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2008/05/29のBlog
過酷な環境下では、人も動植物もたくましくならざるを得ない。 大地に根をしっかり下ろし、がっぷりよつの息の抜けない毎日だろう。 しかし生きるためには最善を尽くす。 風が強ければ強いほど、吹き飛ばされないよう歯ぎしりしながら立ち向かっているのだ。 太い根は大地にしっかり食い込んで、養分を吸い上げ、やがて甘い香りの果実を実らせる。

アダンの木はパイナップルに似た実をつける。 近づくと顔が緩むほどのやさしい香りを、周囲に振りまく。 なにもこんな風の止まない崖っぷちに生きていることはないだろうに。 鳥がアダンの種を運んだのだ。 御神崎では甘さと辛さの両方が味わえる。

崎枝地区のど真ん中を通り抜け、県道79号線にぶつかったら右に曲がり、再び湾岸道路へ戻る。 名蔵湾で車を止め、釣り糸を垂らしていたら、見知らぬおじさんが近づいて来た。 釣りのこと、本土からの移住者のことを話し始めた。 東京生活30年以上のおじさんはここへ引っ越して何年経つのだろうか。 先月久し振りに東京へ出掛けたそうだ。

「銀座をもう歩けないねぇ。 せかせかしててさ、ここでの生活を味わったら、もう戻れないよぉ。」
「あそこに住んでいたら人間の命を縮めちゃうよ。」
「母親を呼んで、毎日太公望ですよ。 はははははぁ~。」
陽に焼けた真っ黒な顔に歯が白い。

見ているだけではもの足らなくなったらしく、今朝の収穫(サヨリ)を見せてくれ、それから自分も釣りを始めた。 2投目で早速ゲット! 3投目で2匹目! まいった、まいった。 こちらはお先に退散と決めた。 とうに時計は1時を回っていた。

今朝から昼食はここと決めていた『舟蔵の里』へ車を飛ばす。 敷地内に大人カフェ『ぼーとすてーしょん』(ひらがなで)がある。 木立に囲まれたシックなカフェは結構な穴場である。 案の定、店内には誰もいなかった。 

20年前一坪2000円にも満たない時、この当たり一帯を購入したという熊本出身のオーナーと話をした。 彼の嗜好に合わせて店内にはジャズが流れていた。 真っ昼間だというのに薄暗い。 日野皓正が彼に呼ばれてやって来て、目の前の野外ステージでセッションを開いたそうだ。 ライトアップされた夜のカフェにもう一度足を運びたいと思った。

イカスミじゅうしい(イカスミの炊き込みごはん)と島豆腐のレアチーズ・長寿草ソースがけを注文した。 今日はもう誰にも会わないから、お歯黒になるのは覚悟のオーダーである。 新鮮なイカスミ独特のコクがうまく引き出され、記憶に残る一品だった。 食事の後は熱帯の石垣らしい庭園をぶらぶら、さらに防風林を越えて海岸まで散歩した。

宿に帰りひと休み、いやひと眠り。 目が覚めて、まだぎらぎらに明るい港へ釣りに出掛けた。 5時を過ぎる頃からダイビングやツアーに出掛けていたクルーザーがフルスピードで次々戻ってくる。 大人だってしっかり遊ばなくっちゃ。 そんなに急がなくても、また明日もいい天気。

波頭でのんびり「どぼん釣り」。 餌は『海の総合スーパー島』へ行けばひと袋たったの100円で売っている。 これがちょうどいいところにあるので、滞在中に何度も通った。

海をまぶしくてらしていた太陽が次第に色を変え始め、やっと帰り支度を始める。 まだ夕方だと思って時計を見ると、この明るさで7時は回っていた。 遊び呆けたこどものように、空きっ腹を抱えて戻った。
[ 10:59 ] [ 旅行(Travel) ]
デイゴの花が咲いていた。 青い空に力強く咲いていた。 風を防ぐ木の陰にテッポウユリの群生が広がる。 優しい桃色のじゅうたんは音符のように、しなやかに風に舞う。

♪ゆらゆらhttp://jp.youtube.com/watch?v=IoUNlLIr7pg&feature=related
多和田えみ(http://www.techesko.com/index.html)の楽曲にのせて、ゆらゆら風を誘う。 ゆらぁ~ゆらぁ~、ゆらぁ~ゆらぁ~♪♪♪

しかし東シナ海から吹き上げる風は一時も容赦なく吹き付け、長年の間に木はこうして適応した姿となって生き延びる。 御神崎灯台に生息する植物は毎日が命がけだ。 風に負けないで生きている。
ちぎれそうに風にたなびく葉が健気だ。 風に立ち向かうというより、風をやり過ごしてしなやかに生存している勇姿にも見えてくる。 がんばれっ! 思わずそんな言葉もかけたくなる。
岬の突端にかつては巨大であったであろう岩が、浸食を受けえぐられた姿をさらしている。 岩へ吹き付ける風の姿をとらえることは出来ないが、岩に砕ける風の泣き声が聞こえるだろうか。 ゴォーゴォーともビュービューとも、あるいはヒュルルーヒュルルーとも聞こえてくる。
はるか足元には砕け散る白いしぶきが自然の過酷さを叫んでいる。 この岬の先でかつて遭難した船があり、その慰霊碑が建っている。 荒波と強風に顔を向け、手を合わせる観音像もすっくと立っていた。 御神崎は神の宿る岬なのだろう。
2008/05/27のBlog
[ 20:19 ] [ 旅行(Travel) ]
石垣から帰って10日余り、あれっ?腕の皮が剥けだした。 夏が来る前に早くも一皮剥けそうだ。 あれだけ陽に焼けたのだから当たり前だと納得する。

旅から帰って、沢木耕太郎の深夜特急を読み始めた。 香港・マカオ、マレー半島・シンガポール・・・一度足を運んだところはそうだそうだと快調に読み進む。 再び旅に出たような気分に浸る。 26歳だった沢木が放浪した旅の集大成6冊を読み終える頃、私もやっと何か気が付くことがあるだろう。

島の約90%が亜熱帯のジャングルに覆われ、仲間川をはじめ大小の川と奥には表情の異なる美しい滝が出迎えてくれる。 河口から10km辺りまでは汽水域で、その辺りにマングローブの森が広がっている。 その森は珍しい動植物の住む自然の宝庫となっている。

島東部に位置する由布島は干潮時には西表と陸続きとなる。 島全体が亜熱帯の植物園となっている、緑豊かな楽遠だ。 タイ・サムイ島で見たのと同じ樹木を見つけた。 天へ向かって真っ直ぐに伸びるこの木の名は知らないが、友人と再会したかのような懐かしい嬉しさが込み上がる。

島へ出向く前に、相当の蒸し暑さを覚悟して行ったが、拍子抜けするほどの涼しさだった。 むしろ長袖を持って来なかったことを後悔した。 梅雨直前の気候は湿度が低く、からっとして過ごしやすい。

次の日、島の残り半分を走破することにした。 石垣タウンを通り抜け西へ西へ、具志堅用高記念館を右に見てビーチ沿いの道を走る。 ぶらりと浜辺へ車を寄せれば絶好の釣り場が至る所に見つかった。 シメシメである。 

途中途中の観光スポットがあっという間に目線から消え、観音崎からは北へと道が続く。 やがて県道79号線と合流し、名蔵湾岸道路へとなる。 湾岸道路は名蔵湾をぐるりとなぞるように続く。 マンタの名所らしいが腕ほどのサヨリもかなり釣れるらしい。 名蔵地区には内地からの移住者、特に北海道からの移住者が多い。 海沿いの山の中腹には赤煉瓦の家々が並んでいた。

県道79号線から左に進む。 右へ道路を取れば、この間行った川平湾まであっという間に到着だ。 御神崎灯台を目指し屋良部岳の裾野に続く道を進む。

御神崎は夕景のビュースポットだ。 真っ赤な大きな太陽がゆっくりと東シナ海へ沈む。 と同時に、島人にとっては船旅の安全を祈願する場所としても知られている。
灯台へ続く坂道の海側には、一面の花のじゅうたんが出迎えてくれる。 海から吹き上げる風が一段と強い。 目を開けられない。 息も出来ない強風だ。 背の低いこの花が唯一、過酷な自然のこの地に安らぎの空間を与えている。 どんなに風が強かったか・・・今は思い出せない。 この写真からは思い出せない。
2008/05/26のBlog
[ 17:23 ] [ 旅行(Travel) ]
沖縄県の本島に次いで2番目に大きい島、石垣島から高速船で約40分。 到着した西表島は約90%が亜熱帯のジャングルに覆われている。 仲間川をはじめ大小の川、さらに奥へ進めば表情の異なる美しい滝が出迎えてくれる。 河口から10km辺りまでは汽水域で、その一帯にマングローブの森が広がっている。 森は珍しい動植物の住む自然の宝庫となっている。

島へ出向く前に、相当の蒸し暑さを覚悟して行ったが、拍子抜けするほどの涼しさだった。 むしろ長袖を持って来なかったことを後悔した。 梅雨直前の気候は意外にもカラッと過ごしやすい。

虫食いの大きな葉を発見した。 この島には確かに生物がうじゃうじゃと潜んでいるような気がしてくる。
木漏れ日の恩恵を受けているのは島の生物だけではない。 生物である人間も、このありがたい木陰の下で、ほっとひと息つける。
島東部に位置する由布島は干潮時には西表と陸続きになる。 由布は島全体が亜熱帯植物園の緑豊かな楽園だ。 のんびりゆったり牛車に揺られて、海を渡る風に吹かれてみるといい。 10分もすれば島に到着する。

帰る時間までゆっくり島内の植物園を散策するもよし、水牛と記念写真もよし。 空にぽかりと浮かぶ雲のように、ゆるりとした時間が流れていく。

再びゴン太に引かれて、「安里屋ユンタ」を新本のおっちゃんといっしょに声を限りに歌いながら、西表へ帰ろう。

♪♪♪♪♪
サー君は野中の いばらの花か
 サァ~、ユイユイ
 暮れて帰れば ヤレホニ引き留める
 マタハーリヌ ツンダラカヌシャマヨー
2008/05/25のBlog
白保には柳田国男の碑が立っている。 四方を海に囲まれている日本人のルーツ説はいろいろ考えられているが、南方のこの地こそ日本人のルーツだと彼は考えた。 その昔美しい巻き貝が貨幣として重宝されていた。 その貝が今も多く生息しているのがこの八重山諸島だからだ。 実際に台湾からの移住者が石垣タウンの西側に固まって生活している。 彼らと同じように船でこの島にたどり着き、そのまま居座ったとしても不思議はない。

ぐるりと島を半周したのに疲労感がない。 絶えず迫り来る刺激的な景色と島の道路に信号が少ないからだろう。 市街地に入るまでは車にもほとんどすれ違わなかった。 この地にはめずらしい斬新なデザインの豪邸がぽつりぽつりと建っていた。 行き来しているうちにすっかり覚えた宿までの道、その両脇にもサトウキビ畑が広がっている。 ぶらりと夕方毎日のようにやって来ていたこの先の釣りのポイントには、数日前までソムリエの田崎真也がやって来て、3日連続で釣り糸を垂らしていたらしい。 40cm級の大物を釣り上げ大満足だったと、知り合いになった緑間(みどりま)さんが教えてくれた。

緑間さんは本当に面倒見がいい。 糸がもつれれば直してくれる。 釣り方の細かい指導もしてくれる。 餌でさえ自分の手を休めて付けてくれるのだ。 帰る当日の昼頃までこのポイントで釣り糸を垂らしていたら、竿2本を抱えてやって来た。

「今度いつ来る?」 「待ってるからねぇ。」 ゆるゆるの島訛りで、次は泊まれと言ってくれた。 ごつい手とギュッと握手して別れた。 「また来るさぁ~。」 車の窓を開けて手を振りながら語尾を上げて返事をした。 また会えるだろうという確信が別れの寂しさを吹き飛ばす。 きっとまた来る。 まだ知らないディープな島を味わいにまたやって来たいと思った。

ドライブの途中で見かけた豪邸はもしかすると田崎真也の家だったかも知れない。 島田紳助の別荘だったのかも知れない。 空港にはプライベートジェット、港には豪華なヨットも停泊していた。

前日申し込んだ西表島へのやまねこツアー出発のために、朝9時前に離島桟橋へやって来た。 静かな石垣だと思っていたのにどこから集まってきたのか大勢の観光客が待っていた。 それぞれに申し込んだ離島ツアーへ出発していく。

石垣から西表へ、仲間川を遊覧し、由布島へ牛車で渡り、島料理を食べ、温泉に入る。 西表まで行くなら滝のひとつでも見るのが妥当だろうが、日本最南端の温泉に入るもの一興ではないかと思った。 ダイビング用のウォータープルーフバッグにバスタオルと水着をぶち込んで、出発を今か今かと待っていた。

西表島大原港の桟橋で待っていたガイドは大型バスに乗れば運転手に変身し、リバークルーズに乗れば船長なり、それはそれは立て板に水を流すように流ちょうにガイドを始めた。 豊富な知識とたまにかますギャグに客は大喜びだ。 ヒルギ林や亜熱帯のジャングルを充分堪能できたのは彼のおかげだった。 これぞプロのガイドだと印象づけた彼のしゃべりは全く驚きの連続だった。 握ったマイクを最後に置くまで、名調子を続けた。
日本最大級のマングローブ林の中を流れる仲間川をボートで遊覧する。 ヒルギの大群落、途中には絶滅危惧種のヤエヤマヤシ、上流には板根で有名なサキシマスオウノキ群落がある。 カヌーで川を登れば亜熱帯広葉樹林の息吹をもっと間近に感じられる。
ヒルギ林の恩恵を受けているハゼや巨大なシジミ、ヤシガニなどに出会えるかも知れない。

亜熱帯と聞いて蒸し暑さは覚悟をして行ったが、どうしてジャングルの中もクルージングの間も風が強く、長袖が欲しいくらいだった。
2008/05/24のBlog
外が白々としてくる前に浴室へ向かう。 湯気がもうもうと立ち込め、まだ冷たいタイルに足を恐る恐る伸ばす。 毎度のことなのに湯温が定まらない。 熱すぎる湯が足先に触り思わず引っ込める。 白い湯気がもうもうと浴室に広がりはじめると、一気に朝がきた実感がしてくる。 さっぱりしてボディークリームを塗り、制汗剤をつけ、残り少なくなったコロンをスプレイする。 夏の新しい香りを買わなくっちゃ・・・そんなことを思いながら今日も一日がスタートした。

ひどくはないが雨の一日だ。 室内が寒いからパンでも焼くか。

オーブンを使えば部屋がすぐ暖まる。 ロイヤルミルクティーを作り、少し暖まった部屋で出来上がったばかりのパンを頬張る。 

雨の降る日は静かだ。 窓を閉めているから鳥のさえずりも聞こえてこない。 車も人通りも途絶え、何もかもが止まっているようだ。 先週までの石垣がウソのようだ。 絶えず鳴り響く風の音、目を閉じれば虫やカエルや牛の鳴き声が聞こえ、自然の息吹を身近に感じていた。 妙な安心感が心地よい眠けを誘う。 あのまどろみはここにはない。

国道390号線はカーラ岳付近ではマクラム道路と呼ばれる。 カーラ岳の裾野を真っ直ぐ南下すれば一気に白保まで到着だ。 白保の海には集落から極近いところに直径2~3mの巨大なアオ珊瑚群落がある。 ここの浜辺は砂浜ではないので海水浴には不向きだ。
浜は大小様々の珊瑚で覆い尽くされ、忘れたかのようにその間に貝殻がはさまっている。 波に洗われ珊瑚にこすれ、模様が消えかかっている。 箸置きにあれもこれも、浜辺の拾いものは安上がりで恰好の時間つぶしだ。 波の音を聞いても聞いても、何度耳にしても嫌だと思わないのはなぜだろう。 いつまでも打ち寄せる波景色を見ていたい。 島人も仕事帰りや休日には海辺へよくやって来る。 生活は海を中心に成り立っているのだろう。

再びヒルギ林にかかっている宮良橋を渡り、宿まで戻った。 数年前に訪れて過ごした石垣は一体何だったのだろう。 島のことを何一つ知らず、グラスボートとあやぱにモールをうろついただけだった。 自分の足でこうして道草をしながら味わうことこそ旅の真髄ではないだろうか。 島人にはなれない。 どこまでも旅人のまま、再びこの地で遊ばせてもらう喜びを噛みしめた。

石垣滞在何日目だろうか、そんなことはどうでもよくなってきた。 西表へ行ってみようかなぁ。 仲間川には石垣以上のマングローブのジャングルが広がっているらしい。 最南端の温泉にでもつかってこよう、今回の思い出にはちょうどいい。
2008/05/23のBlog
[ 17:11 ] [ 旅行(Travel) ]
息を呑む海の風景が眼前に広がる。 言葉にならない感動の稲妻が体を突き抜ける。 右手には太平洋がコバルトブルーの海を見せつける。
左手には東シナ海の碧い海原が広がる。 風は立っていられないほど強く、容赦なく吹き付ける。 髪の毛は逆立つ。 寒いんだかどうだか感覚までもマヒしていく。
ここは平久保崎灯台だ。 旅人達はすれ違う度に気安くあいさつを交わす。 一人旅、二人旅、家族連れ、友人同士、そんなことはどうでもよく、今日この時間にこの地にいるという共通の認識で『絆』のようなものが芽生えている。 一目瞭然、誰もがこの景色に圧倒されている。 どんな形容詞も思い浮かばない。 風に吹き飛ばされて、頭の中まで空白だ。何も浮かばない、何も考えられない。 ただここにたたずんでいるという事実、それをしっかり胸に刻んで海を見つめる。

東シナ海と太平洋が岬の先、大地離で交わる。 「大地離」とはまたぴったりな表現ではないか。 ぐるりと見渡す水平線と海の色は圧巻だ。
劇的な風景に時間を忘れてたたずんでいると、後ろから近づくヘリの音。 まるで映画007のワンシーンのように、次第に大きくなるその姿。 大地離れの真上でホバリングを始めた。 しばらく眺めていた。 気が付くと誰もいない。 一人去り二人去り、岬に一人取り残された。

船越までは来た県道を戻り、それからは国道390号線を南下して行った。 トムルの側にはやはり車が何台も止まっていた。 玉取崎展望台を左に、南へ南へ下る。 途中いくつも牧場を通り過ぎた。 石垣には牛の畜産農家が多い。 至る所に焼き肉屋、ステーキ屋があり、何か複雑な気持ちになる。 自然放牧で年がら年中青草を食む。

伊野田漁港を過ぎて、波頭の先まで車を寄せる。 中学生だろうか釣り糸を垂れていた。 車を止めて中で休んでいる人、こどもを遊ばせている母親、石垣で何度も目にしていた、海辺で気軽にくつろぐ姿がここにもある。 人間に生活とはこうあるべしと、普段を振り返る。 仕事の合間にぶらりと気分転換できる自然があるという贅沢、これ以上のものはないだろう。 聞こえるのは波と風の音、そして「ざわわ~、ざわわ~、ざわわ~~」
この島固有のヤシの木がジャングルから顔を出し、息を呑む海の景色やサトウキビ畑が、視界に次々飛び込む。 例年サトウキビの刈り取りは年末らしいのだが、どういうわけか昨年は生育が悪く、今年に入って刈り取られた。 植え替えたサトウキビの苗はまだ小さい。 成長まで一年半、掘り返した赤土の畑は遠目にはパッチワークのようだ。

♪ざわわ~、ざわわ~、ざわわ~♪ 一度耳にした歌が繰り返し、どうしてもサトウキビ畑を揺らす風の音が「ざわわ~」としか聞こえてこない。 絶えず吹く風が蒼い葉を揺すぶる。 赤土の痩せた土地に生えた背の低いトウキビが「ざわわ~♪」と奏でる。

時折山の手に道は蛇行し、広大な牧草地の側を走ったり、坂道を登れば絶景の海景色が待っていたり、飽きない風景の連続だ。 野底地区にもヒルギ群落があり、カヌーやシーカヤックでマングローブを間近に見ることが出来る。 所々背の低い民家が密集し、学校や公民館がギュッと肩を寄せ合って集落を形成している。
井原間湾の船越地区を通過する時、右手に太平洋、左手に東シナ海が同時に見える場所がある。 野底と伊原間の間の船越は首のように細くなっているからだ。 ここからは県道206号線になる。 無人のサビチ洞を過ぎ、おにぎりのような三角形のはんな岳を過ぎると、やがて丘の上に島田紳助の店『トムル』が見えてくる。

さすがに有名人の店だ。 どこも閑散としている時期なのに、ここの駐車場は満杯だった。 彼の話術は今が円熟期なのだろう。 「行列のできる・・・」を見ていると、紳助の独壇場だと思う。 彼なしにはこの番組は日テレの看板番組には成り得なかったし、ましてこんなに視聴率を稼げなかっただろう。

旅のみやげ話にと思って立ち寄ることにしたが、正直何も期待をしていなかった。 上の前歯がみそっ歯の男性がメニューを持ってきた。 ビビンバやカレーライス、タコライスもおいしそうだったが、昼食後ということもあり、アイスクリームと珈琲を注文した。 ところが予想に反して、極ウマだった。 石垣で食べたどのアイスクリームより極上のものだった。 素朴な彼らが指導された通りにちゃんと煎れたコーヒーも納得のアロマを漂わせていた。

以外やん! ええ店やわ。 次に来る時はタコライスとカレーは試さなあかん・・・そう決めて店を後にした。

ここまで来たからにはついでに北端の灯台まで行きたい。 途中には有名なサンセットビーチもあることだし、夕方までにはまだ時間がある。 石垣の日没は午後7時を過ぎる。 日本との時差を感じる日の出日の入り時刻なのだ。

サンセットビーチは県道を逸れてサトウキビ畑の中を下った所にある。 有料(一日300円)のビーチと無料の入り口とがあり、もちろん無料の方へと車を転がした。

舗装道路が突然切れて、落ちそうになって降りた所が夕陽が島で一番綺麗に見えるサンセットビーチだった。

水辺線に沈むダイナミックな夕陽、それを拝むにはまだ早過ぎる。 きめの細かいさらさらの砂が続くこれぞ南国のビーチ! ここも人っ子一人いない。 またまた独り占めのプライベートビーチだった。

南国の風はそよそよとさわやかに・・・、そう思って水着を2着も忍ばせて来た。 写真には写らない、写せない強風が島のどこにいても容赦なく吹き付ける。 とても水着になる気分にはならない。 5分もいれば、体の芯まで冷え切る。

足を伸ばして伸ばして、最北端の平久保崎灯台まではあともうひと走りだ。
2008/05/22のBlog
指先を見て驚いた。 爪が異様に白い。 形は良くないが、いつも健康的なうす桃色をしていたのに、真っ白だ。 すわっ、病気か!

落ち着いて指を広げ、手の平と甲をひらひらとさせてながめる。 爪が白く見えたのは病気のせいではなかった。 手が真っ黒に日焼けして、爪だけが白く光って見えたからだった。 耳たぶの中まで黒い。 あちゃぁ~、これじゃ美白流行りの本土へは戻られない。 手や耳たぶまでもが焼けているのだから、もちろん顔も腕も肩もこんがりカフェ・オレ色だ。

太陽の下で遊びたい、でも色白のままで・・・そんな都合のいいことを考えていては、思う存分自然と友達にはなれない。 第一、島人や海人が受け入れてくれないだろうし、自然に対してイーブンじゃない。 南の島へ出向くからには、メリットもデメリットも享受しなきゃならない。

で、初めの話しに戻るが、指の間と手の平が異様に白く、笑ってしまった。 これはもう引き返せない色付きだなぁ。。。

県道79号線を西へ向かって川平湾で昼食にした。 八重山そばの麺は沖縄本島で食べるソーキそばより幾分細い。 豚骨とカツオ、昆布のダシがきいて、すっきりとおいしかった。 そばが絡まりあい、なんとも優しい口当たりと味わいだ。 ずずずーっと、丼を持ち上げてスープを全部飲みきった。 窓辺に置かれた貝殻が、いかにもこの地が南の島だと云わんばかりだった。

来た道を戻る。 風が強く、人通りがない。 どこかしら寂しげな風景が広がる。 東シナ海から吹き付ける風に頭の先からつま先まで洗礼を受ける。 その開放感が普段目にすることのないこの景色のとりことなる。
適当な下り坂を見つけ、浜辺へと向かった。 途中、『Yugafu-yamabare』のオーナーに出会った。 このプチリゾートは一日三組限定の隠れ家的宿だ。 全ての客室はまるでプライベートな別荘に遊びに来たようだ。 家族経営のあたたかい雰囲気の宿のオーナーは、気さくに浜辺への道を教えてくれた。

ジャングルへ分け入り、車を止め、そこからは歩きだ。 砂が小さく、近場まで行くとタイヤが埋まり戻れなくなってしまうからだ。 ハブが出てきそうな熱帯林のけもの道を5分ほど歩き、せせらぎをざぶざぶと渡る。

いきなりパァ~ッと視界が開き、大海原が迫ってきた。 風は更に強く体に当たり、顔に水しぶきが飛びかかる。 太陽はガンガンに降りそそいでいるが、風が強いので体感はぶるっとするほど寒い。 そうはいってもこの季節にノースリーブ、短パン、例のピンクサンダル姿でいられるのだから、それなりに満喫、満足ではあるのだ。

浜辺には誰もいない。 目前に広がる大海原は、川から流れ込む水を飲み込み、大声も飲み込んでかき消す。 足元には白い珊瑚や貝殻がどこまでもどこまでも続いている。 私には宝の浜辺、海を見ては、「はぁ~、ふぅ~、あぁ~いい気持ち。」とつぶやき、一方ではせっせと身をかがめて貝拾いをする。 持ちきれない貝殻を、せせらぎで洗っていたら・・・!

この浜は少々危険らしい。 離岸流が確認されていると書かれた看板が立っていた。 リーフの切れ目に打ち込んで砕け散った波が潮流となって沖合へ流れ出す。 リーフ波が高いときは強い流れが発生すると、確かに看板の忠告を読んでいたのだが・・・。 にもかかわらずまさにその場所で、拾い集めた見事な貝殻の砂を洗い流していた。。。!

目線の右端に10cm以上の潮位差を感じた途端、強烈な勢いで一気に大事な貝をさらっていってしまった。 気が付くのがもう少し遅かったら、全身ずぶぬれになっていただろう。 自然の脅威に愕然とし、後から恐怖におののいた。

甘く見ていたわけではないが、海へ流れ込むくるぶしほどのせせらぎだったから、その危険性を考えてもいなかった。 音もなく突然やって来たリーフ波は驚くべき早さで川を逆流し、根こそぎさらって行った。

結局手元に残ったのはどうでもいい貝殻ばかりだった。 プライベート・ビーチだと有頂天になっていた気持ちが急に萎えて、怖くて貝拾いはどうでもよくなった。 早々に引き上げ、県道まで戻った。

さてここまで来たのなら、同じ県道を戻って宿へ帰るのは味気ない。 それではこのまま北上し、あの有名な伸介の店(TOMURU)へでも行ってみよう。 風の吹くまま気の向くまま、車はそのまま県道79号線を、米原、浦底湾、伊原間湾へと一路北へ向かった。
2008/05/21のBlog
[ 05:42 ] [ 旅行(Travel) ]
市街地から国道390号線を東に向かうと、20分もしない内に宮良湾へ出る。 湾に注ぎ込む宮良川にはヒルギ林が広がっている。 石垣島最大のマングローブを有する宮良川は近場のネイチャーゾーンだ。
潮の満ち引きに合わせてカヌーイングを楽しむのも良し、それを見るのも良し。 東南アジアでお馴染みのマングローブの森林を楽しめる最北端が沖縄だ。 塩水に生息し水だけを吸収し、塩分は葉に溜め込み落葉させるという、独特の進化を遂げているヒルギ達。 ダーウィンの進化論ではないが、環境に沿った固有の動植物が楽しめるのも八重山諸島ならではのことだ。
戻る途中フラッと大浜公園に車を止めた。 石垣は周囲を珊瑚礁に囲まれているので、どの浜へ出てもコバルトの海と白い砂浜が迎えてくれる。 犬とのんびり散歩している母娘、地元のおばぁやおじぃ、軽く会釈を交わし浜を歩く。 浜を埋め尽くす花と絶え間ない海風に包まれて、心が次第次第に笑顔になっていく。
島人が「裏」と呼ぶ東シナ海側へ行った。 北へ北へ石垣の心臓部を突っ切って車を走らせる。 於茂登トンネルを抜けると、島の外周を走る県道79号線にぶつかる。 途中に信号機が少ないから高速道路のようなもの、あっという間に「裏」へ到着。
左に曲がり、川平湾を目指す。 数年前に訪れたグラスボート乗り場まで足を伸ばした。 さすがに観光地、ここだけは多少の内地からの観光客で賑わっていた。 「ザワワァ~、ザワワァ~」、島を流れる風はサトウキビ畑を揺らし続けている。
2008/05/20のBlog
那覇空港から石垣へ向かう飛行機の小窓に額を押しつけて外をじっと眺める。 視界には眼下に漂う白い雲がいつまでも続く。 しかし真下に見える海の碧と天に広がる空の青が同じなのはなぜだ。 飛んでいるのは確かに海の上だが、眼下に広がるのは空かとも見まがう。 どうでもいいが、空中浮遊しているような錯覚の中、飛行機は南へ南へ向かう。

地上からは想像も出来ない景色が飛行機に乗ると度々出くわす。 夕刻に飛べば真っ赤な太陽と群青色の空、それに続く青のクラデーションがそれはそれは美しく、例えようのない世界観が空いっぱいに広がる。 雲海の上を飛べば、高速の飛行機がまるで止まっているようだ。 大気圏内を飛ぶだけで感動するのだから、宇宙飛行士達が哲学者になってミッションから戻って来るというのもあながち嘘ではないだろう。

遙か下を走る車や家々の並びを見つけると、いつも思うことがある。 粉塵のような極小のあの車の中で運転している人一人ひとりは、どんな気持ちで今日を生きているのだろうと思う。 あの一台、この一台、それぞれの今日という一日が過ぎているのだろう。 豆粒のような小さいあの屋根の下に喜びや悩みや苦しみが渦巻いているのだろうか。 空の上から見下ろせば、どんなことも乗り越えられるような、そんなマクロな気持ちになる。 小さな自分を見つめることが出来るから、私は飛行機の移動が好きだ。 どうせならなんとか楽しく暮らしていきたいと、安易に考えてしまえる。

降り立つ石垣空港は意外にも涼しかった。 予約していたレンタカー会社の社員が待っていた。 早速手続きをして、さぁこれからどんな風にデザインしていこうかと車に乗り込む。 飛行場近くの宿に一旦入り、荷ほどきをして桟橋辺りにやって来た。 どこまでも蒼い海と青い空、水平線で交わるコバルトブルーがどこか映画のシーンのようだった。
水がきれいだ。 その一言が先ず口をついて出る。 感激の海の色にはるばるやって来てよかったと思う。
ひっきりなしに離発着する飛行機が爆音をあげて通り過ぎる。 さっきまで乗っていた機内の閑散とした光景が過ぎる。 乗客は20名ほどだったろうか。 この島は観光で成り立っているのに、連休過ぎのこの静けさは有り難いがいいのだろうか。
離島桟橋そばの人工島へ来ると、停泊中の台湾客船が目に入った。 パスポートさえあればここから台湾へ行ける。 以前シンガポールで乗ったことのある同じ船会社だったので親近感を覚え