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裕弁は銀・沈黙は金~堀裕嗣.com
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2007/11/29のBlog
[ 21:29 ] [ 裕々自適/書斎日記 ]
□児童や生徒のテスト結果など個人情報を教員が学校外に持ち出し、紛失するケースが相次いでいることから、東京都教育委員会が個人情報の扱いを詳細に定めた独自のガイドラインづくりに乗り出したことが25日、分かった。新たな管理基準は、教員に個人情報を含むメールの送信を禁じるほか、学校外で児童・生徒の情報を話題にした会話も禁止するなど厳格化した点が特徴という。違反した場合、厳しく処分する方針で検討している。(産経新聞/全文はこちら
■おもしろいものである。東京がやり出したからには,数年で全国に波及する。我々がこれほどまでに信用されていないということを,これだけ明確に提示されると腹も立たない。かえって笑ってしまった。
■学芸大の山田先生がこの記事について,次のように書いている。
□それにしても、この囚人のような扱いは何だろう?/そして、度し難い誤解がこれだ。/--引用開始/都教委は、これまで断続的に注意喚起や再発防止を指示してきたが、ミスが絶えない原因を「個人情報保護に対する教員の意識が必ずしも高くない」と分析し、個人情報管理の厳格化が必要と判断した。/--引用終了/ミスが絶えない原因は、「教員の持ち帰り残業が日常化していること」ではないのか?/好きで重要書類を持ち歩く人はいない。自宅で仕事をしなければならないから、「持ち出し禁止」のファイルを持ち出さなければならないのだ。/何度でも繰り返すが、射程距離が短く、装甲が薄く、従って戦えば必ず負ける戦車をあてがっておいて、「大和魂で勝て」と絶叫していた旧日本軍のようだ。(山田雅彦@cocolog/2007.11.26/全文はこちら
■この比喩もおもしろい。おもしろいけれど,現場教師から見ても,ちょっと教員を擁護しすぎかな…との印象を抱く。要因としては「教員の持ち帰り残業が日常化していること」が半分,「個人情報保護に対する教員の意識が必ずしも高くない」ことが半分,というのが実情だと思う。居酒屋で実名で生徒の悪口を言ったり,悪口でなくても指導上の個人情報をそうと意識せぬままに大声で話す教員は決して少なくない。
■私は昔から,個人情報を校外に持ち出さない。だからと言って残業もしない。「教員の持ち帰り残業が日常化していること」は確かに現実としてあるが,そういう教員たちの仕事が「遅い」ことも確かである。一つ一つの仕事があまりにも遅いので,持ち帰ることになってしまうという現実もあるのだ。結局,こういう問題の本質は,教員の資質・能力の〈スタンダード〉をどこに置くかという問題なのである。
■私が個人情報を校外に持ち出さない理由は,もう一つある。学校専用のPCを学校に置きっぱなしにしているからだ。もちろん,税金でPCなんて買ってもらえないから,個人のPCである。たぶん3割程度の教員はそうしていると思う。でも,7割の教員はノートPCを必要なときには自宅に持ち帰る。個人所有のPCだから罪悪感は抱きにくい。HDに個人情報が入ったまま,FDやCD-Rが入ったままなんてことも少なくないはずだ。仕事のために20万もの自腹を切って学校に置きっぱなしのPCを買おうとは,7割程度の教員は思わないということだ。私だって危機管理を考えて置きっぱなしPCを所有しているわけではない。ただ,持ち運びが面倒なだけである。それなら20万程度の金なら払った方がいいと思うタイプなだけである。時間と労力が金を払うことで解消されるなら,私は金を払う。そういう〈性格〉なだけである。たぶん,教員一人一人に一台ずつのPCを与え,そのPCを持ち出し禁にすれば,ほとんどの不祥事が防げるようになる。それでも起こった不祥事なら厳しく処罰もできる。でも,この国にはそんな金はない。結局,八方塞がりなのだ。
■今回の厳罰化でどの程度,個人情報漏洩の不祥事が減るのか,見守っていこうと思う。もしもこれで不祥事の減少に効果があったという有意なデータが出るのなら,北海道も,札幌市も導入すればいい。私はあまり困らないから,ただおもしろがるだけである。
■そういえば,進路相談の細かなやりとりを保護者とメールで交わしたことがあったなあ。ああいうこともできなくなるわけだ……。保護者からうちの子がいじめを受けているという報告をメールで受けたこともあったなあ。そういうこともできなくなるわけだ。生徒とのメールのやりとりも禁止になるんだなあ。ひきこもり型の不登校生徒が,メールでなら担任とコミュニケーションがとれる…なんていう事例もたくさんあるんだけどなあ。まあ,厳罰化されるんだから,全部ダメだよね。おもしろいものである。
2007/11/28のBlog
[ 21:54 ] [ 裕々自適/書斎日記 ]
■勤務校は北区,自宅は白石区。札幌に詳しい人にしかわからないだろうが,間には東区をはさんでいる。毎日,三つの区を移動していることになる。学校を出て車で5分も走ると東区に入る。北区と東区の境目は,タマネギ畑の中に道路が一本走っているだけ。そんな趣である。退勤途中に見る「ここから東区」,出勤途中に見る「ここから北区」,この看板を見るたびに,僕はいつも,何を基準にここに区の境界線を引いたのだろうかと不思議に思っていた。境界線には道路もなければ線路もない。川もなければ山もない。つながっている,だだっ広いタマネギ畑の上を,眼には見えない区を分ける境界線だけが走っているのだ。現在の勤務校に転勤して2年8ヶ月,僕にとってはけっこう大きな謎だった。実はその謎が今日,解けた。
■19:00に学校を出た。雪が降っていた。下から巻き上げるような風に,一粒一粒が右往左往している,雪がそんな舞い方をしていた。雪の舞いに規則性はないのかと,目をこらして1分ほど立ち止まっていたのだが,どうも規則性らしいものはないようで,観察は失敗に終わった。車に積もった雪を払い,走り出す。最初の交差点で左折しようとブレーキを踏むと,止まらない。ツルツルに凍っている。ああ,こりゃだめだ。時速30キロでゆるゆると走る。なにせ校区内。こんなところで事故でも起こしたら大変である。アクセルを踏み込まないように気をつけながら,それでいて雪の舞いを気にしながら走っているうちに,いつもの看板が見える。ここから東区。その看板を越えると同時に,雪の舞が,消えた。あとかたもなく消えた。僕は車を止めた。車から降りて境界線に立つ。境界線の真上に立つ。右半身は北区,左半身は東区。右半身は雪の舞いに包まれ,左半身は…向こうの明かりが染みこんでくるように視界が広い。右半身は小さな粒上の冷たさが頬にも手にも当たる。左半身はただ刺すような冷たい風。これなのだ。これが北区と東区の違いなのだ。ここに境界線を引いた人たちはこのことを知っていたのだ。でもなぜ。この一線がなぜこの一線なのだ。僕にはわからない。
■時速30キロでツルツルの道を更に30分走った。右左折するたびにタイヤがすべらないかと冷や冷やしながら。豊平川をわたった。この川をわたると白石区。わたった途端に,地上から雪が消えた。道路脇にさえ積もっていない。しかも,まわりを走っている車がビュンビュン飛ばしているではないか。ついさっきまで,僕と同じスピードで走っていたのに。見ると,道路が乾いていた。ためしにブレーキをふんでみた。夏と同じように,止まった。間違いない。道路は乾いているのだ。凍っていないのだ。時速60キロで走り出した。これまでハンドルを握る手も,アクセルにおいて右足も緊張していたことに気がついた。自分の運転する車のスピードが,ずいぶんと速く感じられた。
■通勤の楽しみが一つ増えた。これまでみたいに好きな音楽を聴くだけの時間ではなくなるを感じた。
2007/11/22のBlog
[ 23:59 ] [ 裕々自適/書斎日記 ]
■学校バッシング、教師バッシングが喧しい昨今、学校教育の現場に身を置く者の一人として、何ゆえに自分らはこんなにも責められねばならぬのかと、悩ましい日々を過ごしてきた。2000年前後には学級崩壊が社会問題化し、「指導力不足教員」の語が新聞紙上を闊歩する毎日。それから丸七年が経とうしている現在、このバッシングの勢いは留まるところを知らず、ますます闊歩の度合いを強めているように見える。その証拠に、2000年前後には「指導力不足教員」の名で呼ばれていた問題教師が、昨今はかの教育再生会議の議事録でさえ「不適格教員」の名で呼ばれるようになった。その用語の差が示すとおり、「指導力不足教員」と「不適格教員」とではその定義も異なるはずであるが、両者は混同されて用いられてしまっている。教育再生会議において、渡辺美樹が「不適格教員」を「授業の成立しない教師」(第2回学校再生分科会議事録)と定義していることから見ても、私のこの状況認識はある種の妥当性をもっているようだ。授業を成立させられない教師は、確かに「指導力不足教員」ではあるが、いわゆる「不適格教員」の烙印を押すには猶予が必要である。
■2003年4月、朝日新聞が教育連載に〈教師力〉なる語を用いて以来、この語も活字・映像を問わずメディアを賑わすようになった。おそらくこのことは、教師の役割について世論が抱くイメージが、いわゆる「指導力」の枠組みを超えて、いわゆる「感化力」、つまり「人間的な魅力」をもってこそ教師の名に値するという、従来の「教師聖職者論」イメージへと回帰していることを意味している。「指導力」ではなく、〈教師力〉なる語の漠としたイメージは、間違いなく〈人間力〉という流行語の漠としたイメージとほぼ同義に用いられていると見てよいだろう。
■こうした状況の中で、最近、必要に迫られて、教師に必要な能力を分析して図解した「教師力ピラミッド」というモデルを作成した。マスコミや保護者といった学校外の人間も、そして教師自身も、教師に必要とされる能力と実態を知ることが問題解決の出発点になるだろう、と考えたからである。
■「教師力ピラミッド」は、教師の日常的な仕事に関して、教師に求められている資質と能力をわかりやすく網羅し、三角形の底辺から頂点に向けて、能力習得の難易度に応じて三段階にランクづけしたものである。
■第一段階は、「モラル」と「生活力」である。教師の基盤が「モラル」であることは言うを待たないであろうが、「生活力」には若干の説明が必要である。具体例を挙げればこういうことだ。教師は、生徒が具合が悪いと言えば簡単な診断をし、軽い怪我くらいならその処置もできなくてはならない。教室のテレビが壊れたとなれば修理もするし、行事があればビデオの撮影や編集もすることになる。日常生活で必要とされることはすべて身に付けた、いわば「なんでも屋」でなければならないのである。これを「生活力」と呼ぶ。
■第二段階に、「指導力」と「事務力」である。「指導力」には、悪いことは悪いと生徒にしっかりと伝えられる「父性型指導力」、悩んでいる生徒を優しく包み込むような「母性型指導力」、生徒と気さくに話し一緒に楽しむことのできる「友人型指導力」の三種があるが、性格の三分類とさえ言えるこれらのキャラクターをすべて具え、時と場合に応じて使い分けることが求められる。
■また、教師が持たなければならないとされる「事務力」についても、ずいぶんとハードルが高い。成績処理や生活記録、進路事務などにおいては、高い「緻密性」が求められる。加えて、授業や生徒指導に関して新しい指導法を開発する「研究力」、最近は学校独自で教育課程をつくることを文部科学省が推進しているため、複雑な時間割づくりや年間計画の策定といった、教育課程の編成という学校の全体像を構築するという膨大な能力、「教務力」も求められる。
■更にその上に、「先見性」と「創造性」である。いじめや不登校など、担当する生徒に事故や事件が起これば「予兆を捉えられなかったのか」と責められ、最新のデータを用いて学校改革に取り組まなければ体質が古いと揶揄される。また、行事や生徒会活動では地道な活動ばかりでなく、生徒の多くが活躍する華のある運営が求められもする。教頭や校長ともなれば、その学校独自の特色も創造しなければならない。まさに、「先見性」や「創造性」も、教員評価の重要なポイントなのである。
2007/11/19のBlog
[ 23:59 ] [ 裕々自適/書斎日記 ]
■これまで3週間近くそれだけに取り組んできた原稿に目鼻がついた。一応べた書きが終わったので,一日寝かせて明日校正。明日がぎりぎり待てる期日として指定された日である。なにせ締切10月20日の原稿である。もう待ったなしの状態だった。それでもなんとか間に合ってよかった。これで3連休はDVDでも借りてきてゴロゴロできる。あとは「授業づくりネットワーク」に「教職研修」,数本の同人誌原稿を書けば,今年も終わりである。年末年始の幸せな退屈に埋没できる。今年もあと40日か。
新聞に掲載されるということは,しかも地元紙に掲載されるということは,やはり直接的な影響力をもつもののようで,小学校時代,中学校時代,高校時代の友人から「新聞見たよ」というメールが届いた。どの友人もここ数年,なかにはここ数十年,音沙汰のなかった友人もいる。きっと新聞記事を見て,僕の名前で検索し,このHPを見つけ,メールアドレスを知り,メールを送ってきた,こういう流れなのだろう。かつての友人・知人と再びつながるというのはなんとなく照れくさい反面,やはりいいものである。あまりマスコミには出たくないと考えている自分だが,彼等からメールをもらえたことで良しとしよう。
■原稿に没頭していたために,犬の誕生日を忘れていて,妻に嫌みを言われた。今日,2日遅れでケーキを買ってきて,誕生日を祝った。一昨日で5歳を迎えた。あと何年こいつといられるのか,必ずやって来る別れの日が刻一刻と迫っていることだけは確かだ。なんとかあと10年いっしょにいられないものか。2匹の犬が我が家からいなくなった生活を,僕は想像することさえできない。きっとペットロスで仕事にならなくなるだろう。あと5年か,10年か。そんなことを考えながら,そもそも5年後,10年後に僕や妻が生きている保証だって本当はないのだということに気がついた。人間は40歳くらいでは自分の死を具体的にイメージできない。まだ若い証拠と言えば言えなくもない。