオ順)

閉会のご挨拶
 岡安 直比(WWFジャパン 自然保護室 室長)

※最新の情報は、随時アップデートしていきます。こちらのページをご確認ください。

 お申込み・お問合せ
参加をご希望の方は、こちらのページのお申込み欄をご覧ください。





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